第23回 小さな漂流者

これまでのあらすじ

 時に西暦1889年。パリの万国博覧会で出会ったジャンとナディアとキングは、謎の宝石ブルーウォーターを狙う悪の3人組に襲われる。が、ジャンの発明した飛行機で辛くも脱出。数々の冒険の後、とある島に不時着した。しかし、そこは謎の組織ネオ・アトランティスの秘密基地だったのだ。その島でジャンたちは、幼い少女マリーと出会う。だが、ナディアたちは仮面の男ガーゴイルに捕まってしまい、殺人兵器バベルの塔の実験を見せられる。その威力は洋上の島を吹き飛ばすほどであった。だが、ジャンと三人組の活躍でナディアたちも無事救出され、秘密基地は万能潜水艦ノーチラス号の活躍により、あえなく崩壊したのである。
 ジャンたちはノーチラス号に乗り込むことになった。そんな中でグランディスはネモに一目惚れし、ネモはナディアと運命の再会を果たす。彼もまた、ブルーウォーターの継承者だったのだ。ノーチラス号の艦内での新たな生活が始まる。慣れない潜水艦での生活に戸惑いながらもたくましく生きていくジャンたち。そして、ネオ・アトランティスの攻撃や、数々の人との出会い、大自然の脅威などの想像を絶する苦しみの航海を経て、ついにガーゴイルの空中戦艦と対峙するノーチラス号。だが、敵の圧倒的な火力の前になすすべもなく撃沈されてしまった。
 深海深く沈没していくノーチラス号の中で、ナディアはネモが自分の故郷を滅ぼした張本人であることを知りショックを受ける。ネモはガーゴイルとネオ・アトランティスを葬らなければならない重い十字架を背負っていたのだ。そしてナディアは知るのだった。ネモが自分の父であることを…。だが、その時すでにナディアたちの乗ったカプセルは切り離され、ネモたちの残ったメインブロックは深海の暗闇の中へ消えていったのである。生きろ、とナディアに言葉を残して―――

(長っ!)

ストーリー

 ノーチラス号から切り離された船長室の中は、重苦しい雰囲気につつまれていた。ナディアの心の中に、ノーチラス号での日々の思い出が浮かんでは消える。父との別れの悲しみに暮れるナディア。ジャンはなんとか元気付けようとするが、逆にナディアとケンカになってしまう。
 ところが、突然室内に浸水が始まる。なんとか穴をふさぎ、よけいな振動を与えないように静かに息を潜める3人。ところが、ジャンのくしゃみのせいで再び浸水が始まってしまう。今度はもう水の勢いを止めることはできなかった。船長室の水かさが増えていく中、ジャンは傘を使った脱出のアイデアを思いつく。こうもりがさに空気をためて、そこに顔を入れたまま海上まで浮かんでいこうというのだ。不安を感じながらも、意を決してハッチを開く。猛烈な勢いで流れ込む海水。悲鳴を上げるナディアたち。ところが、船長室はすでにどこかの砂浜に打ち上げられていたのだった。
 助かったことで気が抜け、砂浜に倒れこむジャンとナディア。そんな中、マリーとキングは元気に遊びまわる。やがてマリーは缶詰を拾って帰ってきた。そこに印刷されていたのはネオ・アトランティスのマーク。あわてて缶詰を拾ったという現場に向かうと、そこにはガーフィッシュの残骸らしきものが転がっていた。ずいぶん前に座礁したらしい。乗組員が見当たらないことから、どこかの町にでも行ったのだろうと推測して、ジャンたちは砂浜沿いに歩き出した―――はずだったが、いつの間にか歩いていたのは元の砂浜だった。ここは島、それも無人島なのだ。
 結局、日は沈んでしまった。船長室にあった缶詰でとりあえずの夕食が始まる。缶切りはなかったが、キングの牙でなんとか開けることに成功。肉は食べないナディアだったが、肉の味付けがされたジャガイモの缶詰は喜んで食べている。ジャンとマリーはナディアが肉を食べないのは単なる好き嫌いじゃないかと笑い、久しぶりに一同は明るい空気につつまれたのだった。
 その晩、ジャンは砂浜で星の位置から島の位置を割り出そうとしていた。それを聞いたナディアは、足で砂浜に書かれた図を消してしまう。「ここには悪い人もいやな人もいない…私、マリーやキングと一緒だったらこの島で一生過ごしてもいいわ」と言い切るナディア。ジャンはその中に自分の名前が入っていないことでショックを受けるのだった。

