2024-04-28
【ゲーム】LOOP8 レビュー
やっぱり芝村ゲー。
LOOP8
プラットフォーム | Nintendo Switch™ / PlayStation®4 / Xbox One / Steam® | |
ジャンル | ジュブナイルRPG | |
価格 | パッケージ版:5,980円(税別) ダウンロード版:5,980円(税別) |
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公式 | 『LOOP8(ループエイト)』 公式サイト | |
プレイ時間 | 94時間(トロコン) |
ストーリー
- 時に1983年。世界は「ケガイ」と呼ばれる化け物に蹂躙され、人類の生存権は大きく削られていた。宇宙への脱出を試みて建造された宇宙ステーション「きぼう」もケガイに襲われ破壊されてしまう。その宇宙ステーションで生まれ、ただ一人地上へ落ち延びた少年ニニは、母方の親戚を頼って、瀬戸内の田舎町「葦原中つ町」へやってくる。しかしケガイの被害が少ないその町にも、災厄が忍び寄ろうとしていた。ニニはこの町で一夏を過ごしながらケガイへ立ち向かうことになるのだが―
- ということで、8月1日から31日までを1日1日過ごしながら、世界の謎に迫りつつ町を襲う災厄を退けていくADVテイストのRPGです。ガンパレード・マーチのゲームデザインなどで知られる芝村裕吏氏がシナリオを担当しており、世界規模の災厄により人類滅亡寸前から始まるおなじみの芝村ゲーになってます。ガンパレを初めとする無名世界観で育ったyukkun20も発売を楽しみにしていました。
- ストーリーはなかなか評価が難しいですね。全体としてみると説明不足の感は否めません。このゲームは日本神話の天孫降臨を下敷きにしているのですが、日本神話についてある程度の知識がないと、話が分かりにくいところがあります。日本神話における原初の神々の系譜…くらいは知っておくと謎解きに役立つかも知れません。yukkun20の日本神話知識はせいぜい「月と闇の戦記」を読んだ時に仕入れたごくわずかなものですが、それでも大いに助けになりました(森岡先生ありがとうございます!)。この辺用語集とかでもいいからカバーしてくれれば良かったのですが。
- あと、この世界はゲーム本編でも幾度となく滅びるんですが、滅びると世界がループして8月1日からやり直しになります(それ以外に、任意のタイミングでもループ出来ます)。…が、このループがゲーム性にあまり結びついてないんですよね。ループするとそれまでに築いた人間関係も、鍛えたパラメータもリセットされてしまいます(ただし2周目以降は、それまでのループで上がったパラメーターまでは上昇補正が掛かるので、全く同じ作業を繰り返すことになるわけではない)。パラメータが上がりやすくなったことで、キャラクターとのイベントに集中しやすくはなっているのですが、2ループ目以降限定のイベントもほとんどなく、ガンパレみたいに世界の深淵に迫っていく!みたいな要素も薄めのため、自発的にイベントを起こしてこの世界を探っていくという目的意識を持たないと、何度もループするモチベーションが持ちにくくなっていました。
- とはいえ、ストーリーが面白くないかというとそんなことはありません。田舎特有の閉塞的な世界観のなかで、純真な少年少女達が時に世界に振り回されながら、日常を送っていくというのはジュブナイルとしては鉄板ですが本作でも非常に上手く扱われていました。世界滅亡の危機を知っているのはプレイヤーだけで、それにせき立てられつつも、他のキャラクターと楽しくお喋りしたり遊びに行ったりデートしたりしたりして夏を満喫したい!という気持ちが削がれないようになっていたと思います。
- 人を選ぶのは間違いないと思いますが、総じてyukkun20は楽しめました。でなきゃ攻略サイトまで作ろうとは思いませんからね。
システム
- ゲームは、マップの中を歩き回ってキャラクターと会話やイベントを起こす「日常パート」と、「黄泉比良坂」というダンジョンを攻略してボスを倒す「非日常パート」の2つに分かれています。
