2018-09-09
【小説】星界の戦旗VI-帝国の雷鳴- レビュー
5年半ぶりに、星界シリーズ本編の最新作が発刊されました!5の後書きを読んでからずーっと待ち続けてきましたが、ついにそれを読めることに感動です。今までこのサイト続けてきて本当によかった。
今回もAmazonの罠にはまって読むのが遅れましたが、ようやく2回読み終わったので、レビューをさせて頂きます。そして前巻のレビューでも言いましたが、偉大な作品を再び世に送り出してくださった森岡浩之先生に最大限の感謝を!
なお以下のレビューにはネタバレがありますが、ストーリー上の重要なネタバレはしていないつもりです。ですが全体的な流れには触れざるを得ないところなので、そういうのも駄目な人は回れ右。
星界の戦旗VI-帝国の雷鳴-
表紙など
表紙イラストはおなじみ赤井孝美先生によるラフィールです。ついに帝国元帥になり、双翼頭環を頂いた凜々しいお姿が描かれています。5の表紙に比べて耳が大きくなったような…気のせいですよね。
帯は「大人気スペース・オペラ、待望の最新刊!《星界の戦旗》第二部開幕!!怒りの炎を燃えたたせ、ラフィールが還ってきた!」となっています。
あらすじ
四カ国連合軍の侵攻により、アーヴによる人類帝国の帝都ラクファカールは陥落し、アーヴたちは宇宙に散り散りになった。そして10年後。帝国中枢との連絡を断ち切られ、スキール王国に封じ込められたアーヴたちは、ラフィールの父ドゥサーニュを副帝に据え、雌伏の時を過ごしていた。一方帝都を脱出したアーヴたちは、新皇帝ドゥサーニュのもとに集い、ついに人民主権星系連合体を滅ぼし、スキール王国との連絡を回復する一大作戦「霹靂作戦」を発動する。今や帝国元帥となったラフィールは、ジントを副官に据え、霹靂艦隊を率いて、連合体の主星系ノヴ・キンシャスを目指す。その胸に、ラクファカール奪還への激情を秘めながら―
感想
前巻は、読者が思いも付かなかったような展開が描かれた作品でしたが、今回は読者が見たいと思うものをストレートに描いてくださった、やはり期待を裏切らない名作でした。仕事から帰ると郵便ポストに届いていたので、とりあえず序章だけ読んで、あとは服を着替えてからお茶でも飲みつつゆっくり読むか、と思っていたのですが、いつの間にか服も着替えず最後まで読み通してしまいました。途中やめ出来るわけないわ。
とりあえず序章の、
「何度も言わせるな。そなたも……」
「はい、僕もアーヴですよ、殿下」
「馬鹿」
※14ページより引用
だけで転げ回るくらいのファンですので(みんな転げ回ったよね?)。
舞台が10年後に移りましたが、ラフィールとジントがどういう関係になっているかだけが不安でした。発売前には、「ジントとラフィールの甘酸っぱいエピソードは、10年の闇の中に葬られてしまうのか…まだまだキャッキャウフフしているところも見たかった気がしますが、はてさて。」なんてコメントしてしまいましたが、もう完全に熟年夫婦の域じゃないですかー。多分この10年の間には、紋章や戦旗2で描かれたような大事件はなかったんでしょうけど、二人一緒に戦場を駆け抜けてきたんですもんね。そりゃこうなるのも当然だと思いますし、間が端折られたからと言って、全く不自然さを感じず、自然に二人の関係を受け入れることが出来ました。ラフィールはジントのことを、
その心がラフィールには愛しく、同様に厭わしいのだった。
※120ページより引用