コメンタリー

  • 【サブタイトル】
    絵コンテ段階では「楽園の漂流者」。
  • 【ジャン『ハクシューン!!』】
    せめて口を押さえればこんなことには…
  • 【海水を飲み込むジャン】
    先週までのシリアス展開・科学的展開を一発で吹き飛ばすこのギャグ。さすが日髙のりこさん(ジャンの中の人)が、「ナディア」で一番印象に残ったシーンに挙げるだけのことはある。
  • 【ジャンのこうもり傘】
    なんでこうもり傘持ってるの?ノーチラスの備品だと思うけど船長室に置いてある必要はないし、ジャンたちも避難することを知らずにこの部屋に来たから持ち出す用意してるわけもないし…あぁ、ギャグ補正か。
  • 【ジャン『確かアフリカにはこの種類のヤシはないはずだよ…』 ナディア『くヤシいわね…』】
    島編を象徴するカオスなダジャレの1発目。
  • 【マリーの拾った缶詰】
    マークから察するにアトランティスの遺産ではなくネオ・アトランティスが作ったもの。
    缶に書いてあるSPINACHは「ほうれん草」の意味。
  • 【ジャン『きっとどこかの街に行っちゃったんだ』】
    結局街もなく、死体が出てくることもありませんでしたから、乗組員は海の底か…またはガー様に救助されたか。
  • 【ジャンとナディアが3人組に思いを馳せるシーン】
    絵コンテではこの後、漂流している3人組が登場。ディナー中に、海水がハンソンのグラタン(食べ物の方ね)にかかって「僕のグラタンが~」と叫ぶシーンもあったが削られた。
  • 【ナディア『やっぱりあの人達は悪人だったのね』】
    結構長い付き合いなのにこの信用度。
  • 【ジャン『そうだ!マリーとキングに…』】
    マリーとキングに…なんて言うつもりだったんでしょうか。「泳いで取ってきてもらおう」?「缶詰を探してきてもらおう」?ひどいっ!
  • 【食卓】
    鉄板を石の上に置いて、その上にシーツをかけてある。なかなか文明人だな。
  • 【ジャガイモを切って揚げて乾燥させた食べ物】
    サッポロポテトバーベQ味。ベジタリアンである庵野総監督の主食がこれ。
  • 【ジャン『それってただの好き嫌いじゃないか』】
    ナディアが肉を食べないのは、味が嫌いだからではなく精神的な問題が原因なので、ただの好き嫌いではない。そういう意味ではナディアの方が正しい。…今の時点では。

元ネタ

  • ジャン『どうだい、グーなアイディアだろ?』
    ポーズも含め、桂三枝のギャグから。
  • ジャン『僕もクリエイティブな発明がしたいなぁ…』
    普段から鬱屈させられるようなルーティン・ワークばかりさせられているガイナックススタッフの『僕もクリエイチヴな仕事をしたい!』という口癖から生まれたとのこと。

次回予告

ナディア
 ジャン、マリー、キング。あたしね、一晩考えて生まれ変わったの。
ジャン
 ナディア?
ナディア
 もうくよくよしない、怒ったりしない、もう今までのナディアじゃない!そうよ、南の島のナディアに生まれ変わったのよ!」
ジャン
 …どうなっちゃったんだろう?
ジャンナディア
 ふしぎの海のナディア第24回『リンカーン島』見てね~

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