2022-02-19
【ゲーム】Pokémon LEGENDS アルセウス レビュー
ポケモンの新時代を切り開く名作。
Pokémon LEGENDS アルセウス
プラットフォーム | Nintendo Switch | |
ジャンル | アクションRPG | |
価格 |
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公式 | トップページ | 『Pokémon LEGENDS アルセウス』公式サイト | |
プレイ時間 | 1周目:33時間(本編クリアまで) コンプ:+32時間(ひかるおまもり入手まで) |
ストーリー
- 主人公はある日、謎の声に導かれて、かつてのシンオウ地方―ヒスイ地方へ
異世界転生飛ばされてしまう。そこは強大な自然、そして凶暴なポケモンたちに囲まれながら、人々が必死に生き抜いている世界だった。ポケモンを捕まえる才能を持つ主人公は、その才能に目をつけたラベン博士によってコトブキムラへ招かれ、ポケモン調査隊の一員となる。よそ者として怪しまれる村の中で、主人公は自らが生き抜くため、そして謎の声の告げた「すべてのポケモンと出会え」という言葉に従い、ポケモンを調査する旅に出るのだった―
- 今回のストーリーは、過去作に比べると結構ヘビーですね。過去作の主人公は比較的恵まれた家庭の出身で、文明の発達した世界での冒険がメインでした。しかし今回は、知り合いも保護者もおらず、人々が生きるのに必死な世界が舞台です。子供といえども、何もせず食い扶持が与えられるわけではありません。村を追放されれば野垂れ死ぬしかないこの世界で、主人公は自らの存在意義を示すため、調査隊に身を投じていくわけです。陰口をたたかれたり、天変地異の責任を押しつけられたり、主人公の受難は続きます。
- しかし、凶暴化したポケモンと戦ったり、先住民との軋轢に悩んだり、人々がポケモンに親しめるように奔走したりしているうちに、開拓時代のヒスイ地方を自分も生きているんだ!という感じが持てるようになっていました。正直これまでプレイしたポケモンの中で、ストーリーとしては一番だと思います。
- これまでのシリーズ作品はどれも、「ポケモン図鑑完成」という使命を背負って旅立つのに、いつの間にか悪の組織の邪魔をしたり、ポケモンリーグに優勝したりすることに目的がすり替わって、ポケモン図鑑完成がただのエンドコンテンツになっていたことが気になっていました。しかし今回は、徹頭徹尾「図鑑完成」にフィーチャーされていて、目的がぶれなかったのもよかったと思います。
システム
- コトブキムラという集落を拠点に、イベントをこなしながら、行けるフィールドや使えるアクションを増やし、広大な世界を駆け回るタイプのRPGです。
- 5つあるフィールドはオープンワールドではありませんが、それでも広大さをきちんと表現できていて、その中をポケモンたちが自由に動き回っています。それぞれのポケモンたちは、いかにも「いそうな場所」に配置されていて、うろうろしたり、鳴き声を上げたり、眠ったり、ときに襲ってきたりと、多彩な生態を見せてくれます。登場するポケモンも240体以上とかなり多く、少し進めばこれまで見たことのないポケモンに出会えます。比較的ファストトラベルポイントが少なめなのですが、フィールドも起伏に富んでいて、旅に飽きるということがありませんでした。
- フィールド描画はかなりLOD(オブジェクトがカメラから近い時はハイポリゴンを使い、カメラから遠い場合にはローポリゴンを使う描画技法)が効いていて、気になる人は気になるかもしれません。特に遠くのポケモンは動きがかくかくすることも…。ただ、正直yukkun20は気になりませんでした。どんなゲームにも多かれ少なかれこういうところはありますし、このゲームは遠方をにらみながら次の行動を考えるようなゲームではなく、あくまで主人公の比較的周囲にしかアクションを起こせないゲームですからね。むしろそのおかげかロード時間はかなり短く、フィールドを頻繁に行き来するゲームであるにもかかわらずそのあたりのストレスが溜まらなかったことの方を評価したいです。