とまとめています。さらっと書いていますが、ラフィールがジントのことを愛しく思っていることがはっきり言語化されたのは初めてなのではないでしょうか。それでいて、「厭わしい」とされているのはジントの心というより、ジントの心を完全には読み取れない自分の心なんだと思いました(かといってそれを後悔しているわけではないのが彼女らしいですが)。それでいて、
ひょっとして、ラフィールの変わらぬ外見のせいで、ジントは兄のような気分になっているのかもしれない。やがて、父のように、あるいは祖父のように振る舞うのだろうか。
もっとも、それまでお互い生きているとは限らない。
※123ページより引用
って、死が二人を別つまで一緒にいる気満々じゃないですかー((o(´∀`)o))
もちろんラフィールが艦隊を率いるようになったことで、戦闘描写もより高度なものになりました。ラフィールは統帥官になりたいみたいですが、個人的にはもう少し前線でがんばってほしいですね。ラストシーンはなんとなく不穏な雰囲気が漂っているようにも感じますので、統帥官はまだ先のような気がします。
しかしジントは立派に成長しましたね…。ラフィールはこの10年間で階級が3つ(実質的には6つ)上がりましたが、ジントも3つ上がってるんですよね。ソバーシュやエクリュアは2つですから、彼がラフィールに付いていくために相当な努力を払ったことがよく分かります。出世してもやっているのは領主副代行だった時と大差ないというのは笑い処ですけど。
それからこれまで登場したキャラが多数続投しているのもうれしいところ。笑顔が素敵なエクエクはもちろん、立派に成長したドゥヒール、相変わらずフルネームが明かされないグノムボシュ、ドゥビュースといいコンビになりつつあるコトポニー女史、ドゥサーニュに今でもついて行っているケネーシュさんなど。そして忘れてはならないペネージュさん。ペネージュさんが第五艦隊の司令長官になったのは、この先起こる敵の大反抗でひどい目に遭う伏線だと思っていますので(笑)これからの彼女に期待です。
というわけで、本当に本当にすばらしい作品でした。後書きだと星間戦争の終結まで描いてくださるそうですので、続巻も楽しみに待とうと思います。
早速サイトの更新にも入らせて頂きました。小説を一行一行読みながらちまちま文字を打っていくこの幸せよ。いつもこの時がこのサイトをしていて一番良かったと感じる瞬間です。しかし後書きには辞典編集者泣かせの一言が…
お気づきでしょうが、この星界シリーズでは年月日が曖昧です。
※297ページより引用
とりあえずいつものように、今巻に記載されている内容は帝国暦969年(ラクファカール失陥から10年後)に起きたことにして辞典を編集していますが、そのうちどこかで修正が入るかもしれませんね…。暦年に修正が入ると、年表はもちろん、個人の経歴表まで全部修正が必要になるので結構大変なのです。
あと、読んでいるうちにいくつか気になったことも出てきています。「戦旗VI更新分」の末尾の備考欄に書き殴っているので(随時追加予定)、もし気づいたことがあればぜひご教授ください。そしてこの小説を読んだ方、是非一緒に語りましょう。
いや戦旗6、素晴らしかったです。
>今までこのサイト続けてきて本当によかった
星界最後のファンサイトとしての意地を見せてもらいました。
>今回もAmazonの罠にはまって読むのが遅れました
私なんて3日遅れでしたよ…。おのれ密林…。
>5の表紙に比べて耳が大きくなったような…気のせいですよね
成熟して大きくなったのでは?殿下、自分の小さい耳好きではなかったので、喜んであげましょうよ。
>みんな転げ回ったよね?