- 日常パートですべきことは主に2つで、NPCたちと会話や遊びなどを通して人間関係を構築していくことと、勉強や訓練などで主人公の能力を強化することです。
- 人間関係について
- 人間関係は非日常パートの先頭にも影響を及ぼすのですが、概ね良好な方が戦闘でも有利ですし、NPCとの間で発生するイベントも、関係が良好であることがトリガーになっているので、基本的には人間関係(具体的に言うと友情値と愛情値)を上げていくことになります。
- 人間関係を上げるには、NPCに提案を行い、それを受け入れてもらうのが一番の早道です。提案には色々な種類があるのですが(例:「仲良くしよう」「けなしてみる」「家に来ない?」など)、それに対するNPCの反応は受け入れるか拒否するかの2パターンしかありません。NPCはカレルシステムというAIによって独自の行動を取っているのですが、そのあたりの自由度が少ないところは残念でした。特に昨今のゲームに慣れたプレイヤーには退屈に感じるかも知れません。yukkun20は古い人なのであまり気にならなかったのですが、ただこのゲームの売りの一つでもあるはずのカレルシステムが思ったほどではなかったというのは残念でした。
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- 各キャラとの間に発生するイベントは非常に出来が良く(この辺は後述)楽しめたのですが、好感度で発生するのでカレルシステムの独自性がやはり活かされず、普通のADVとの差別化が十分でないように感じました。
- あと一応世界の謎に迫っていくという側面もあるのに、バックログがないのは本当にダメだからね。いや、ない理由は世界設定上の理由なのではないかという気はするのですが。
- 訓練について
- マップの特定の場所に行くと訓練を行えます。3時間経過する代わりに主人公のステータスを上げることが出来ます。ガンパレでは訓練自体にも成否判定がありましたが、今作は必ず成功し、上がるパラメータ量も一定です。同行している仲間と一緒に訓練出来るとなお良かったかも(「一緒に訓練しよう」という提案はあるが、訓練の種類も上がるパラメータも決まっている)。そうでないと日常パートで仲間に同行してもらうメリットがほとんどないですからね。
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- また訓練以外に、特定の場所で見つかる「加護」というアイテムを手に入れることでステータスを上げることができます。この加護は周回しても失われないため、段々初期ステータスが高くなる仕組みになっています。問題はそれぞれのキャラにつき50個、全員で650個と膨大な個数あり、一気に手に入れるようなチート手段も存在しないってことなんだよな。しかも特定のキャラがパーティにいないと手に入らない物もあるので、攻略本必須です。
- マップについて
- NPCとの会話や訓練はマップ上で行われます。葦原中つ町は16のマップから構成されていて、そのうち6箇所にファーストトラベルすることが出来ます。これ自体にはあまり不便は感じなかったのですが、あちこちで言われているとおり主人公の移動速度の遅さは気になるところです。このゲームは現実世界の1秒=ゲーム内の1分に設定されており、移動(ファストトラベル含む)や一部のイベント中は時間が経過するので余計です(この移動が遅いのも世界設定的にわざととのことなので一概には攻められないのですが)。個人的には、時間の流れのことを気にしなければ移動の遅さは気になるほどではない(なのでyukkun20も、ループがすすんで時間に余裕が出来るプレイの後半には全然気にならなくなりました)のですが、普通にプレイヤーだとそこまで到達する前にイライラが勝ってしまうかも知れません。まあ校門から教室まで30分くらいかかったりするからな…
キャラクター
- 登場人物は主人公含めて13人。町一つが舞台なのに少なすぎん?と思うかも知れませんが、全然そんなことはないです。なぜなら他の12人のキャラが濃すぎるからです。
- 自分は神殺しのために生み出されたという少女、主人公のことをお父さんと呼ぶ年上の少年、自らの存在意義に悩むロボ娘、神様を名乗る狐耳少女、復讐に燃える科学者の先生、時代を先取りしすぎのオタクなど、色々なキャラクターが登場します。
