2013-09-30
【小説】ガンパレード・マーチ アナザー・プリンセス レビュー
久々に小説レビュー。旅行中に読んだ、アナザー・プリンセスのノベライズです。
著者:芝村裕吏
レーベル:電撃ゲーム文庫
価格:650円(税別)
あらすじ
熊本で戦っていた戦車随伴歩兵小隊小隊長の小山美千代は、廃墟にたたずむ丸腰の少年、秋草一郎技術万翼長に出会う。わけのわからないままその指揮下に入った小山は、どこか浮世離れした秋草に連れられて辛くも敵の侵攻阻止に成功する。
その翌日小山小隊の属する戦車部隊は、戦いで失った戦車の代わりに人型戦車を受領することになった。秋草の所属する情報分析専門の部隊、通称二度寝天国小隊と共に戦う内に、秋草に惹かれていく小山。そんな中、5121小隊の異常なまでの強さを目の当たりにした二度寝天国の実質的指揮官、神楽はその強さの理由を探るため秋草を5121に潜り込ませる。しかし敵の大規模攻勢が予想されるにも拘わらず、小隊の強さの理由は判明しない。焦る神楽は舞と取引をし、熊本城に敵を集めて一掃するという作戦を立てるが、その目的は敵もろとも一族を裏切った舞を抹殺することにあった。それと知らない秋草は、戦いの中で速水を舞と共に死なせるか、神楽に背いて小山を助けるかの二者択一を迫られるのだが―
感想
意外と漫画のシナリオそのままでビックリしました。漫画版では中途半端に終わった、小山と秋草の恋物語もはっきりした形で進展していて安心です。漫画版ではよく分からなかった結末部分もはっきりしましたし…。榊ガンパレではあまり登場しない、参謀部の活躍ぶりに焦点が当てられていて、個人的には面白く読めました。芝村節が好きな人には十分お勧めします。
ただ神楽がほぼ完全な悪役で終わってしまったのはちょっと残念だったかな。
解説
この小説は、ガンパレのゲームとも、榊ガンパレともやや乖離した設定が使用されています。ガンパレの世界をある程度深く知っているとわかるネタなども含まれているので、僭越ながら簡単な解説を。ただし僕もさほど世界観に詳しいわけではないので、より詳しい方からの突っ込みもお待ちしています。
- 深澤(正俊)(28ページ)
ガンパレード・マーチ 緑の章に登場する同名の人物と同一人物。彼のセリフに登場する「金城のアネゴ」(189ページ)とは同じく緑の章の登場人物「金城美姫」、「源さん」(171ページ)とは「源健司」のこと。 - 宮石忠光(86ページ)
ゲーム版や榊ガンパレでは「若宮康光」に当たる人物。
元々この世界の人間は全てクローン(なので人体組成からして異なる。「骨の材料」に「プラスチック」というルビが振られている(146ページ)もそのため)。クローンは人間同様赤ちゃんの姿で生まれ、成長するが、中には成体クローンという、はじめから大人の姿で作られたクローンが存在する(主として戦闘用のため)。
宮石は若宮型と言われる成体クローンで、善行の家令。他の同型との区別のため「善行忠孝」と「石津萌」(石津は善行に一時保護されていたため)から一字ずつを取って、宮石忠光と改名している。 - 騎魂号(91ページ)
ゲームや榊ガンパレでは士魂号複座型といわれている機体のこと。騎魂号は愛称。 - 速水厚志(110ページ)
本当の速水厚志は秋草の友人。彼は徴兵された後に、何らかの理由により死亡している。
ゲームや榊ガンパレに登場する速水厚志は、両親が幻獣共生派だったため、ラボに送られ人体実験のモルモットにされていた。しかし研究員などを殺害して逃亡。その途中で死んだ本当の速水の学籍を乗っ取って、速水厚志を名乗るようになった。秋草が怒っているのはその事。 - 菊池「明日には子供の申請とか出す勢いじゃ?」(112ページ)
上記の通り人間は全てクローンのため、自然生殖能力は無い。そのため子供は申請することで交付される。余談だが、舞だけはクローンではなく、本当の人間である。 - 對馬「秋草一郎は竜になる運命だ」(128ページ)
竜とは最強の幻獣に対抗するための最強の兵器。愛する者を失うなどの強い絶望によって竜になると言われており、秋草はその候補で、小山はその餌。速水と舞も「竜と餌」とされている(つまり、「舞の手元にある”人中の竜”」(214ページ)とは速水のこと。ただし舞は自分が餌だとは知らない)。榊ガンパレでは登場しない。ゲーム版はラスボスとして登場する。 - 「背が二乗になると重量は三乗になる」(176ページ)
やや不正確な表現。背の高さがx倍になると、筋肉が生むことの出来るパワー(筋肉の断面積に比例)はx2倍になるのに対し、重量はx3倍になるため、負荷はx3/x2=x倍になる、という意味。 - 「ウサギの名はストライダー」(227ページ)
おそらく「式神の城」に登場するストライダー兎から。 - 東原ののみ(252ページ)
瀬戸口は戦争孤児であると説明しているが、彼女も速水同様のラボの被験者。瀬戸口も竜候補であり、彼女はその餌として小隊に配属されている(もっと詳しく言うと、ののみは瀬戸口が好きだった女性のクローンで、壬生屋はその女性の生まれ変わり)。 - 大木妹人(254ページ)
「絢爛舞踏祭」に登場するオーキ・マイト、「男子の本懐」に登場する同名の人物と同一人物。簡単に言うとガンパレの世界とこれらの世界は並行世界(厳密に言うと違うのだがその辺りは長くなるので省略)の関係にある。通常世界間を移動することはできないが、登場人物の中にはなんらかの方法で世界間を移動している者がおり、大木もその一人。ゲームや榊ガンパレには登場しない。
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