ストーリー
繭世界で暮らす少年「ラージュ」は相棒のパッチと共に、落下物を回収し日々の糧として生活していた。そんな彼はある日、リィンバウムという異世界から召喚された人間に出会う。彼の話に興味を持ったラージュは、彼が元の世界に帰る手助けをしようと決意する。一方、巨大な壁を隔てた反対側で暮らす少女アムも、リィンバウムから召喚された別の人物と出会っていた。二人はそれぞれ、壁の向こうにリィンバウムがあるのではないかと考え、同じように繭世界に召喚されてくる人物を仲間に加えつつ、冒険を始めるのであった―
という感じです。
サモンナイトシリーズのナンバリングタイトルですが、過去作から多くのキャラクターが召喚されてくるお祭りゲーになっています。過去作は主人公やパートナーを自由に選択できるため、それぞれがパラレルワールドのような位置づけをされており、どれが正史ということは特定されていません。
ここが本作の一番の評価点であり、問題点であるような気がします。もともとこのシリーズは、1~4まで発売されたあとに開発元が倒産したという事件がありました。1~4はストーリー敵にも相互の繋がりが強かったのですが、それから5が出るまでかなりの期間が空いたため、5では時間軸を4から300年後にした上で世界観を一新し、新規客の取り込みを図りました。それが上手くいったかどうかはさておき(ゲームの出来は微妙でしたからね…)、このタイミングでなぜお祭りゲーを出したのか正直疑問です。
特に今作は、1~5までを知っていないと理解できないようなやり取りも多く、新規客には厳しい作りなのではないかと思います。一応、サモナイトリーフ(▼)というアイテムがあり、これを集めることで過去キャラや過去作品のストーリーを理解できるようにはなっているのですが、サモナイトリーフの収集自体がやりこみ要素になっているため、この作品に熱意を持っていないとすべて集めるのは至難です。とはいえ熱意を持てるのはシリーズのファンが中心なワケで、うまくかみあっていない気がしました(一応、ナンバリングタイトルのキャラのサモナイトリーフは集めやすく、外伝作品のキャラのは集めにくい、といった配慮はされています)。
一方、このシリーズのファンの立場で言わせてもらえば、この作品のストーリー評価はかなり高いです。特に、作品の垣根を越えたキャラクター同士の掛け合いや、そもそもあり得ない選択主人公同士の会話、過去作のエンディング後のキャラの動向、各キャラの性格をより深く掘り下げるストーリー、過去作では救済されなかった一部キャラの救済、シリーズを横断する年表の公開など、ほしかった要素が満載です。確かにストーリー上、過去作と若干矛盾するところが散見されたりもするんですが、気になるほどのものはほとんどなく、都月先生が監修されているだけあり、十分に整合性の取れたものになっているように感じました。ゲームカタログの指摘は正しくはあるのですが、重箱の隅をつつきすぎだと思います。
あと、ストーリーが単調という意見がありますけど、別にそんな事ないと思います。確かに仲間を増やしていくという性質上ストーリー進行は遅いですが、序盤はチームが3つに区切られていて登場するキャラが切り替わるためあまり気になりませんし、3チームが合流してからはメインストーリーがしっかり流れますし。単調ってのはなぁ、TOWRUみたいなヤツのことをいうんだよ!(涙
システム
ADVパートはおなじみバストアップ会話で進みます。今作もイラストではなく3Dモデルが表示されるようになっており、アクションの種類もそれなりにあるため「紙芝居」という批判はなくなったみたいです。3Dモデルもキャラデザの再現率が高く、よかったと思います。ただキャラデザはシリーズ恒例の飯塚先生のものではなく、それをもとに森岡ヤスト氏が描き起こしたイラストになっていました。このイラストも全体としてみるとよかったと思いますが(似せているという意味ではかなりよかったです)、どうも男性の線が全体的に細いところが気になりました。別に過去作と時間軸が大きくずれているわけではなく、キャラデザを一新する必要はなかったのではないかと思ってしまいます。
シリーズ恒例の夜会話(話の切れ目で、特定のキャラと親密な会話ができる。個別エンディングにも影響)も、3Dモデルが十分に生かされ、キャラクターと向き合って会話しているような雰囲気が良く出ていたと思います。会話内容も練られており、面白かったです。エンディングは確かにどのキャラも同じような感じでしたが、まあ世界観的に仕方がないのでは。yukkun20はすべての夜会話を見ました。周回プレイ自体は当然飽きましたが、夜会話はどれも起伏に富んでおり、最後まで飽きることなく読み進めることができました。
▲お魚図鑑。全種類につき2個ずつ王冠マークが必要
