非日常パート

黄泉比良坂で遭遇する通常のケガイの台詞をまとめたものです。これらのケガイは、依代になったキャラと生前関わりのあった人物も多く、背景事情をより深く知ることができます。

  • 黄泉比良坂の各マップには、0~3体の通常のケガイ(いわゆるザコ敵)が登場します。そのうち特定のケガイ6体は話しかけると、1体につき10種類の台詞をランダムでしゃべります。他の通常のケガイは話しかけると戦闘になり、勝利するとマップから消滅します
  • 以下のマップには、特定の特別なケガイ(いわゆるボス)が発生するまで進入できませんが、そこには通常のケガイはいないと思われます
    • ご神木(特別なケガイ:ククノチ)
    • 夜祭り(特別なケガイ:イザナミ)
    • 海岸(特別なケガイ:ワダツミ)
    • 教室(特別なケガイ:カグツチ)

ミッチ

神社
はぁ……。
この姿になっても嫌なことばかり。
可哀想な私の孫、三智子……。
息子が馬鹿でごめんね……。
せっかく努力して
いい大学卒業して官僚になれたのに、
あの子ったら……。
息子は自業自得かもしれないけれど、
三智子には何の罪もないじゃないの……。
恨み殺してやろうかと思ったけど、
息子を陥れた人も、
三智子にひどいことをした人も、もういない。
ああ、もう……。
怒りが収まらないわ……。
もっと三智子のことを見ておくべきだった。
お節介だと嫌な顔をされたとしても……。
おばあちゃんが守ってあげられなくてごめんね……。
商店街
三智子……。
父さんが不甲斐ないばかりに……。
金さえあれば、最終的には家族も幸せだろうって。
それで汚職に手を出した果てがこのザマだ……。
妻にも娘にも申し訳ない。
もっと家族と触れ合っておくんだった。
俺は、何も見えてなかったんだ。
バカなことはやめて、
もっとまじめに生きるべきだった……。
汚職も、自分で命を絶ってしまったのも、
自分の弱さが原因だ。
すまない……。
遺された家族が
あんなことになるとわかっていれば……。
俺を陥れたアイツは許さない……。
絶対に許さない……。
ううう……。
踏切
もう少しで上手くいくはずだったのに。
ちくしょう……。
飛梅なんて巻き込むんじゃなかった。
あんなやつを巻き込んだから失敗したんだ……。
飛梅がもっと上手くやっていれば、
汚職がバレずに
済んだかもしれないのに……。
汚職に手を出さなけりゃ……、
死ぬことはなかったのかな……。
俺も飛梅も、危ない橋を渡っている自覚はあった。
だからその末路がどうであれ自己責任だ……。
飛梅のとこの娘、
かなり不幸になってるな……。
家族が大事なら、俺の話に乗るんじゃないよ。
飛梅はそんなことすらわかってなかった……。
俺じゃない……。
俺のせいじゃない……。
くそう……、くそう……。
金……。金、金、金……。
通学路
あの子……、三智子さん。
美人さんだから、
少しだけ羨ましいわ……。
ううん。
かなり羨ましい……。
三智子さんは可哀想。
本当に可哀想。
あの飛梅さんの娘だからって、
誰も三智子ちゃんを助けなかった。
そんなの、間違ってるのにね……。
三智子さんを救ってあげたかったけど、
変に助けたら私がセクハラの被害に遭うかもしれな
かった。
私は見て見ぬ振りをした……。
だって、みんながそうしたから。
私だけが声を上げるなんて、できなかった……。
大人の対処として
間違ってたと思うわ。
セクハラ男とちゃんと戦えなかったこと……。
後悔してる……。
私だけじゃない……。
私だけじゃないでしょう……?
ぐううう……。
校舎1階
出世したかったから
飛梅さんの仕事の邪魔したけど、
まさかこんなことになるとは。
飛梅さん、悔しかっただろうな。
あの人、かなり優秀だったから……。
でも飛梅さんも汚職に手を出したのは悪かったよね。
だから付け込まれたんだ。
……いろんな人にね。
……僕は悪くない。
悪いことをしていたのは飛梅さんのほうだろう?
僕は飛梅さんの娘さんのことは
知らないけど、
可哀想な目に遭ってるみたいだね。
娘さんのこと、
すごく可愛がってたのに。
……なんちゃって。
娘さんも結構優秀みたいだし?
その子の人生潰せていい気味、とは思うなぁ。
はぁ……。
空き教室
金が私を狂わせた……。
欲望を抑えるたがを外してしまったんだ……。
金があれば何でも買える。
買えるからこそ……、
何でも手に入れようとしてしまう。
だからといって
その目を知り合いの娘に
向けるべきでははなかった……。
三智子ちゃんを救いたいだけなら、
対価を求めるべきではないんだ。
だが私は……。
可愛い子には目がなかったんだ……。
あの子……、
三智子ちゃんを手に入れたかった……。
たとえ許されないことでもな……。
これは慈善事業なんだ。
そう自分に言い聞かせていたが、
そんなわけがあるものか……。
三智子ちゃんには、
申し訳ないことをしたなぁ……。
あああああ……。

