レビュー
ストーリー
宇宙暦537年。宇宙の事情など全く知らぬまま過ごす惑星フェイクリードの青年・フィデル。彼の暮らすスタール村は、強盗団エイタロンに脅かされていた。彼は援軍を頼みに王都へ向かうが、その帰り道、謎の男たちに襲われていた、不思議な力を持つ少女・リリアと出会う。その出会いは、やがてフェイクリードの運命すら左右する大きな戦いの幕開けだった―
というわけで、STAR OCEANのわりに全然星の海旅してねーじゃん!でおなじみのシリーズ最新作です。今作も相変わらず、ストーリーのほとんどはフェイクリードの惑星上で展開します。おなじみ宇宙艦隊戦もあるんですけど、全部戦略図で示されるだけで、艦隊戦ムービーがなかったのは残念でしたね。
ストーリーは謎の少女リリアを守って戦うという王道ストーリーです。リリアともう一人の謎の少女フェリアを助けたりさらわれたり助けたりさらわれたりの繰り返しで単調だということがよく批判されていますが、個人的にはそんな感じはしませんでした。ストーリーの起伏もそれなりに大きく、悪くなかったと思います。ただ、リリアに肩入れする肝心の理由が弱い(リリアは確かに謎の集団に追われていますが、謎の集団がリリアの敵であることが明らかになるのは中盤以降です)のと、敵のボスが過去作のボスに比べると小者すぎるのは残念でしたね。
キャラクター
パーティキャラは7人です。
主人公はオーソドックスな主人公キャラですが、大局を見る視点もあり、少女を守る気概もあり、魅力的と言えるキャラでした。特にラストバトルで仲間の一人が敵のボスに操られ、自分を殺すようフィデルに頼むシーンがあります。普通は敵ごと味方を斬るかどうするか迷うところだと思うのですが、フィデルが間髪入れずそのどちらでもない選択肢を採ったシーンはしびれましたね。
そのほかのキャラも個性的です。ただ、このシリーズはPA(プライベートアクション。街やダンジョンなどで発生するキャラクターの個別イベント)でキャラの掘り下げが行われるのですが、今作はPAの量が十分とは言えませんでした。また全員(精神的に)大人すぎてあまり感情をあらわにすることがないため、キャラクターへの感情移入が難しかったように思います。
そんな中、発売前はあまりのおっさん顔に恐れをなしていた「エマーソン」ですけど、彼はパーティ全体を年長者として引っ張りながらも、PAでお茶目な一面を見せたり、うっかり失言して仲間の怒りを買ったり、艦隊司令官としてかっこよく活躍したりと振れ幅が広くて面白かったです。そのほか、押しつけがましくない幼馴染ヒロイン「ミキ」、義に篤く時に軍令違反も恐れない「ヴィクトル」、頭がおかしい網目模様の服に反してかなりの常識人「フィオーレ」、戦闘時の服よりイベントでの格好(軍服)の方が数倍可愛い「アンヌ」、そしてけなげにフィデルに付きそう「リリア」と「フェリア」と、魅力的なキャラがそろっていただけに、もうちょっと頑張って欲しかった感はありますね。ドラマCDでも買うか。
戦闘
7人パーティによるシームレスバトルを高いレベルで実現しているのは評価に値すると思います。実際処理落ちなどもなく、常に多対多のバトルが楽しめるのは非常に新鮮でした。TOZはなんちゃってシームレスでしたけど、こちらは完全にシームレスと言っていいと思います。
ただ戦闘システムはそのせいで微妙になっている感じがします。今回はSO3同様、隙が小さいがガードは破れない「小攻撃」、ガードを貫通できるが小攻撃に潰されやすい「大攻撃」、小攻撃は防げるが大攻撃を喰らうと一定時間操作不能になる「ガード」の3すくみを操って戦うのですが、これがあまり機能していません。確かに通常攻撃の「大攻撃」は隙が大きいのですが、バトルスキルの「大攻撃」は「小攻撃」と同じ程度の隙しかなく、このゲームは通常攻撃を使う意味があまりないため、結局バトルスキルを大攻撃でぶっ放していればいいということになります。また「ガード」をしても、敵も複数が同時に攻撃を仕掛けてくるため、その中の1匹でも大攻撃を繰り出してきたらアウトになるという仕様もそれに拍車をかけてますね。