トロフィーですが、プレイ日記を読んでくださっていた方ならお分かりの通り、非常に難易度が高いです(僕が持っているトロフィーの内、このソフトのプラチナトロフィーがもっとも獲得率が低いです)。特に難易度が高いのが、釣りのコンプと、夜会話のコンプ。
まず釣りですが、釣れる魚が41種類います。どの魚が釣れるかは釣り竿とルアーによって決まります。釣り竿と魚の対応は作中で説明されますが、ルアーと魚の対応は試行錯誤するしかありません。魚の中には釣れる確率が非常に低いものもいます。また釣れる魚にはランダムに大きさが設定されていますが、最大長と最小長があり、41種類すべてにつき、最大長のものと最小長のものを釣り上げなければいけません。釣りのゲーム自体は、竿が引いたらボタンを連打して釣り上げるという非常にオーソドックスなものなので、単純作業の繰り返しが辛いです。ちなみにyukkun20はコンプまでに2203匹の魚を釣り上げていますが、実際は竿にかかった時点で大体どういう魚かは分かるため、目当ての魚ではないからと釣り上げずに逃がした魚を合わせれば、釣りに挑戦した回数は3000回近いのではないかと思います。
▲夜会話コンプのためのチャート
そして夜会話についてはチャートをご覧頂いたとおりの作業量です。1周を25章とし、章数換算すると、トロフィーを得るために必要な夜会話のコンプには14周回分、ついでにギャラリーに搭載されるエンディングリストをコンプしようとすればさらに3周回分のプレイを要求されます。ちなみにyukkun20の場合、1週目は100時間、そこからエンディングをコンプするために50時間を費やしていますが、この50時間は夜会話を含めたすべてのイベントをスキップして到達したプレイ時間であり、ギャラリーで夜会話を視聴した時間を合わせれば、さらにこの時間は増えそうです。
それからいくつか問題点を挙げようと思います。
まずイベントがフルボイスでないこと。これはシリーズ伝統を無視した暴挙であり、しかもシリーズの売りだったポイントの否定でもありましたから、残念ながらフォローできません。予算の都合であることは理解できますが、せめて夜会話だけでもどうにかならなかったのでしょうか。
それからバックログがないこと。そんなに難しい技術ではないですし、過去作でも導入されていたため、なぜカットされたのか納得できません(開発段階では入っていたようですし)。特にこの手のキャラゲーでは必須の機能だと思いますのでマイナス評価です。
キャラ別の好感度を引き継げないこと。今作では夜会話以外に好感度を大きく上げる手段は乏しく、また好感度により強力な合体技を使えたり、イベントが追加で発生したりするため、これを引き継げないのは残念でした。
最後にムービーやスチル絵の出来が悪いこと。オープニングムービーは作中ムービーのつぎはぎですが、あまりに動きがなさ過ぎてびっくりしました。特にSN3~5のムービーの出来がすばらしかっただけに…。作中でもムービーが入りますが、BGMを尺に合わせて作っていないせいで曲がぶつ切りで終わり、微妙に不愉快です。またスチル絵もアニメ調になってしまいましたが、影の向きがおかしかったり関節の場所が変だったり、そもそもスチル絵を入れる意味がないシーンに入っていたりといろいろダメな出来でしたね。
キャラクター
新キャラ3人についてですが、非常に良かったと思います。それぞれ熱血で素直な少年、ひねくれたところはあるがほっとけない病の少女、クールだが徐々に心を開いていく青年、と三者三様で、また濃いメンツの中で埋もれることもなく、かといって主張しすぎることもなく、かなり微妙なバランスが取れていたと思います。夜会話をすべて見ると、より彼らの性格を深く理解することができますね。
歴代キャラについては賛否両論のようですが。個人的にはこちらも良好でした。まずキャラ崩壊がないと言うことは高く評価できます。この手の作品だと、性格が変わったり極端にデフォルメされたりすることがあるんですが、そういうことはほとんどなかったですし、トリスやマグナ、レックスやアティのように、過去作では同じポジションのため性格も似たように設定されていたキャラについても、差異をうまく付けていたりして、シリーズを愛している方がキャラクターを生かしてくださっているのだと感じました。また特定のキャラを過度に持ち上げたりけなしたりすることもなく、特定の作品が優遇されていることもなく、それぞれのキャラがお互いを尊重しながらやっている感が出ていたと思います。
またそもそも歴代キャラの選出についてですが、これも問題なかったでしょう。3生徒が登場していないことや、レシィやレオルドの扱いが同じ護衛獣のハサハやバルレルに比べて悪いという批判もあるようですが、すべてのキャラを公平に扱うことは不可能ですし、仮に扱ったとしてそれ面白いですか?