- ポケモンと言えばやはりポケモン収集ですね。今作はポケモンを「見つけた数」「捕まえた数」のほかに、「研究レベルを10にした数」というやり込み要素ももうけられていて、単に捕まえるだけではなく、それぞれのポケモンをよりよく知ることができるようになっています。「研究レベル」は、ポケモンを捕まえたり、戦闘で特定の技を使ったり、進化させたりすることで上げることが可能です。240匹もいるのに大変だ…と思うかもしれませんが、研究レベル10の難易度はあまり高くなく、yukkun20も65時間ほどですべてのポケモンの図鑑レベルを65にすることができました。
- 今作のポケモン収集は、過去作と違い、アクション要素が強めです。フィールドをうろついているポケモンは、こちらの存在に気づくと、大抵は逃げたり襲ってきたりします。しかし、草むらに潜んだり、物陰に隠れたり、背後をとったりすると、気づかれずに近づくことができます。そこでモンスターボールを投げて当てる!と、そのまま捕獲することができるというわけです。これがめちゃくちゃ楽しい。隠れる場所がないようなところにいるポケモンに近づくために煙幕を張ったり、ポケモンが好きそうな餌を投げて、それに夢中になっている間に捕まえたり、逆にボールを外してしまって、それが落ちる音で気づかれて襲われてしまったりします。
- 気づかれても、捕まえたポケモンの入ったボールを投げると、通常通りのバトルに持ち込むことも可能です。過去作のように敵のHPを削り、状態異常にしてボールを投げて捕まえる方が、気づかれずに捕まえるより難易度が低いです。しかし気づかれずに捕まえる方が早いし、こちらの戦力を温存することもできるので、そのあたりもジレンマになって面白いですね。
- またフィールドのポケモンには、時々「オヤブン」と呼ばれる個体がいます。この個体は通常のポケモンより大きく、能力も高く、こちらを見つけるとすぐに襲ってきます。しかしうまく捕まえることができれば即戦力として活躍させることもできます。オヤブンポケモンは目が不気味に赤く光っていて、結構怖いんですけど…よい子のトラウマになりそう。
- 主人公はフィールドで野生ポケモンの攻撃を受けたり、高所から落下するとダメージを受けます。ダメージは徐々に回復しますが、繰り返し攻撃を受けたり、耐えられないほどの高所から落下したりすると行動不能になり、持ち物を一部失って再スタートになります(失った持ち物は別の手段で回収できる)。人畜無害そうなポケモンがいきなりビームを放ってきたり、人間の数倍の大きさの巨体がきりもみしながら突っ込んできたり、知能の高そうなポケモンが体に悪そうな謎のエネルギー弾を飛ばしてきたりと、世界には危険がいっぱいです。そりゃオーキド博士もポケモン持たずに草むらに入ろうとする子供を止めるわ。「コラッタしかいないのにびびりすぎじゃない?」とか思ってごめんなさい。
- UIもかなり洗練されていて、ポケモン特有のテンポの悪さがかなり解消されていたと思います。フィールドでポケモンを捕獲した場合、捕獲が成功したかどうかを確認しなくても次の行動に移れますし、戦闘でレベルアップしても、進化が可能になったとか、新しい技が習得可能になったとアナウンスされるだけです。進化や新しい技の習得は、いつでもすることができるので、レベルアップのたびに進化キャンセルをさせられたり、技の入れ替えを何体もやらないといけないということもありません。そういう細かいところの心配りが心地よくて、もう過去作には戻れない…かもしれません。
- ただ、牧場(過去作で言うところのポケモンボックス)周りはダメダメでしたけどね。ソートもできない、検索も不親切、場所もアクセスポイントから微妙に遠い、などなど…アプデがあるとしたらここを一番に直してほしいです。
キャラクター
- 剣盾ほどではありませんが、主人公の造形はかわいらしくできていたと思います。純和風の服装や髪型も多く、世界観が統一できていたのではないでしょうか(遮光器のことは忘れろ)。
- そのほかのキャラもよく立っていましたね。特に先住民にあたる「コンゴウ団」「シンジュ団」のリーダーたちは、これまでのジムリーダーのようなちょい役ではなく、がっつり本編に絡んでいて良かったです。もちろん二択はカイちゃんを選びましたよね?能力的にも、人望的にも、キャラ的にもセキに負けてたような気はしますが…つーかカイちゃんヤンデレだよな。