ほかにも問題はあります。戦闘時以外の操作キャラはフィデルなのですが、戦闘が始まると、直前の戦闘で操作していたキャラに自動的に操作が切り替わります。しかしそのキャラはフィールドではフィデルの後方を追従している関係上、フィデル操作のプレイヤーの視界には入っていないため、いきなりどこにいるかわからないキャラに操作が切り替わることになります。それが結構ストレスです。しかもそのキャラがバトルフィールドに入っていなかった場合、自動的に逃走中と判定され、一定時間内(結構短い)にバトルフィールドに入らないと逃走扱いになってしまいます。これも地味にストレス。イベントがシームレスになっている関係で、フィールド上ではフィデル操作に固定せざるを得ないのはわかるのですが、うーん。
システム
特徴的な点として、イベントも完全シームレスという点が挙げられます。ただイベント中もフィデルは比較的自由に移動できますし、カメラも自由に回転させられるため、自分でイベントを見るのに最適なポジションをさがさないといけません。イベントの影で他のキャラがひそひそ話をしているシーンなどもあり、そういうのを発見するのも楽しいので一概にダメとはいいませんが、ちょっとせわしない感じはします。しかしフィデルが動き回っても、他のキャラの視線がきちんと合っているのは驚きましたね。表情も豊かでアクションも臨場感があり、イベントの質自体は高かったと思うのですが。
それからイベントがスキップできないというのもちょっと。特に2周目プレイ時には無駄な時間になりますし、長話のあとのボス戦で全滅した日にはコントローラー投げそうになります。
その他、アイテムクリエイション(複数のアイテムを合成して新たなアイテムを作成する)やクエスト、バトルコレクション(戦闘で特定の条件を満たすことで評価が上がっていく)など、シリーズおなじみのシステムは健在です。ただクエストは受注場所が世界各地に広がっているのに、移動方法が徒歩しかないため、発生した端から片付けようとすると、かなりの時間を移動に費やさなければならず、これもけっこうなストレスです。幸いクエストは期限がないため、テレポートが可能になる終盤まで全て放置するという手もありますが…。
それからPAについても言いたいことが。今回は一つの街でかなり大量のPAが発生するのですが、基本的に1つずつしか消化できません。1つ消化すると、街から出るか、再集合して宿屋に泊まるかしないと次のPAが発生せず、すごく面倒くさいです。なぜサブイベントを視聴するために大量の労力をかけさせるのか意味不明。制作者の方はプレイヤーにイベント見て欲しくないんですか?
あ,トライエースおなじみのバグがなかったのは、評価点というか、期待外れ(?)というか。
総評
よくも悪くも尖ったところの大きいトライエース作品ですが、今作は万人受けを目指した結果、ちょっと微妙な感じになってしまった感があります。バトルもキャラもストーリーも、いいところはあるのですが、ダメな部分も目立つという、賛否両論ゲーだと思いました(ゲームカタログでは例によって黒歴史扱いですが、これは言い過ぎでしょう)。
Amazonでは1800円まで値崩れをしていますが、SFが好きな方はプレイして損はないと思いますのでこの機会にどうぞ。戦闘難易度も調整できますし、最終手段として公式チートスキルである「デッドマン」(常時HPが減少していく代わりに無敵になる。常時と言っても減少速度は緩やかで、ミキを回復に専念させれば問題ないレベル)を使えば難易度カオスでもどうにかなりますので、アクションバトルが苦手な方でも楽しめると思います。
あとこれはやり込み要素に関するものなので評価には大きく影響させませんでしたが、いい加減作業としか思えないようなやり込み要素は勘弁してください。特に「累計100万ヒット」ってなんだよ。3周プレイしても倒した敵は8000体くらいだったのに、100万ヒットとか狂気の沙汰すぎる(※現在ではオート稼ぎの方法が確立されてます)。
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