また「リィンバウムの歴史に影響をもたらす人物が召喚されているはずなのに、歴史に名を残す重要人物が登場してない」という批判にいたっては理解不能です。そもそも既に召喚されて消滅したキャラクターもいるっていう設定でしたし、重要な人物から順番に召喚しているとも言ってないですよね?大体これまでのシリーズに登場したキャラは、多かれ少なかれ歴史に名を残す人物ばかりですし。
個人的にはパッフェルさんが登場しなかったのだけが残念です。せっかくゆかなさんを呼んだのに、無口キャラ2人だけじゃもったいないじゃないですか!
あと中の人についてですが、オリジナル版やドラマCD版のキャストをきちんと集めてくださったのは嬉しかったですね。特に今ではあまり声優業メインで活躍されていない方もきちんと起用されていて有り難かったですし、ひさしぶりに後藤邑子さん(ポムニットの中の人)のお声を拝聴できたのは望外の喜びでした。演技が微妙なキャラもいたという感想もありましたけど、僕は全然気になりませんでした。
戦闘
RTS制(厳密にはではないですが、いわゆるターン制ではなく、各ユニットのステータスを基準に行動順が決まるタイプ)のスクエア型SRPGです。
各ユニットは、チーム全体で共有している経験値を振り分けられることで成長していきます。そのほかにも装備品の改造、スキルの取得、クラスチェンジによるパラメーターやスキルの変更などの育成要素が準備されています。それぞれのユニットは最終的に3種類のクラスのどれかになります(ほとんどが物理型、魔法型、スピード型の3種)ので、比較的育成の自由度が高いです。またキャラクター間の能力差も少なく、またすべての育成要素を最大にしたところでそれにて見合う敵はいないため、結局好きなキャラを育てればいいというのは大きな利点だと思います。
育成も、育成がしやすいマップというのが存在しており、比較的短時間でレベルをカンストできます。SPD(素早さ)を999まで上げれば、ほとんどのマップで敵にターンを渡すことなく単騎で敵を殲滅できます。
▲難易度は3段階
難易度についてですが、HARDは適正レベルで進めると結構歯ごたえがありました。特に敵のSPDが高く、手数で押されがちになるため、こっちの準備が整わないうちに次から次へと敵が押し寄せてくることが結構多かったです。
それから特定の条件を満たして戦闘することで達成できるブレイブオーダーですが、今作からマップごとに異なったものが用意されています。ここは好みの問題だと思いますが、個人的には前の方が良かったですね。特にレベルキャップがなくなってしまったため、最終的にはレベルを上げて殴ればいいんでしょ?となってしまいいまいちやる気が出ませんでした(と言いつつ一応頑張りましたけど)。
いくつか問題点も指摘します。
まずバトルフィールドの視点が悪いです。真横からの視点と真上からの視点を切り替えられますが、SRPGで真横からの視点が役に立つわけもないです。真上一択ですが、デフォルトが真横のため、戦闘の度に切り替えないといけません、地味にストレス。また視野が固定されているんですが、広範囲のサモンバーストを使おうとすると端の方は見えないため、うっかり味方を巻き込んだりする事故が頻発しました。ストレス!
