非日常パート
黄泉比良坂で遭遇する通常のケガイの台詞をまとめたものです。これらのケガイは、依代になったキャラと生前関わりのあった人物も多く、背景事情をより深く知ることができます。
- 黄泉比良坂の各マップには、0~3体の通常のケガイ(いわゆるザコ敵)が登場します。そのうち特定のケガイ6体は話しかけると、1体につき10種類の台詞をランダムでしゃべります。他の通常のケガイは話しかけると戦闘になり、勝利するとマップから消滅します
- 以下のマップには、特定の特別なケガイ(いわゆるボス)が発生するまで進入できませんが、そこには通常のケガイはいないと思われます
- ご神木(特別なケガイ:ククノチ)
- 夜祭り(特別なケガイ:イザナミ)
- 海岸(特別なケガイ:ワダツミ)
- 教室(特別なケガイ:カグツチ)
ミッチ
神社 |
はぁ……。 この姿になっても嫌なことばかり。 |
可哀想な私の孫、三智子……。 |
息子が馬鹿でごめんね……。 |
せっかく努力して いい大学卒業して官僚になれたのに、 あの子ったら……。 |
息子は自業自得かもしれないけれど、 三智子には何の罪もないじゃないの……。 |
恨み殺してやろうかと思ったけど、 息子を陥れた人も、 三智子にひどいことをした人も、もういない。 |
ああ、もう……。 |
怒りが収まらないわ……。 |
もっと三智子のことを見ておくべきだった。 お節介だと嫌な顔をされたとしても……。 |
おばあちゃんが守ってあげられなくてごめんね……。 |
商店街 |
三智子……。 |
父さんが不甲斐ないばかりに……。 |
金さえあれば、最終的には家族も幸せだろうって。 それで汚職に手を出した果てがこのザマだ……。 |
妻にも娘にも申し訳ない。 |
もっと家族と触れ合っておくんだった。 俺は、何も見えてなかったんだ。 |
バカなことはやめて、 もっとまじめに生きるべきだった……。 |
汚職も、自分で命を絶ってしまったのも、 自分の弱さが原因だ。 すまない……。 |
遺された家族が あんなことになるとわかっていれば……。 |
俺を陥れたアイツは許さない……。 絶対に許さない……。 |
ううう……。 |
踏切 |
もう少しで上手くいくはずだったのに。 ちくしょう……。 |
飛梅なんて巻き込むんじゃなかった。 あんなやつを巻き込んだから失敗したんだ……。 |
飛梅がもっと上手くやっていれば、 汚職がバレずに 済んだかもしれないのに……。 |
汚職に手を出さなけりゃ……、 死ぬことはなかったのかな……。 |
俺も飛梅も、危ない橋を渡っている自覚はあった。 だからその末路がどうであれ自己責任だ……。 |
飛梅のとこの娘、 かなり不幸になってるな……。 |
家族が大事なら、俺の話に乗るんじゃないよ。 飛梅はそんなことすらわかってなかった……。 |
俺じゃない……。 俺のせいじゃない……。 |
くそう……、くそう……。 |
金……。金、金、金……。 |
通学路 |
あの子……、三智子さん。 美人さんだから、 少しだけ羨ましいわ……。 |
ううん。 かなり羨ましい……。 |
三智子さんは可哀想。 本当に可哀想。 |
あの飛梅さんの娘だからって、 誰も三智子ちゃんを助けなかった。 そんなの、間違ってるのにね……。 |
三智子さんを救ってあげたかったけど、 変に助けたら私がセクハラの被害に遭うかもしれな かった。 |
私は見て見ぬ振りをした……。 だって、みんながそうしたから。 私だけが声を上げるなんて、できなかった……。 |
大人の対処として 間違ってたと思うわ。 |
セクハラ男とちゃんと戦えなかったこと……。 後悔してる……。 |
私だけじゃない……。 私だけじゃないでしょう……? |
ぐううう……。 |
校舎1階 |
出世したかったから 飛梅さんの仕事の邪魔したけど、 まさかこんなことになるとは。 |
飛梅さん、悔しかっただろうな。 あの人、かなり優秀だったから……。 |