というより安心しました。どうやらジンラフィはジンラフィらしいと。
>ラフィールとジントがどういう関係になっているかだけが不安でした
全くの杞憂でしたね。それどころか…。
>もう完全に熟年夫婦の域じゃないですかー
これには驚きました。いつの間にか、乳臭い思春期の恋愛ではなく、長年連れ添って(実時間で22年、作品内時間でも17年一緒にいますからね…)、成熟した夫婦の愛になってた。「日本人の愛」との印象もあり、アーヴは日本人の間接的子孫なのでそれが正解。
>間が端折られたからと言って、全く不自然さを感じず、自然に二人の関係を受け入れることが出来ました
所謂”ラブラブ”描写はほとんどないのに、二人のあまりにも深い愛が描かれるの、驚嘆するしかありません。森岡先生の筆力スゲーとは前から思ってましたが、ここまで圧倒されたのは、初めてです。
>さらっと書いていますが、ラフィールがジントのことを愛しく思っていることがはっきり言語化されたのは初めてなのではないでしょうか
私もこの表現には、ハッとした。大体このシリーズ、殿下とジントはHシーンどころか、キスや愛の告白すら一切描かれてないはずです(”描かれてない”だけで、やっているのは明白ですがw)。それが「殿下がジントを愛している」と明言されたのはホント、ハートにズンと来ましたよねー。
>「厭わしい」とされているのは
これも愛あるからでしょ。彼女はジントを理解しきれてないの、必ずしも悪いこととは思ってない。それに今巻の殿下、結構ジントに意地悪ですよねw。そこも愛ゆえなのだと。
>死が二人を別つまで一緒にいる気満々じゃないですかー((o(´∀`)o))
全く恐れ入りました。殿下とジントの愛は、我々の想像を超えていた。
>統帥官はまだ先のような気がします
ていうか彼女はまだまだ軍人で、政治家ではないと思う。
>彼がラフィールに付いていくために相当な努力を払ったことがよく分かります
言われてみればそうですね。エクリュアやソバーシュが相当偉くなってるので、あんまり昇進してない印象ありましたが、認識改めます(しかし彼に”提督”や”元帥”の称号、実に似合わないw)。
>出世してもやっているのは領主副代行だった時と大差ないというのは笑い処ですけど
私の想像かなり入るんですが、彼は殿下に対し、”嫁”や”オカン”みたいに甲斐甲斐しく世話をしてるとしか思えないんですよwww。下手するとお風呂やトイレの世話までしてるだろうとwwwww。殿下、ジントがいなくなったら絶対に持ちませんよ。精神的にも生活的にもw。
>登場したキャラが多数続投しているのもうれしいところ
ですね。殿下とジント始め、皆さん変わっててほしいところは変わってて、ほしくないとこ全く変わってないのは、先生期待に応えてくれました。
>後書きだと星間戦争の終結まで描いてくださるそうですので
あれ?先生、「戦争は思ったほど長引かせない」と言っただけで、作品でそこまで書くとは明言してませんよ?
>後書きには辞典編集者泣かせの一言が…
私も唖然としましたが、yukkun20さんの衝撃度は半端なかったとお察しします。
気合い込めてコメント書きました。こちらも絶対ブログのネタにするのですが、あんまり期待せずにお待ち下さいw。
2018.09.10 06:51 | by Ivan
> 星界最後のファンサイトとしての意地を見せてもらいました。
ありがとうございます。まだまだ頑張りますよー。
> 成熟して大きくなったのでは?
そういう可能性もありますかね。今回はラフィールの外見に関するコメントが少なかったからなぁ。
> キスや愛の告白すら一切描かれてないはずです
子守唄というのがそういう関係を暗示しているのではないかと邪推。
> それに今巻の殿下、結構ジントに意地悪ですよねw。そこも愛ゆえなのだと。
そうですよねwそこも二人の信頼関係のなせるわざなので見ていてうれしいのですが。
> 彼女はまだまだ軍人で、政治家ではないと思う。
冷静に考えると、帝都は荒廃していますし、守りにくい地形でもあるので、時期尚早な感じはします。ただ第二方面との連絡回復で戦力が集中出来るということと、士気高揚にはうってつけということもあるのでラフィールの気持ちも分かるんですよね。
2018.09.11 00:50 | by yukkun20
速報 馬場英雄氏のスタジオイストリアの
PVが公開されてました
正直 映像を見て驚きました まだ設立したばかりということで
ロストスフィアのようなシンプルなものを想像をしてましたが本格的に
作ってるようです
やはり馬場さんはワクワクさせるのうまいなぁ
テイルズに戻って!