ナナチ

神社
すまんなあ……。
じいちゃん、話を聞いてあげられなくて……。
那那智が学校でいじめられてたなんて、
じいちゃん、なーんにも気付かなかったんだ……。
那那智が学校でうまくやってるって言うのを、
じいちゃん、疑いもしなかったんだ……。
息子も嫁も不甲斐ない……。
那那智は責任感が強い子だからなあ……。
だから何でも自分の内に抱え込んでしまう。
無理して、自分の内に抱え込んで、
そんなのは苦しいだけだろう……。
無理をする必要なんてないんだ……。
お前には、
もっとのびのびとしていて欲しいのに……。
ううう……。
あああああ……。
通路
日頃ノ無力感! ソレガアノ人間ヲ苦シメタ!
力モナイ! 運動モデキナイ!
知識モ役ニタタナイ!
ソンナ現実ガドウシヨウモナイ!
顔ナジミガ日々戦ッテイルノニ、
自分ハナニモデキナイ!
ソウ思イツメテシマッタンダ!
知リ合イノコトヲ誇ラシク思ウホドニ
自分ノコトガミジメニナッテイク!
力サエアレバ、ナニカガデキル!
人間ラシイ思イ込ミダ!
力ヲ貸ソウ! アノ哀レナ人間ニ!
我ラ風ノ精霊ノ力ヲ!
オマエタチノタメニヤッテイルコトヲ、
余計ナオセッカイダトツキハナスノカ?
力ヲ持ツモノハ、
持タナイモノノコトヲ理解デキナイ!
アハハハハ!
ハハハ、ハハハハハ!
大山の家
ナナチくんかあ……。
いつもひとりで遊んでいたよね……。
内向的なのはわかるけどね、
いつまでも他人と距離をとって
生きていけるわけもないだろうに。
いつもいつも通販で何か頼んでいるよね……。
地元の店に貢献しようという気はないのかな……?
このご時世、周囲と助け合うことができなければ
先行き不安だろうに……。
家の手伝いをよくしていたり、
妹の世話をしていたり、
いい子ではあるんだろうけれどねえ……。
須久さんちでは何も言わないんだろうが、
あんな風に子どもを育てるのは考えものだよ。
周りと仲良くできないのはかわいそうだけど、
近所に住んでるからって、
口出しすることじゃないし……。
須久さんちのことを心配しても虚しいだけ……。
我が家はみんなこうして死んでいるんだし……。
ああ……やだやだ……。
虚しい……虚しいなあ……。
商店街
那那智ちゃん、大丈夫なのかしら……。
兄さん夫婦が放任主義なせいで、
那那智ちゃん、肝心なことも相談できずに
いるんじゃないかしら……?
親がとやかく言わないほうが
子は育つって言うけれど、
それにしたって限度があるでしょう……。
ひとりでいても苦にならないのはいいけれど、
頼れる相手がいないってことなら困りものよ……。
兄さん夫婦は、那那智ちゃんになにかあってから
ようやく事態に気付きそうだから困るのよね……。
兄さんは昔っからいい加減な人だから……。
出生届のときだってそう……。
死んでからも甥っ子の心配をする羽目になるなんて。
これもちゃんとしてない兄さんが悪いのよ……。
はぁ……。
まったく……。
こんなになってまでどうして……。
校舎1階
すまないことをした……。
須久くんの置かれた状況に、
私は何もすることができなかった……。
……起こっていることに気付かなかったというのは
嘘だ。薄々わかっていて、
私は見て見ぬ振りをしていたんだ……。
いじめが起きていただなんて
大々的に問題になったら私はどうなる?
指導力を問われるのは間違いない……。
子ども同士ではよくあること。
自分にそう言い聞かせて、私は何もしなかった……。
教師だって人間なんだ……。
私にだって手に余る問題があるんだ……。
毎日の仕事に疲れ果てて、
それに加えていじめ問題への取り組み……。
私の限界を超えていたんだ……。
無理だ……無理だったんだ……。
私が死ぬ羽目になったのは罰だとでも言うのか?
教師が取るべき対応をしなかった罰だと……?
ぐううう……。
空き教室
僕らは、いったい何をやっていたんだろう……。
……ナナチが悪いんだ。
なんでも物知りぶって、偉そうで……。
ナナチは僕らに合わせようとしないから……。
だから僕らもナナチのこと、感じが悪いなって……。
ナナチは運動苦手だから、
体育の時間にからかったり、
ボールの的にしたり……。
ナナチをからかって、馬鹿にして、
そんなことを繰り返すのが僕らの間では
普通のことになってたんだ……。
僕らのやっていることを、先生だって止めなかった。
僕らは仲良く遊んでるだけです、って
口裏を合わせたのを信じ込んでいた。
……コレクションを壊しちゃったのは、
やりすぎだったとは思う。
生きていた頃は、
なんとも思わなかったのに、死んでようやく
ひどいことをしていたってわかったんだ……。
ごめん……ごめんよ……。
うううう……。

