更新が不安定で申し訳ありません。連休は再び帝都に出張しておりました。東京駅前にある八重洲ブックセンターでゲットしたのでレビューを。
星界の断章III
著者:森岡浩之
レーベル:ハヤカワ文庫
価格:620円
あらすじ
これまでに発表された短編6編+書き下ろし1編のオムニバス形式です。当サイトでも感想を書いているものもあるので、そちらも併せてどうぞ。
帯には「シリーズ累計190万部突破!星界の逸話第3弾 アブリアル(皇族)、スポール(貴族)、エクリュア(士族)。そのとき何が彼らをそうさせたか?/明かされる30番目の氏族の話、書き下ろし短篇「来遊」収録」とありました。
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野営
→【小説】星界の断章 野営~ドゥサーニュの場合~ レビュー | Y.A.S.
→【小説】星界の断章 野営~ペネージュの場合 レビュー | Y.A.S.
→【小説】星界の断章 野営~ノールの場合 レビュー | Y.A.S.
出奔
優秀な姉・ラフィールとくらべて劣等感を感じる弟・ドゥヒール。彼は家出をしようと思い立ち、叔母・ラムリューヌの船に密航する。ところが隠れていた区画ごと、謎の船に積み込まれてしまう。その船は平面宇宙航行能力を持っていないにもかかわらず、8.1光年離れたクテス星系へ向かうという。帝国を捨てたというアーヴたちの行く末は…
介入
ベリサリア星系は窮地に陥っていた。50年前にスーメイ人と交わした契約に従い、惑星モメンタの引き渡しを迫られていたのだ。そんな中、新たに星系を訪れたのは帝国創建を知らせに来たアーヴ艦隊だった。一介の公務員に過ぎないアルコ・アウゴは、急遽アーヴ艦隊との交渉役に任じられるのだが…
誘引
翔士修技生としての訓練を終え、列翼翔士に任じられた若き日のクファディス。彼は同期であり友人でもある、スポール一族のフェリーグからいっしょに交易に出るよう誘いを受ける。交易に興味のなかったクファディスはその誘いに悩み、そのせいで家族との関係も微妙になってしまうのだが、最後にはその誘いを受けることに決めた。しかし翌日それをフェリーグに告げたところ、思いもよらない返事が返ってきて―
海嘯
→【小説】星界の断章「海嘯」 レビュー | Y.A.S.
離合(「岐路」から改題)
→【小説】星界の断章「岐路」 レビュー | Y.A.S.
来遊
帝国創建前の時代。平面宇宙航法を研究するドゥムイ委員会の次席書記・ロビート・ボイガは、委員会への参加を希望して遠くの星系からやってきた地上人・エディの世話係となる。ついに平面宇宙航法が確立したとき、ボイガは帝国からエディにある贈り物を携えてきたのだが―
感想
収録作品については予想が外れてしまいましたが、初出が同人誌だったことから収録は絶望的かと思われていた「誘引」が収録されたのはうれしい誤算でした。これは本当にこれまで全く読んだことがない作品でしたので…今回の作品はいろんな人がひどい目に遭うという話が多いように思いますけど、一番ひどい目に遭ったのはやはり不幸体質ことセスピーさんだったというオチ。「誘引」の結びにある
フェリーグに限らず、ありとあらゆるスポールと関わりなく軍務を終えられますように―セスピーは心から願った。
という言葉がこれほどむなしく響くとは。
そのほかの作品についてですが、初出時から大きく変更されているのは「離合」ですね。タイトルも変わっていますが、ノールの音痴がだれ譲りか、というエピソードが追加されています。本編では父親譲りということになっていたのですが、「岐路」では遺伝子提供者のコンサ譲りとも取れる記載があったのでちょっと気になってたんですよね。すっきりしました。
「来遊」は帝国成立直前についてかなり濃いエピソードが書かれているので、年表の作りがいがありそうです。でもエディが30番目の氏族の創設者になったというのはこれまでの情報と完全に矛盾するんだよなぁ…。「帝国暦42年、アーヴたちは地上人が同胞に加わることを許容した」という記載の「アーヴ」が、「遺伝子的なアーヴである子を持つ地上世界出身のアーヴ」と解釈すれば何とか…ただちょっと無理がありすぎるかも。エディも遺伝子的なアーヴの子を持つことを禁止されているわけではなさそうですし。
なお断章なので、メインキャラはほぼ出てきません。殿下?出てきますけど台詞は10個もないのであきらめてください。ジント?誰だっけそれ。
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>という言葉がこれほどむなしく響くとは
クファディスさんの人生って…w。
>なお断章なので、メインキャラはほぼ出てきません。殿下?出てきますけど台詞は10個もないのであきらめてください。ジント?誰だっけそれ
今までの断章シリーズには二人ともそれなりに出て来てくれたのですが…。まだ読んでないけど、ノールはなかなか得をしている様に感じます。流石第2のヒロイン(笑)。
2014.03.23 13:32 | by Ivan
クファディスさんはお姉さんにもひどい目に遭っていますし、女難キャラなのかもしれませんね。
2014.03.24 01:13 | by yukkun20
さっき断章3を読み直して気づいたのですが、「来遊」に登場するラ・ゲルシスマって、「出奔」に登場するクテス星系と同じですよね…?そう思うとプロローグもすごい意味深に感じる。
2014.04.04 01:24 | by yukkun20
実は「ひょっとしたら」と思ってたんですがそうなんですね!かの地上世界がどうなってるのか知りたいですよね。
2014.04.04 07:26 | by Ivan
根拠といえば、アブリアル伯国からの距離が同じと言うだけなのですが…でもこれが事実なら、サロスは帝国を捨てたアーヴたちが細々と暮らしているわけじゃなくて、アーヴたちによって救われたサロスの原住民たちとアーヴが仲良く共存しているという可能性もあるということですよね。それって夢があるじゃないですか。
2014.04.05 00:29 | by yukkun20
それは夢があります。帝国は、はぐれ者に厳しい国なので、サロスがよき新天地だといいですね。帝国にサロスの様な土地があるとは思ってもみませんでしたよ。
2014.04.05 01:05 | by Ivan