フリー移動(キャラクターがマス目単位ではなく、プレイヤーの操作に追従して移動する)もいりません。段差や角などで引っかかったりして結構イラッときます。またコネクト(隣接するキャラクターを操作キャラクターが引っ張って移動させる機能)は実質移動力が倍になるわけで、常に使用が推奨されるほどの便利機能ですが、使用するまでに押さなければならないボタンの数が結構多く、長時間プレイすればするほどイライラします。
▲戦闘評価の基準はあるようだが…
戦闘評価の基準が不可解です。一応基準らしきものは作中で示されますが、マップによって基準が違うらしくよくわかりません。普通にプレイする分にはいいんですが、サモンナイトリーフやトロフィーの獲得にも関わってくる要素なのでちゃんとして欲しかったです。なお、ノーダメで、サモンバーストを1~2回、サモンアシストで敵を1~2回撃破すると、Sランクはほぼ取れるみたいです。
フリーバトルへのモチベーションがない。上記の通り育成はそれ用のマップですればいいですし、過去作ではフリーバトルでレアアイテムが手に入ったりしましたが今作はそれもありません。また、どのフリーマップが新規でどれがクリア済みなのか区別できない、明らかに異常な強さの敵が紛れていて撤退せざるを得なくなる(今作のフリーマップは途中で撤退するとそれまでの経験値やアイテムは入手できません)など、意欲をそぐ仕様だったのもマイナス。
なお、オートモードの頭が悪いというのはその通りだと思いますが、SRPGのオートモードなんてそんなもんだと思います。またこの作品の場合、オートを使うのは周回プレイだと思いますが、ぶっちゃけオートモードより、強力なキャラを手動で単騎駆けさせた方が早いので、オートモードはそんなに必要ない気がします。なのであまり気になりませんでした。
正直、サモンナイトの戦闘システムは3と4のターン制が至高です。いや、SRPG界の中でも最高と言っていいでしょう。5も6もそれに比べれば劣化と言わざるを得ないところですので、次回は本当元に戻して欲しいです。
総評
長くなりましたが、一言で言うならこの作品は、「シリーズのファンならマストプレイ。そうでないならスルーされても仕方がない」作品です。未経験者には勧められませんが、それはお祭りゲーという特性の問題で、このソフト自体が駄ゲーというわけではありません。特に5での大きな不満(ストーリーが安直で単調、出撃可能キャラが少ない、キャラごとの差別化が為されていない等)は改良されており、少なくとも5よりは良くなっているはずなのに黒歴史扱いされるのは納得いかないところです。
一方、シリーズファンとしてはプレイすべき作品になっていますが、それはシリーズの世界観により深く浸れるというところが大きく、ゲーム自体のクオリティが高いからという理由ではありません。シリーズファンであると言うひいき目を差し引けばこのゲームは並と上の間くらいで、次回作(あるのか…)への改善点も色々見つかった作品でした。
正直、SRPG界は結構前から暗黒時代に入っているような気がしています。最近評価が高かった作品と言えば「幻影異聞録 FE」くらいでしょうか(yukkun20はプレイしてません)。それだけにSNシリーズには期待しているのですが、今作も十分に満足できる作品ではありませんでしたね。
とはいえ、繰り返しになりますが駄ゲーというわけではないです。それはなんだかんだいいながら僕がトロコンまで150時間もプレイしていることからもお分かり頂けると思います。ターン制でなくなったことも批判しましたが、一方ターン制であれば戦闘にかかる時間は飛躍的に伸びていたわけで、おそらくトロコンはあきらめざるをえなかったでしょう。実際過去作でギャラリーをコンプするまで頑張った作品はありませんし、それを考えるとここまで頑張れたのは、システムが周回プレイに合わせたものになっていたからであることは明らかだと思います。
しかしもうすぐU:Xも終わりますし、もしかするとサモンナイトシリーズ自体が終焉を迎えるのかもしれませんね。個人的には7の発売を待ちたいと思いますけど、難しいのかなぁ…。
それでは、これでプレイ日記も終わろうと思います。ここまで5ヶ月以上にわたり、駄文に付き合ってくださった皆さん、ありがとうございました。また今トロコンを目指しているプレイヤーの方の一助になればこれまた幸いです。
それでは、次はテイルズ オブ ベルセリアのプレイ日記でお会いしましょう。
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