マックス

神社
アノ者ノ目ハ失ッタ過去ダケヲ映シテイル……。
生ハアノ者ヲ苦シメルダケ……。
陸ニ居場所ガ無イノデアレバ……。
安ラギハ海ノ底ニコソアル……。
生ノ苦シミヲ忘レ、波ノ音ダケヲ……。
過去ハ全テ波ノ底ニ……。
生者ヨ……波ノ底ヘト……。
アア……ア……。
ウウウウゥゥゥ……。
オオオオォォォ……。
通路
マックス、お前は何をやっているんだ……。
昔、機械いじりの腕を褒めたこともあった。
だがその使い道が兵器開発とは……。
技術は過去への逃避のためにあるんじゃない……。
現在を、未来を作り出すものだと教えたはずだ……。
今のお前の腕があれば、
もっと違うものでも作れるだろうに……。
お前は娘と呼べるだけのものを作り出した。
だからこそ、それに正しく向き合うべきなんだ……。
……息子よ。今のお前が幸せだとは思えんよ……。
死んだ私たちが何を言おうが
息子の耳には届かない……。
違う……違う、違う……。
違う……。そうではない……。
誰か問いただしてくれ……。
商店街
あの外人さん……。
ずっと不気味に思っていたのよね……。
日本人の私が死んでるっていうのに
どうして外人さんが生き残ってるわけ?
ひとりだけ生き残るなんて、
どうせあくどい手段でも使っていたんでしょう?
いつも陰気な顔をして、
何を考えているかわかったものじゃない……。
どうしてあんな怪しい外人さんに
先生なんてさせるのかしら……。
子どもたちが心配よねぇ……。
近所付き合いもする気がないみたいだし、
きっと日本人のことを馬鹿にしているんでしょう?
郷に入っては郷に従え、って言葉、
外国にはないのかしら……。
ああ、嫌だ嫌だ……。
よそ者はよそ者よ……。
信用なんてできるわけがない……。
通学路
私のことを覚えていてくれる優しい兄さん……。
でも、そのせいで兄さんは一歩も前に進めない……。
兄さんは、いつまでもあの日のまま……。
私の模倣を強いられるあの子……。
あの子は、私じゃないのよ、兄さん……。
私の身代わりを作ったところで、
それは私ではないのよ、兄さん……。
私は私、あの子はあの子……。
私たちはもう、
20年も前に死んで、終わってしまったの。
でも、兄さんは違うのよ……。
もういっそ、私のことなんて忘れてしまったほうが
きっと兄さんは幸せになれるのよ……。
もう……もういいの……。
誰か……兄さんを止めて……。
もういいんだって、教えてあげて……。
止めて……誰か、止めてあげて……。
校舎1階
マックス……私の可愛いマックス……。
誰か、あの子を助けてあげて……。
前を向かせてあげて……。
ああ……そんなの……。
私たちのことなんて、もう過去のことなのよ……。
あなたはせっかく生き延びたのだから……。
あなたはあなたの幸せを探しなさい……。
こんなのは望んでいないの……。
復讐なんて、もういいのよ……。
子の重荷になりたい親なんているものですか……。
あなたは早く、私たちのことを忘れるべきなの……。
校舎2階
生に幸せを感じられないだなんて、
そんなの贅沢すぎる悩みじゃないか……。
生きているくせに……。
生き残ったくせに……。
どうして私じゃない……。
どうしてお前が生き残った……。
どうしてお前だけ……。
私とお前の何が違うというんだ……。
ここは暗い……寒い……何も見えない……。
私も生きて、日本の地を踏みたかった……。
その立場にいるのがどうして私じゃないんだ……。
代わってくれ……。
お前が死に、私が生きていれば……。
羨ましい……恨めしい……。
ああああああ……。