- 本作のキャラクター造形および設定については手放しで褒めてもいいと思いますし、yukkun20がプレイを続ける原動力にもなりました。あまりあざといキャラはいないのですが、それぞれのキャラクターは人間的にも魅力的に描かれていて、是非仲良くなってもっと深い仲になりたい、この人を死なせたくない、と思えるように自然に誘導される感じになっていました。また時折見せる裏側の闇とかもいいスパイスになっていて、そこから世界設定に引き込まれていくんですよね。でもループすると人間関係がリセットされるため、みんなと仲良くなろうとするとやはりループを重ねないといけないわけで、そこまでプレイする人が少なそうという問題が…やっぱり惜しいところです。
- ということでここからはyukkun20が推すキャラについて少し語ろうと思います。まあ女の子ばっかりだけどな!あと高ネタバレ注意。
ミッチ
将来を見据えて勉強中なのに、ケガイのせいで世の中が退廃的なので全然報われない不幸少女。当初は孤独感を抱いており、主人公が話しかけてもすげなくあしらわれるだけなのだが、仲を深めるとめっちゃ積極的にラブラブしてきてかわいい。黄泉比良坂でのイベントでかなりひどい目に遭っていることが分かるのでまずます救ってあげたいのですが、行き着くところは原さんなんだよなぁ(意味を知りたい人は「原素子 争奪戦」あたりでググってください)。
ベニ
菅原道真の娘で、死後に神に転生した狐耳少女。神様らしく喋ろうとしていますが全然上手くいってなくて、怒ると足を踏みならすし油揚げならぬメンチカツを見ると目の色が変わるし、凄く好感の持てる子。ケガイと戦えとうるさいのですが、自分も一緒に戦ってくれるので無責任な感じは全然しないところも○。しっぽモフモフした。闇が深い設定を持っているキャラが多い中、あまり裏がないのでそういう意味でも救われます。
マキナ
ケガイと戦うために一人の科学者によって建造された人型ロボ。オーバーテクノロジーなのはそれなりに理由があるのですが作中では語られません(公式サイトの小説参照)。普通こういうロボ娘だと、人間になりたいと思って段々表情豊かになるとか、製造目的と現実のギャップとの間で苦悩するとかが鉄板展開だと思います。彼女もそういうところもあるんですが、そもそも最初からめちゃくちゃ表情豊かで主人公にウザ絡みしてくる感じなのであまり悲壮感はないですね。父親との関係性などシリアスな流れを時々挟んでくるところもいい。
イチカ
戦闘能力の高い女神を憑依させ、ケガイと戦う少女剣士。戦闘時のアクションがかっこよすぎで惚れるしかないです。世間知らずなところがあって可愛いんですけど、その正体を知るうちにこの世界の深い闇へと…。彼女を真の意味で救うためには個別エンディングを見るしかないので、そりゃ大切にしちゃいますよね。イチカとこの後登場するコノハ、それにテラスさんのイベントは相互に関連しているので是非チェックしてほしいです。
コノハ
メインヒロインなのにミッチを超えるヤンデレ。だがそれがいい。主人公に親切だし、色々なこと教えてくれるし、朝ご飯作ってくれるし、甘やかしてくれるし、作中唯一のキスイベントあるし、愛情を全力で注いだらあのオチだよ!だがそれがいい。彼女も闇深設定持ちなのでしっかり話を聞いてあげましょう。ただし彼女に全ての愛情を注ぎ込むと他のキャラとの個別エンディングへの道が閉ざされるんだよなぁ。この効果はてきめんで、トロフィーリストによるとコノハ以外のキャラのエンディング到達率は大体4%前後なのですが、コノハのみ18%超である。
タカコ
主人公を兄と慕う小学6年生。大人に受けが良く、同学年からは好かれていないというある意味リアルなキャラ設定なのですが、そんなこととは関係なく素直でいい子。妹特有のハイテンションで、異邦人の主人公にも構ってくれるので良くない道に落ちそうです。こどもなのに視界も広く、将来のちゃんと考えているのでそりゃ大人に好かれるだろうなという感じ。いい気分!ただ「デジタルじゃない日記つけてる」っていう台詞はおかしくない?今1983年だよ…?