2018.09.10 21:58 | by sasa
PV見ました。個人的にはちょっとリアル造形に寄りすぎているのですが、それでも楽しみですね。まだまだ先は長そうですけど、完成を楽しみに待とうと思います。
2018.09.11 00:51 | by yukkun20
>子守唄というのがそういう関係を暗示しているのではないかと邪推
めちゃくちゃ適切な指摘ーーーッッッ!!!wwwその説採用!(私は所詮下衆ですw)
2018.09.11 00:56 | by Ivan
皆さんのコメントが濃すぎてなかなか書き込めません。自分なりの所感を書いておきます。
私としては、サムソンが一切登場しなかったのが気になりました。領民政府ですらあれなので、従士たちの人心掌握に躍起になっているであろうことは容易に想像できるのですが…。あと、ドゥビュースとコトポニーの掛け合いがもっと見てみたくなりました。
>しかし後書きには辞典編集者泣かせの一言が…
現時点では「○○年頃」という風にするのが妥当かもしれません。
”ジントの評価するような人間が、娘の昇進を喜んで笑うとは信じがたい”(P.136、ラフィール)
やはり、生粋のアーヴと地上人とでは感覚が違うのでしょうか…その点で、ロイはやはりジントたちに近い存在だと確信しました。
改めて、続きが待ち遠しくなりました。しかし、10年かかっても邂逅できないとは、銀河系のなんと広いことよ…。
2018.09.13 00:53 | by D.S
つーかサムソンって普通に敵の捕虜になってる線が濃厚なような。
> ドゥビュースとコトポニー
コトポニー裏切り者説を4の頃から唱えている自分としては、不穏な雰囲気になってきたことにちょっと期待していますw
> 10年かかっても邂逅できないとは、銀河系のなんと広いことよ…。
個人的には、時空泡発生機関製造列が1つしかないのに10年間艦隊を維持してきたドゥビュースさんすげーなというところですね。普通あの状況だと一か八かで脱出図りそうなもんですけど。次巻で再開できるといいですね。リアルタイムで10年ぶりの再開になりませんように。森岡先生がんばって!
2018.09.13 01:09 | by yukkun20
>皆さんのコメントが濃すぎてなかなか書き込めません
全面的に私のせいですね(~_~;)。なんかすみません。愛しか売りがないオトコですのでw。
2018.09.13 01:06 | by Ivan
サムソン、ドゥサーニュの即位式にいましたが。でも損な役回りのキャラなので、運悪かったかも。
2018.09.13 01:14 | by Ivan
え、まじっすか。読み落としてたわ…手元に本がないのでまた帰ってからチェックします…(汗
2018.09.14 07:33 | by yukkun20
ああ、上のコメントはyukkun20さんへのツッコみです。
>サムソンって普通に敵の捕虜になってる線が濃厚なような
誤解されそうなので予防線貼ります。失礼。
2018.09.13 01:21 | by Ivan
あたし近くのお店で前日購入することができました10年の間に子供作らないのかなと最初の感想でしたらもうジント34歳ですからねジント役の今井由香さんが引退されたのでドラマCD はもう無理なのが残念です
2018.09.13 18:49 | by しーちゃん (@saksakuratree)
しーちゃんさん初めまして。前日購入とはうらやましすぎる…
> 10年の間に子供作らないのかな
作ってないとは誰も言ってないので、案外次巻の最初あたりでしれっと登場したりしてw
> ジント役の今井由香さんが引退されたのでドラマCD はもう無理なのが残念です
大人になったので声も変わったとかでどうにかこうにか(その場合戦旗4,5をどうするか悩みどころですが)。個人的には緒方恵美さんあたりに引き継いでいただきたい!
2018.09.14 07:43 | by yukkun20
>え、まじっすか。読み落としてたわ…
私も長らく即位式にサムソンはいなかったと思ってた。でも「5巻でサムソンはどうなってたかな?」と読んでみたら、台詞がないだけでちゃんと名前を連ねてました。驚いた。
>作ってないとは誰も言ってないので
いや、難しいんじゃないかな。彼女たちそれぞれに子供がいたとして大きく見積もっても9歳。帝国は親自身が教育するのが普通なので、長期の育児休暇を取る必要ある。となると殿下たち軍務どころではなかった…どころか、今でも休んでなければならない。それはありえないのでは?
>個人的には緒方恵美さんあたりに引き継いでいただきたい!
実は「ジントはオガちゃんでもいいのでは?」とは昔から思ってた。今井さんがベストですが、緒方さんは後任者として最適任だと思います!
2018.09.14 09:51 | by Ivan