クニ

商店街1
江南先生ねぇ……。
根は悪い人じゃないんでしょうけどねぇ……。
子どもに勉強させるなら、
ああいう先生も必要なんでしょうけどねぇ。
先生だけがやる気を出しても、
子どもたちはついてこないわよねぇ……。
子どもたちだって、
内心では進学のことなんて
選択肢から外してるだろうし……。
あれだけ毎日気を張ってるようじゃ、
反動がいつか来るんじゃないかと思ってたけど。
ケガイ騒ぎなんて、遠くのことでしょ……。
この町は平和だから、
子どもはよそになんて行く必要はない。
そう思っていたのだけれど……。
子どもが進学で遠くに行っちゃうほうが
心配になるでしょう……?
どうしてなの……?
おかしい……おかしい……。
商店街2
親戚の邦江ちゃん、今は地方にいるんだっけ……。
向こうは安全なのかな……。
邦江ちゃん、あれだけ勉強してたのに
地方にしか働き口無いのか、とか思ってたけど、
こうなるとなぁ……。
こんな時代だ。高望みせずとも子どもが
地道に生きていければ、と思うのはわかる……。
子どもが遠くに行ってしまうよりは、
近くにいてくれる方が安心できるご時世だしな……。
子どもに高望みしすぎて子どもが病む、
というのはありがちだけど、
期待しなさすぎるのもなぁ……。
うちの子がそんなできるわけない、
とか言われると子どもは傷つくよなぁ……。
親の心子知らず、子の心親知らず。
まさにその通りだな……。
ああああああ……。
嫌だ……死ぬのは嫌だ……。
ケガイに殺されるなんて嫌だ……。
踏切
……高校までと、大学から先ではね、
学ぶという概念が違うのだよ。
入試のための受験勉強ではただひたすら
暗記で良かったのだろうが、
入学後もそのつもりでいては困る……。
丸暗記を否定するわけではないがね、
暗記したものを引き出す思考能力がないと
宝の持ち腐れ甚だしいとは思わんかね……。
要領の良い学生は学びにそこまで熱意が無くとも
卒業までこぎつけてしまうものだが、
さりとてそういう悪知恵もないとなると……。
学ぶことが好きだとそれまで勘違いしてきた、
情報を詰め込むことだけが得意な学生は……。
私のゼミにも、毎年のように
詰め込み暗記から脱却できない
学生が来て頭を抱えたものだよ……。
高校まで勉学に打ち込んできたであろう
学生が大学で打ちひしがれるのを
見るのはね、気分がいいものではない……。
死んでもその先があると思っていたが……。
何もない。無だ……。
はぁぁぁ……。
高等学校
江南……?
昔の同級生にそんなのがいたような、
