2015-10-11
【小説】少女は書架の海で眠る レビュー
旅行中に読みました。マグダラで眠れの最新巻もその内読みますよ。
少女は書架の海で眠る
書籍商を目指す本好きの少年フィルは、自身の所属するジーデル商会の命令で、仲間のジャドと異端審問官のアブレアと共にグランドン修道院を訪れていた。修道院の所蔵する貴重な蔵書を買いつけるという、書籍商としての初仕事に胸を膨らませるフィル。しかし、修道院の図書館で彼を待ち受けていたのは、本を憎む美しい少女クレアだった。クレアはフィルたちを追い返そうとするが、それは修道士たちが疫病のためクレアを残して全滅し、それが知られるとクレア自身も教会から放逐される恐れがあったからだった。
教会の権力闘争に興味のないアブレアは、フィルに蔵書目録を作るよう命じる。その作業をこなす中で、フィルはクレアとの関係を深めていく。教会の蔵書は、クレアの父が寄贈したものだった。本の収集に没頭した父に対し、複雑な感情を抱くクレアの気持ちをどうにか解きほぐしてあげたいと考えるフィルだったが、時間だけが過ぎていく。
そして、ついに教会本部から査察がやってくることになった。これ以上教会の秘密を隠し通すことはできない。フィルはクレアを連れて教会を脱出しようとするが、クレアは父の思い出が詰まった本たちと離れることが出来なかった。最後にフィルが思いつく、起死回生の一手とは―
感想
支倉先生の小説「マグダラで眠れ」のスピンオフ作品です。といっても「マグダラ」に名前だけ登場するアブレアが生きていた時代と言うくらいの繋がりしか無いので、「マグダラ」は読んでなくても全く問題ないです(「読んでいればより楽しめます」というレベルですらない)。
今回は主人公もヒロインも年齢が低いので、その分恋の駆け引きとか命を賭けて貫くべき信念といったテーマは少なめになっています。クレアも達観しているキャラではなく、年齢相応の無茶なことも言ったりするキャラですし、主人公も人生を捧げる目標を探している途中なので、他作品に比べると感情移入しやすいかもしれません(その分キャラとしての魅力は薄めですが)。ストーリーが短いので、ヒロインの魅力が十分出来る前に終わっちゃった感もなきにしもあらず。続編が出たら是非読んでみたいですね。
アブレアはなかなかの狂人として描かれてましたが、脇役としての枠から決して出ることなく存在感を放っているのはなかなか。後世に名を残すような人はこんな感じだろうなぁと思わせられる説得力がありましたね。彼の、そしてフィルの本に対する考え方には色々考えさせられるところがありました。僕もお金持ちになったらでっかい書庫を作りたいですねぇ。
蔵書に隠された秘密や最後のオチについてはギリギリ予想出来るくらいでしたが、ご都合主義にならない程度に綺麗にまとめられていてさすが支倉先生だなぁ…と感心しきりでした。
私もそういう時期がありましたよ。本を読み終わるのがもったいなくて、面白そうだと分かっている本は開くことすらできなかった。始まらなければ、終わることもない、と真剣に思っていたのですよ。ですが、ある日、本にはその先があると気づいたのです。
※161ページから引用
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