ストーリー
時に征歴1935年。欧州を二分する超大国、「帝国」と「連合」はついに開戦する。帝国と連合に挟まれる小国、ガリア公国は、中立を保つことでこれまで独立を保っていたが、帝国軍は突如国境の要塞を襲撃。これを陥落させ、その勢いで公国首都に迫る。絶体絶命のピンチに陥る公国。そんな中、動員された若き義勇軍の士官・ウェルキンは、その率いる第7小隊と共に、ガリアの独立を守るため立ち上がるのだった―
という感じです。
ストーリー的にはいわゆる架空戦記物です、一応戦略レベルのストーリーは存在するのですがそのあたりは物語性を重視しているらしく割とあっさりしています。面白いのは戦術レベルのストーリーですね。大規模会戦はもちろん、局地戦、敵地侵入、人質救出戦など、様々なシチュエーションが用意されており、それぞれ戦う理由がきちんとストーリーで説明されているので、最後まで話がだれることはありませんでした。
事前にネットで見た感想では、ヴァルキュリア(特殊能力を持つ人間)が強すぎて大味、といった感想が散見されて心配していたのですが、全然そんな事なかったです。むしろ「戦場のヴァルキュリア」なのに、ヴァルキュリアがあまり目立ってないと感じるほどです。その分敵軍に登場した時の絶望感は半端ないのですが。
戦争らしく人死にや差別問題などについても扱っていますが、メインストーリー(戦争の帰趨と、ウェルキンとヒロイン・アリシアのラブストーリー)とのバランスが崩れないように触れられていて、バランスが良かったと思います。
エンディングもすばらしかったです。やっぱりそれまでに張っておいた伏線がビシッと回収されると気持ちいいです。
システム
戦闘以外の部分は割とオーソドックスなADVになっていいます。
戦闘・ストーリーは全て、CANVASという独特な技法で描かれた3Dフィールドの中で行われます。
こんな感じで、水彩画を立体に起こしたような独特な雰囲気を醸し出しています。それが牧歌的な雰囲気を漂わせ、必要以上に世界観が殺伐としないようにしていました。
イベントはほぼフルボイスです。見たイベントは「ガリア戦記」という架空の本に記載されているという設定なので、いつでも自由に読み返すことが可能です。またボタンひとつで完全にスキップすることも可能なので、ストーリー重視の人もそうでない人も納得だと思います。
PS3版の時には有料DLCだったものも全て含まれており、番外編や特殊な、あるいは高難度の戦闘を楽しむこともできます。
キャラクター
メインの登場人物は多くないですが、全員人間くさく描かれていて好感が持てました。戦争の時代を生きているだけあり、皆方向は違うもののしっかり地に足を付けて生きていて、リアリティを感じました。
特にヒロインのアリシアはやっぱりいいですね。井上麻里奈さんも持ち役の多い方ですが、こういう凛とした役がやっぱり似合いますね。もっとウェルキンとラブラブしてもらっても良かったくらいです。主人公のウェルキンもいい男なんだこれが。
イサラとロージーの友情物語も色々な意味で泣けました。
戦闘
SRPGとしては極めて異色なシステムが搭載されています。詳しくはPVをどうぞ。
分類としては、敵軍と味方が交互に行動するターン制SRPGです。ターン後との行動数(AP)は自軍内では共通で、それをどのユニットにどう割り振るかは自由です。たとえば10APある場合、10ユニットを1回ずつ動かしてもいいですし、1ユニットを10回動かしても構いません。ただし、1ユニットを何度も動かすと、移動可能距離がどんどん減っていきますし、1ターンに使える弾丸にも限りがあるので、強いキャラだけを動かしていても勝てません。しかし全員をまんべんなく動かすにはAPが足りないし…というジレンマをうまく演出しています。
各ユニットは、移動と攻撃の2つを行うことができます。攻撃は1回しか行えませんが、移動は攻撃の前後を問わず、一定距離まで何度でも移動できます。フィールドはマス目ではなく、自由にフィールドを動けるようになっています(TPSのようなものと思ってください)。動いている間も敵は普通に攻撃してくるため、敵の死角に回り込んで攻撃する、敵がリロードしている間に接近する、ジグザグに走って被弾しないようにするなどのアクションが可能です。通常のSRPGと異なり、敵がどこにいるかは、味方の視界内にいる場合しか分からないため、戦闘開始時にはほとんどの敵ユニットの数も配置もわかりません。そのため偵察兵で敵の戦力を探り、対戦車兵や突撃兵を突っ込ませて邪魔なユニットを排除し、戦車で陣地を蹂躙していく、といった連携が重要になります。
ユニット的には味方の方が優れているため、ターン数をかければクリア自体は難しくありません。しかし少ないターン数でクリアすることで、経験値や大金にボーナスがつくので、やり込み派にも安心です。
とにかく戦闘が面白かったですね。SRPGはどうしても何度もやっているうちに飽きてくるところがあるんですが、今回はほとんどそういうことがなかったです。戦闘のシチュエーションも前述の通りかなりバリエーション豊富で、それも単調にならないスパイスになっていました。
総評
プレイ前は、サモンナイトを差し置いて「プレイステーション3史上最高のシミュレーションRPG」とかダメだろ!と思ってましたけど、さすがにギネスに載るだけのことはある作品でした(つーかサモナイはPS3で出てないし)。もちろんSNの戦闘もすばらしいんですが、戦闘システムという意味ではそれをさらに上回っているというしかないでしょう。なんでこれがSRPGのスタンダードになってないのか不思議なくらいです(まあこの作品はファンタジーとは相性が良くなさそうなので、サモンナイトもこれにすればいいのに…とは思いませんが)。
PS3版が発売された当時から興味を持っていたものの、当時はPS3を持っていなかったため見送り、その後PS3を購入してからはいつかプレイしたいと思い続けていたのですが結局その機会はありませんでした。PS4版が出たのをきっかけにプレイしてみたのですが、期待を裏切らない出来だったと思います。
SRPG好き、あるいはTPS好きのどちらかであれば文句なしにおすすめできます。
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