いなかったような……。
昔、クラスにすげーガリ勉女がいてさ。
ずっとひとりで勉強ばっかりしてたんだ……。
いっつも勉強ばっかりしてる女、
傍目から見てこえーのなんのって……。
ちょっと話しかけただけで
勉強の邪魔だー、とか、
噛みつかんばかりでさあ……。
勉強して周囲を見返すつもりだったんだろうが、
俺たちみんな引いちゃってさ、
距離とってたんだよな……。
勉強ばかりの学生生活だなんて、
何が楽しかったのかねえ……。
こんな時代で勉強なんてしたって
無駄だろ無駄。卒業して、大人になっても
俺みたいにあっさり死ぬんだ…。
俺が何したっていうんだ……。
死にたくない、死にたくない……。
ううううう……。
校舎1階
……高校の時に、
すっごく要領悪いクラスメイトがいたのよね。
そりゃテストの点は良かったみたいだけど、
そのための勉強時間が、
ちょっと引くくらいたくさんかけてた子でね……。
休み時間もずっと勉強しててさぁ、
そんなんじゃ声もかけづらいじゃない?
向こうだって勉強に集中したいに決まってるし。
テストの点を良くするコツを
聞いたことあるんだけど、丸暗記、だってさ……。
真似したくないなあ、って思って、それっきり。
……学生時代の勉強なんてさ、
そりゃしたほうがいいんだろうけど、
全てをそれに捧げるようなものではなくない?
どんなに勉強したって、
私みたいに死んじゃったら終わりなのよ……。
高校、大学、就職と要領よくやってきたのに、
ケガイに殺されるなんてやってらんない……。
終わり、もう終わり。なにもかも終わり。
私だけ死ぬの、不公平じゃない……?
あーあ……。
校舎2階
……昔、というほど前でもないが……。
教え子に、いつも勉強ばかりしている子がいた。
進路指導のとき、親御さんとの
勉強に対する温度差がひどく印象に残った……。
子どもがどんなに頑張ったとしても、
親がそのことを評価していない
家庭ってのは厄介でね……。
親が勉強に価値を認めていない家庭だと、
子どもが上のレベルの学校を目指すのが
難しくなるものなんだ……。
周囲の環境に負けずに励む
学生のことは応援したくなるが、
あの子は今、どうしているのだろう……?
向上心があるというのは良いことだが、
他の生徒と全く交流できていなかったのは
気がかりではあったな……。
……東京すら壊滅する今の時代は、
生徒に勉強して上を目指せとは
言いづらくなってしまった……。
ここは……どこなんだ……。
なにも見えない……わからない……。
ううう……ううう……。

