ストーリー
ここは人々の無意識が集って出来た世界「レーヴァリア」。
人々の感情が集まるこの世界では、負の感情が生み出すヴールというモンスターを、ルフレスという種族が浄化することで成り立っていた。しかし年々ヴールの力は強くなっており、ルフレス族は現状を打破するため、別の世界から戦う力を持つ者「夢見る目覚めの人」を召喚した。しかし召喚に失敗し、召喚された勇者たちは記憶を失ってしまう。果たして勇者たちは世界の危機を払えるのだろうか―というストーリー。
今作は色々問題が多いですが、もっとも大きな問題はストーリー面です。
まず流れが単調すぎる。召喚された歴代キャラたちは、戦闘力はありますが意識体のためヴールの影響を受けやすいという設定があります。そのため「召喚されたキャラが暴走→暴走を止めるためにたたきのめす→事情を聞いて仲間に」の繰り返しで話が進みます。実に全ステージの半分近くがこれです。もうちょっとひねれや!
それから2つ目に、本作はテルン編と、その裏側を描くナハト編に別れているのですが、はっきり言って分けてる意味ないです。テルン編も後半ではナハト組と合流するので、そこでナハトがなにをしていたか聞けるのですが、ナハト編ではそこで得られる情報をだらだらストーリー仕立てにしているだけで、「そんなことは分かってるんだけど…」の連続です。しかもナハト編は合流直前で終わる打ち切りエンドだし。これなら2つに分けなくても、1本の話でどうにでもなったでしょうに。
また、せっかく歴代キャラが敵味方に分かれているのに、大抵敵側のキャラは暴走してまともな意思疎通が出来なくなっているため、正義と正義のぶつかり合い!みたいな熱い展開がないのもガッカリです。OPではそれを期待させるようなシーンもあったのに。
システム
オーソドックスなSRPGですが、戦闘の間のイベントがかなり薄めです。また個別エンドというものはなく、完全に一本道になっています。
基本的に戦闘とキャラクターの項で述べるとおりなので、ここで独立して述べるほどのことはないのですが、とりあえずOPムービーは相変わらずすばらしかったとだけ。あとせめて会話ログ機能くらい付けて。
キャラクター
こちらもかなり難あり。
そもそも本作はTO歴代キャラのお祭りゲーなのですから、ファンが見たいのはキャラクター同士の掛け合いのはずです。しかし味付け薄めのメインストーリーしかないため、ほとんどそれは楽しめません。他のシリーズ作品のように、キャラクター同士のスキットなどがあるわけでもなく、またキャラたちは過去の記憶をかなり失っているため、そこから話が盛り上がることもありません、
代わりにキャラクター同士の好感度が設定されており、それを高めることで戦闘中に会話が発生するのですが、好感度の大賞となるキャラは1キャラ辺り7人だけしか用意されていません(PCは44人。しかもその大多数がどちらかのストーリーにしか登場しないため、現実には7人全員の会話を見るのは困難)。しかも会話を最後まで発生させるには好感度が600必要なのですが、1回の戦闘で入る好感度は30くらいがいいところですので、メインストーリーだとほぼコンプは不可能です。2周目やることが前提ってことか…ならもうちょっとイベント会話を充実させておけよ。
キャラ崩壊などは少なめだと思いますが、そもそも戦闘中会話なのに、食べ物の話とか居眠りの話とか、緊張感のない会話が多すぎて萎えます。しかも内容的にもどうでもいい話が多い。
戦闘
SRPGとして最低限必要なシステム(必殺技、ZOCなど)は組み込まれています。
キャラを強化するには、レベルを上げるほかに、戦闘で手に入るスキルポイントを消費し、スキルを習得していくことが必要です。しかし必要なスキルポイントがとにかく稼ぎづらいです。大体のキャラに必須な技能として、AP(いわゆるMP)を増やす「スピリッツ」、移動力を増やす「ダッシュ」、援護攻撃が出来るようになる「サポート」の3つがあるのですが、普通にプレイしてもこの3つを極められる程度のスキルポイントもたまりません。したがってほとんどのキャラがそのスキルを習得するだけで終わってしまい、その先にあるはずのキャラの差別化まで到達出来ません。
また各キャラごとの術技のバリエーションも少ない(ちょっと威力が違うだけの技をいくつも覚えるとか)。もう少し術技ごとの差を付けて欲しかったです。
それから術の扱いもちょっと。術には「詠唱時間」の概念があります。行動順はアクティブターン制(それぞれが1回行動するのに必要な行動値という値を持っており、時間経過でそれが減少し、0になったキャラから順に行動するというシステム。タクティクスオウガなど)なのですが、術だと「詠唱を始めてから3キャラが行動したあとに発動」みたいな形で決められています。強力な術ほど詠唱時間が長いのですが、これのバランスが悪いです。まずアクティブターン制といいながら、敵も味方もチーム内のキャラごとの行動値に大きな差がないため、大体味方キャラが全員行動→敵キャラが全員行動みたいになります。したがって詠唱時間がいくらあろうが、味方キャラが動いている内に過ぎてしまうため、ほとんど枷になっていません。これは敵も同じで、詠唱を中断するのはほぼ不可能です。特定の術技とかに詠唱キャンセル能力を付ければ良かったのに…。また術技には当然攻撃範囲が存在しますが、詠唱開始時にターゲッティングされてしまうと、そのキャラが攻撃範囲から離れても普通に命中する仕様のため、回避も不可能です。ここも、「ターゲットにキャラのみを指定出来、そのキャラが発動時にどこにいても当たる」術と、「マップの特定の地点をターゲットに出来、発動時にそのポイントにいるキャラに攻撃が命中する」術と2通り作っておけば良かったんじゃないかな…
同時出撃数は4~7人とまあまあでした。といっても5人のマップが多いのですが。
さらに言えば(ここからは完全に私見ですが)、SRPGはボードゲームのようなものなので、戦闘開始時点で必要な情報は全て画面上に現れているのがあるべき姿だと思います。もちろんボスが変身したり、敵の増援が現れたりするのもアクセントとしてはいいと思いますが、あまり多いとフラストレーションがたまるだけです。せめて戦闘前会話などで伏線だけでも張ってくれればだいぶ違うのですが。
というわけで、(まあクリアに半年以上かかっていることからお察しとは思いますが)、あまり出来のいいSRPGとは言えませんでした。テイルズのお祭りゲーはあまり出来が良くないものも多いのですが、その中でもかなり低レベルです。SRPGとしても、キャラゲーとしても中途半端だったのは致命的です。他のお祭りゲーはゲームとしてはともかく、キャラゲーとしての体裁はありますからね…。Amazonでは既に1000円で投げ売りされてましたが、それもむべなるかな。
それからこれはゲームスタッフの責任ではないのですが、公式攻略本がひどすぎ。まさか公式ガイドブックで「この先は自分の目でたしかめよう!」をされるとは思わなかった。
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