ストーリー
ある大地震のあった日。ヤマユラの集落に住む獣人の少女エルルゥは、近くの森に倒れていた男性を保護する。過去の記憶を全て失ったその男に、エルルゥの祖母トゥスクルは「ハクオロ」と名づける。エルルゥの献身的な介護によりハクオロはめざましい回復を遂げ、その恩返しとして様々な知識を村に提供した。
しかし村が急に豊かになったことにより、国の皇に目を付けられ弾圧が始まる。それに反発したトゥスクルが殺害されたことを気に、集落全体に反乱の気運が高まり、ハクオロは否応なくその渦に巻き込まれていく―
という感じです。
さすがに名作と言われるだけのことはあり、ストーリーが面白いです。「偽りの仮面」同様、戦闘と戦闘の間のアドベンチャーパートが極めて長く、ボイスを聞いていると1~2時間くらいずっとイベント、というのもよくある話なんですが、それが全然苦にならないレベルのおもしろさです。
話は終始シリアス展開で、もちろんコメディタッチのシーンも数多くありますが、基本的に戦乱状態なので緊迫感のあるシーンが多いです。また終盤には急に話が大きくなり出してちょっとついて行けないところもありましたが、最終的には伏線もきちんと回収され、綺麗なエンディングを迎えたように思います。
世界観の都合上独特な用語も多いですが、用語事典も充実しているためわかりにくいことはありませんでした。「偽りの仮面」で自分が感じた疑問もある程度解決しましたし、「偽りの仮面」を楽しめたのであればこちらもプレイして欲しいですね。
システム
全体としてはADVで、合間合間にSRPG方式の戦闘が挟まれるという感じです。
ADVの方は特筆すべきシステムはなく、一本道です。多少イベントの発生する順序が変わるくらいで、分岐などはありません(ひとつだけ順番を間違えると消滅するイベントがありますが)。エンディングもひとつだけです。
バックログ確認、スキップ、オート既読モードなど、基本のシステムもきちんとしています(ただバックログは全画面ではなくメッセージウィンドウに表示されるタイプで、表示するためにボタンを2つ押さないといけないし、巻き戻せる範囲もあまり広くないのでちょっと残念)。クリア特典としてシーン回想があるのもうれしいところ。
イベントもフルボイスですし、戦闘中もばんばんしゃべります。声優さんは有名どころばかりですね。主人公の小山力也さん、エルルゥ役の柚木さんはもちろんすばらしかったですし、アルルゥ役の沢城さんもよくぞここまで少女の演技をこなしているなぁと感心しきりでした。
クリア後特典として最近はほとんど見ない「スタッフルーム」があるのにも時代を感じます。オープニングも2種類あるなど力入っています(演出は90年代のアニメっぽさを引きずってますが)
キャラクター
イラストには時代を感じますが、プレイ意欲がそがれるほどではないです(時々立ち絵が微妙なことはありますが…)。男性キャラも女性キャラもしっかり性格が立っていて、突拍子もない行動をするキャラもおらず、かといって意外な一面がないわけでもなく、自然に物語に入り込めました。あまり尖ったキャラはおらず、最近の極端な味付けのキャラに閉口している人には古き良きキャラゲーとして愛して頂けると思います(反面、ものすごいお気に入りキャラは出来ませんでしたが)。
キャラクターの人間関係がしっかり描かれているからこそ、最終戦後のイベントは泣いた泣いた。でもあそこまでやったんなら、エピローグは寸止めにしなくても良かったんじゃないかなぁ!
戦闘
SNで知られるフライトプランが監修したSRPGが搭載されています。スクエア制、アクティブターン制のSRPGです。
特徴的なシステムとして「連撃」があります。これはタイミング良くボタンを押すことで単発攻撃が多段攻撃となり、ダメージを底上げすることができるシステムです。戦闘に一定の緊張感を持たせてくれますが、「偽りの仮面」と比べても判定は甘いですし、実は自動成功ボタンもあるので、アクションが苦手な方でも問題ないです。
難易度は普通と高難度が選べます(プレイ中の変更は不可)。高難度でプレイしましたが、フリーバトルも各1回ずつ程度で、ほぼ苦労するところはありませんでした(うっかりハクオロを突出させすぎてゲームオーバーになったことは何度かありますが)。ボーナスも攻撃力に全振りして問題ないかと。敵の火力はそこそこですが、こちらの火力を上げていればほぼ全ての敵を1~2発で葬れますので。
経験値は戦闘に参加したキャラに一律で入るほか、戦闘中の攻撃・回復によっても入りますので、使っていないキャラは育成ができません。途中で一時離脱するキャラも多く、フリーバトルも任意のタイミングでできるわけではないので、全然育てていないキャラをいきなり使うことになったりする場面も何度かあります。もっとも、そういうマップは難易度が低かったりして詰まることはありませんでした。レギュラーは7~8人になると思いますが,好きなキャラで固定して大丈夫です。
戦闘画面はドット絵のキャラが動き回る2Dマップです。ドット絵はよく出来ていますが、かなり画質が荒く、2009年発売(サモンナイト2のDS版よりも後)であることを考えると、もう少しがんばってもらいたかった気がします。シミュレーションパートのシステム自体も、2009年基準で考えてもやや単純すぎて古くさい感は否めません。しかし同時出撃数が最大で11人というのはかなり驚きでした。ドットキャラの動きも派手かつ滑らかでよかったです。
総じて、すごく楽しいと評価するほどではないですが、(現代の基準で見ても)プレイの意欲を邪魔しないレベルには達してました。
総評
全体的に、満足のいく作品でした。「偽りの仮面」のストーリーが非常に面白く、ボクの心のハードルが上がりすぎていたせいもあるのか、「偽りの仮面」ほどストーリーが良かったとはいえないのですが、それでも十分楽しめるもので、プレイしてよかったと素直に言えます。
シミュレーションパートも大味な印象ですが、時代を考えれば(そしてこのゲームの出自を考えれば)あまり責めるのは酷というものでしょう。戦闘回数はかなり多い(必須戦闘だけで30回を超える)のですが、それが苦痛ということは全くありませんでしたし、ADVパートの邪魔をしているようにも思えませんでしたから、特に問題ないのではないかと思います。
第3作の製作も発表されていますし、来年を楽しみに待とうと思います。
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