タカコ

神社1
若国さんち、女がひとりもいないから
タカコちゃんの扱いに困ってるんじゃねえの?
男ふたりでくっつくとか、
それが今の時代ってことなのかねぇ……。
近所付き合いもあるから面と向かっては
言わねぇけど、ああいう家庭はうちの町だと
てきめんに浮くんだよなぁ……。
若国さんちを妙な目で見てる罪滅ぼしに、
タカコちゃんを近所みんなでかわいがってたって
言われてもまあ、否定はしない……。
タカコちゃん、いい子だし、
礼儀もちゃんとしてるけど、
友達といるところを見ないんだよな……。
ひとりでいるのを見て、
友だちと待ち合わせかい、って聞いたら、
そうじゃないって言ってたんだよな……。
タカコちゃんが妙な奴に
ひっかからないか心配だったんだよな……。
まだ死んでられないってのに……。
クソッ、クソッ……。
うああああああああ……!
神社2
タカコちゃん……?
キライってほどじゃないけど、
あんまり話が合わないから、困る……。
タカコちゃんは背も高くて、
大人っぽいけど……。
わたしたちをこども扱いするのは、イヤ。
タカコちゃんの家はフクザツな家庭だから
あんまり付き合わないほうが
良いってママに言われてるんだ。
タカコちゃんの家にはママがいなくて、
パパがふたりいるんだって。
……よくわかんない。
タカコちゃんがいるとママの話とか
気を使うから、面倒になっちゃう……。
商店街だとタカコちゃんが色んな人から
かわいがられてて、ずるいと思う。
ここ……どこなの……。
帰りたいよ……。うちはどこなの……?
ママ……パパ……。
ううううう……。
通路
サビシイ……ヒトリハサビシイ……。
ムシシナイデ……ハナシヲキイテ……。
サビシイ……サビシイ……。
ナカマガホシイ……ナカマヲツクロウ……。
ジブンダケノモノニシヨウ……。
ソウスレバサビシクナクナル……。
ホカノダレカヲミナイデホシイ……。
ドコニモイカサナイ……。
ズットココニイレバイイ……。
ニガサナイ……ハナサナイ……。
アア……アアア……。
ヒヒヒ……ヒヒヒ……。
商店街
……マスターの娘さん、
発育も良くて、小学生には見えなかったなあ……。
最近の小学生は大人びてるのね……。
いや、私も酔ってた時しか
ちゃんと話したことないけど……。
あれだけ大人びてると、
同年代の子がこどもっぽすぎて
やってられないでしょうね……。
周りの大人にどうすれば可愛がられるか
わかってるって感じ、大人受けはいいけど
同年代から嫌われるからね……。
ああいう処世術、心配なのよね……。
要はあれ、人一倍寂しさに弱い裏返しでしょ……?
ああいう子はこの町じゃ生き辛いでしょうね。
疎開してきた私が言うんだから間違いないわ……。
葦原中つ町は平和なんじゃなかったの……?
なんで私、死んでるのよ……。
話が違うじゃない……。
嘘……嘘、嘘、嘘……。
通学路
あのデカ女、オレたちより背が高いんだよな。
なに食ったらああなるんだろ?
デカ女をデカ女って言ってなにが悪いんだよ!
ホントのことを言ってるだけじゃん!
だいたいあいつ、なんかムカつくんだよ!
オレたちをガキ扱いして! 同い年だろ!
オレたちが女子をからかうと、たいてい
他のヤツらが出てきてめんどくさくなるんだけど、
あいつの場合あんまり味方する女子いないんだよな。
オレたち男子はあいつのこと
いけすかないと思ってるし、女子は女子で
あいつのこと仲間はずれにしてるんだよな……。
いっそ泣いたりすればオレたちだってちょっとは
反省するけど、あいつ、オレたちのことを
バカにするんだぞ! おあいこだよ!
……えっ、オレ、死んでるの? うっそだあ!
あはははははっ!
こっちだよーだ!
いえーい!
校舎1階
タカコちゃんがクラスで孤立してる問題、
頭が痛かった……。もう悩む必要もないけど……。
タカコちゃんが私を頼りにしてくれれば
まだやりようがあったけれど……。
タカコちゃん、孤立してるって自覚したら
自分から他の子と距離を取っていったから……。
変に大人びてる子はやりにくいのよ……。
若国さんのご家庭、PTAでも他の父兄から
奇異の目で見られたりして、大変そうなのよね……。
この町はまだまだ
昔の価値観が生きているものね……。
今の時代、家庭の在り方は多様であると
教えなければならないけれど、どう教えるかは
教師に丸投げなのよね……。
どうしてこんなことに……。
嫌……死ぬなんて嫌……。
何も悪いことなんてしていないのに……。