- 過去作のキャラのご先祖様っぽいキャラもいろいろいて、考察がはかどりそうな感じでした。DLCで謎が解かれるのを期待したい。
戦闘
- 戦闘は大きく分けると、「野生ポケモンとの戦闘」「トレーナーとの戦闘」「ボス戦闘」の3種類があります。今作はステータスがダメージに及ぼす影響が従来の1/5になっているらしく、レベル差があっても、タイプ相性が良ければ押し切れるようになっています(10くらいレベル差があってもタイプ一致で弱点を突けば大体は一撃)。逆にレベルが低い相手でも、油断しているとあっという間にひんしにされます。
- 戦闘は、従来のに近いコマンドバトルですが、これまでのような厳密なターン制にはなっておらず、素早さと、選択した技によって行動順が入れ替わります。また技も、ふつうに繰り出すほかに、威力と命中率が上がるが行動順が下がる「力業」、威力は下がるが行動順が上がる「早業」として繰り出すこともできます(いずれもPPを2消費する)。高威力だが命中率の低い技を力業にして安定して当てたり、逆に早業で能力変化して、続けて攻撃したりと、戦略が広がりました。
- 野生ポケモンの戦闘は、基本的にこちらから仕掛けて始めることになります。敵のHPを0にするか、捕獲すると戦闘終了で、いずれも生存しているポケモン全員に経験値が入ります(先頭に出たポケモンは少し多め)。
- トレーナーとの戦闘も基本的には同じですが、この世界にはルール化されたポケモンバトルという概念がないため、こちらは一体ずつしかポケモンを出せないのに、むこうは2体や3体同時に出してきてたこ殴りにされることもよくあります。それでも1匹しか出さない主人公は真面目すぎる。また1匹ずつ繰り出してくる場合でも、交代後のポケモンは交代前のポケモンの行動順を引き継いでいるため、相手のポケモンを倒すと、こちらのポケモンに相性のいいポケモンが出てきて先手をとられ、一撃でこちらもやられてしまうということも結構よくあります。本編の事実上のラスボス戦は8連戦になるのですが、この仕様のため非常に苦労しました。
- ボス戦闘はアクション性の高いバトルになっています。主人公がまず生身で戦い、敵の攻撃を回避しながら、隙を見て「シズメダマ」というアイテムを投げつけてHPを削っていきます。特定の行動後にボスが気絶することもあり、その場合は通常のポケモンバトルに持ち込めます。通常のバトルでHPを削りきると、今度はボスが長い時間気絶するので、さらにシズメダマをめちゃぶつけすることになります。アクションの難易度はかなり高く、対象年齢大丈夫?と思うほどでしたが、ゲームオーバーになっても敵のHPを回復させないまま再戦することができるので、詰むことはないと思います。
総評
- いろいろ褒めましたが、それ以外にも、主人公のアクションはかなり単純(基本的に移動、回避、投擲の3アクションのみ)なのに不自由さを感じさせなかったこと、サブイベントもポケモンの生態に詳しくなれる興味深いものが多かったこと、個体値や努力値が廃止され、厳選をしなくて良くなったこと、色違い探しも大分効率化されたこと、手持ちのポケモンをフィールドに出して、リアクションを楽しめること、戦闘の技エフェクトが非常にこっていることなど、ほかにも評価できることがたくさんあります。
- かといって欠点がないというわけでもなく、前述した牧場の仕様、村でライドポケモンに乗れないこと(世界観的に仕方がないので、せめてアクセスポイントを増やしてほしい)、投擲するときターゲットを見ながらだと何を投擲しようとしているのかわかりにくいこと(ターゲッティングの時だけ、アイテム選択コマンドをターゲットの直下に表示すればいいような気がする)、オオニューラが暴発しやすいこと(ウォーグル入手後はほぼ不要になるので、OFFにするスイッチがほしい)、イダイトウにライドした状態でボールを当てる難易度が高すぎること、ミニマップがないことなど、細かいことで気になったところはあります。このあたりは次回までに改善してほしいところですね。
- これだけのボリュームがありながら、60時間ほどで240を超えるポケモンをふれあえたその密度に驚かされました。先日のBDSPがちょっと残念な出来だったので若干心配していたんですが、蓋を開けてみれば剣盾に並ぶ最高傑作でした。ポケモンHOMEとの連動、そしてあるかもしれないDLCに非常に期待しています。