戦闘
- このゲームは6回ダンジョンに潜ることになり、ダンジョン内には雑魚的がうろついてはいるのですが、こちらから話しかけない限り戦闘にはならず、雑魚と戦うメリットもほぼない(経験値ももらえない)ので、エンディングを迎えるために必要な戦闘は各ダンジョンのボス6体だけです。
- ではどうやって戦闘力を高めるかというと、これは日常パートでの訓練、そして人間関係だけです。人間関係が高まると、主人公や仲間の使える技が増えたりしますし、また登場キャラたちが憑依される形でボスになるのですが、それまで関係が良好であれば攻撃も緩やかになりますし、そうでなければ敵の火力が上がって厳しい戦いを強いられることになります。
- これが戦闘に深みを出している…かと思いきやそんなことはなく、本作の戦闘はおまけだと考えてもかなり不満が残ります。
- 戦闘のテンポが悪い。ただし仲間の技の演出はカメラワーク含めて優れているし、戦闘回数自体が少ないので許容範囲ではある。せめて演出カットがもう少し機能していれば…(一応カット機能はあるが、カットされる分量が少なすぎる)
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- 1~3人パーティが組めるにもかかわらず、パーティが増えるほど戦闘が苦しくなる
- 人数の増加によるボスの能力強化が大きい
- 仲間のHPを回復する手段がないため、攻撃をかばってあげないといけない
- 仕様上、仲間とボスとの嫌悪値が上がりやすく、そのせいで敵の火力が上がりがち
- 仲間のHPが0になると、現実でも死亡するため死亡を前提とする作戦をとれない
- 1~3人パーティが組めるにもかかわらず、パーティが増えるほど戦闘が苦しくなる
- 戦闘は、主人公しか操作出来ないのですが、主人公はその能力で敵味方がどういう行動をしているか予知することが出来ます。そのためバフを自分にかけようとしている味方がいるなら自分が攻撃、逆に攻撃しようとしている味方がいるならこちらがバフ、とそれに基づいた行動を取ることができます。その辺はなかなか面白いと思うんだけどな…結局↑のせいで、主人公を鍛えてひとりで殴っていれば勝てる感じになっているのは惜しいところ。
- このあたり、ガンパレの戦闘はハード面故の制約がありながら、それでいて独自の体験を生み出していたので余計残念に感じました。
総評
- 全体としてみると、非常に惜しい作品という感が否めません。作ろうとした物は垣間見えるのですが、悲しいかなシステムやバトルがそれに追いついていません。世界設定、シナリオ、キャラデザ、音楽、グラフィックなど個別に見ればいいところも多いのですが…。「令和のガンパレ』を期待していたのに、出てきたのは「平成後期のガンパレ」だった、という感じでしょうか。
- とはいえ、長くプレイしていくうちに面白さが分かってくるスルメゲーなところがあります。魅力的な部分に届くまでプレイを続けるモチベーションを持てるかどうかでこの作品の評価が変わりそうです。そのようなわけで、90時間プレイしたyukkun20的には十分良作だったのですが、世間では賛否両論扱いになっているのも納得のいくところではあります。
- ただやはり芝村ゲー独特の魅力については再認識出来ましたので、続編なり精神的続編なりが出たら多分プレイすると思います。カレルシステムをゲーム的にきちんと昇華出来る技術力のある開発会社さん、なんとかしてくれ…
ネットでは賛否分かれてるようですが
yukkun20さんは攻略サイトを自作するまでかなりのめりこんだみたいですね
カレルシステム AIはまだ人類にとっても研究段階な気がしますね
ゲームに採用するのは難しかったのかも
ただ世界観は説明だけでも引き込まれましたので どちらかといえばアニメ向けの作品だったのでは
ないでしょうか
2024.04.29 08:10 | by sasa
カレルシステムは群体型AIなので、いわゆる現代の我々がイメージするAIとは違うもののようですが、そのギャップもマイナスに働いているような気が。
アニメでやれもあちこちで言われていますが、この内容をアニメというストーリーで仕上げようとしたら相当シナリオライターが凄腕じゃないとどうにもならない気がするんだよな。ガンパレのアニメもあれだったし。
2024.04.29 23:08 | by yukkun20