コノハ

神社
殺せ……。あの娘を、木葉を殺すのだ……。
あれは人の世の敵。生きていてはならぬ……。
情けをかけて他所に流したばかりに……。
巫女として使えぬばかりかケガイに与するとは……。
失敗作め……。
生かしておくべきではなかった……。
無念だ……。
この無念こそがケガイの……。
ぐううううう……。
おおおおおおおお……!
大山の家
モウスグ! モウスグダ!
人ノ世ハ終ワル! 我ラノモトニ世ハ戻ル!
我ラヲ見放シタ者タチに報イヲ!
醜イト我ラヲサゲスンダ者タチニ報イヲ!
待チ遠シイ! 待チキレナイ!
我ラノ姫ヨ……! 我ラノ望ミヲ今コソ!
人ノ世ニハ姫ヲ苦シメルモノシカナイダロウ……?
人ノ世ノ終ワリ。ソレガズット
姫ガ待チ望ンデキタモノダッタハズダ……!
姫ヨ、ドウシテ今更ニナッテ苦シム……?
ウオオオオオオオ!
商店街
木葉ちゃん……。
いい子なのにねえ……。
愛想はいいけど、
作り笑顔っぽさがどこかあるのよね……。
突然髪を染めたときは
悪い遊びでも始めたのかと思ったわよ……。
親戚の子と同居してるって話だけど、
未成年だけが住んでる家って不安よね……。
近所付き合い以上の事は
口出しするのよくないと思ってたけど……。
どういう事情か分からないけれど、
あんな子を放り出しちゃう親ってねぇ……。
木葉ちゃんと一緒に住んでた輝さんも
最近は外出してばかりで、
何を考えてるのかしら……。
ひいいいいい……。
嫌……死ぬのは嫌……。
私じゃなくてもいいでしょ……。
踏切
大山さん……。
あんまり人と仲良くしてないよね……。
態度は柔らかいけど、
近寄りがたいっていうか……。
僕に限らず、みんな大山さんには
距離を取られてるって感じてたと思うよ……。
どこかで線を引いちゃってる感じ……。
なんだか、
いつも落ち込んでるようには見えたけど……。
学校を卒業したら町を出て行っちゃいそうだな、
って思ってたんだ……。
いやだ……嫌だああああ……。
きっとみんな死ぬんだ……。
だから僕も死んだんだ……。
なんで、なんでだよ……。
どうして僕が……。
通学路
大山さん……。
好きでも嫌いでもないけど、向こうはきっと、
私のこと嫌いでしょ……?
わかるよ、嫌われてるのは。
目がそう言ってたもの……。
きっと何もかも嫌いなんでしょ……?
普通に話しててもどんどん自分を卑下するし、
そんなのフォローし続けるのも疲れるし……。
表面上だけ仲良くしておくのが
お互いに楽だったんだからいいじゃない……?
相互不干渉、みたいな。
そんな感じだったんだよね……。
私だけじゃなく、
みんな同じこと思ってたはずだよ……。
死にたくない……死にたくない……。
まだまだやりたいことがあるのに……。
うう……うあああああ……。
校舎2階
大山さん、大丈夫だろうか……?
身近な親戚がああでは……。
大山さんの家は、まともではないように思えて……。
当人が大丈夫と言っている以上、
それ以上は首を突っ込めなかったが……。
無理を溜め込むタイプの子に見えるからね……。
事情を抱えた生徒なんて、
いくらでもいるのはわかっているが……。
いち教師として、心配でならない……。
油断した……油断したばかりに……。
少し足を伸ばしただけなのに……。
うう、ううううう……。

トラックバック URL

コメント & トラックバック

コメントはありません。

コメントフィード

コメント

皆さまのコメントが励みになっています。ありがとうございます。