でも飛梅さんも汚職に手を出したのは悪かったよね。 だから付け込まれたんだ。 |
……いろんな人にね。 |
……僕は悪くない。 悪いことをしていたのは飛梅さんのほうだろう? |
僕は飛梅さんの娘さんのことは 知らないけど、 可哀想な目に遭ってるみたいだね。 |
娘さんのこと、 すごく可愛がってたのに。 |
……なんちゃって。 |
娘さんも結構優秀みたいだし? その子の人生潰せていい気味、とは思うなぁ。 |
はぁ……。 |
空き教室 |
金が私を狂わせた……。 欲望を抑えるたがを外してしまったんだ……。 |
金があれば何でも買える。 買えるからこそ……、 何でも手に入れようとしてしまう。 |
だからといって その目を知り合いの娘に 向けるべきでははなかった……。 |
三智子ちゃんを救いたいだけなら、 対価を求めるべきではないんだ。 だが私は……。 |
可愛い子には目がなかったんだ……。 |
あの子……、 三智子ちゃんを手に入れたかった……。 |
たとえ許されないことでもな……。 |
これは慈善事業なんだ。 そう自分に言い聞かせていたが、 そんなわけがあるものか……。 |
三智子ちゃんには、 申し訳ないことをしたなぁ……。 |
あああああ……。 |
ナナチ
神社 |
すまんなあ……。 じいちゃん、話を聞いてあげられなくて……。 |
那那智が学校でいじめられてたなんて、 じいちゃん、なーんにも気付かなかったんだ……。 |
那那智が学校でうまくやってるって言うのを、 じいちゃん、疑いもしなかったんだ……。 |
息子も嫁も不甲斐ない……。 |
那那智は責任感が強い子だからなあ……。 だから何でも自分の内に抱え込んでしまう。 |
無理して、自分の内に抱え込んで、 そんなのは苦しいだけだろう……。 |
無理をする必要なんてないんだ……。 |
お前には、 もっとのびのびとしていて欲しいのに……。 |
ううう……。 |
あああああ……。 |
通路 |
日頃ノ無力感! ソレガアノ人間ヲ苦シメタ! |
力モナイ! 運動モデキナイ! 知識モ役ニタタナイ! ソンナ現実ガドウシヨウモナイ! |
顔ナジミガ日々戦ッテイルノニ、 自分ハナニモデキナイ! ソウ思イツメテシマッタンダ! |
知リ合イノコトヲ誇ラシク思ウホドニ 自分ノコトガミジメニナッテイク! |
力サエアレバ、ナニカガデキル! 人間ラシイ思イ込ミダ! |
力ヲ貸ソウ! アノ哀レナ人間ニ! 我ラ風ノ精霊ノ力ヲ! |
オマエタチノタメニヤッテイルコトヲ、 余計ナオセッカイダトツキハナスノカ? |
力ヲ持ツモノハ、 持タナイモノノコトヲ理解デキナイ! |
アハハハハ! |
ハハハ、ハハハハハ! |
大山の家 |
ナナチくんかあ……。 いつもひとりで遊んでいたよね……。 |
内向的なのはわかるけどね、 いつまでも他人と距離をとって 生きていけるわけもないだろうに。 |
いつもいつも通販で何か頼んでいるよね……。 地元の店に貢献しようという気はないのかな……? |
このご時世、周囲と助け合うことができなければ 先行き不安だろうに……。 |
家の手伝いをよくしていたり、 妹の世話をしていたり、 いい子ではあるんだろうけれどねえ……。 |
須久さんちでは何も言わないんだろうが、 あんな風に子どもを育てるのは考えものだよ。 |
周りと仲良くできないのはかわいそうだけど、 近所に住んでるからって、 口出しすることじゃないし……。 |
須久さんちのことを心配しても虚しいだけ……。 我が家はみんなこうして死んでいるんだし……。 |
ああ……やだやだ……。 |
虚しい……虚しいなあ……。 |
商店街 |
那那智ちゃん、大丈夫なのかしら……。 |
兄さん夫婦が放任主義なせいで、 那那智ちゃん、肝心なことも相談できずに いるんじゃないかしら……? |
親がとやかく言わないほうが 子は育つって言うけれど、 それにしたって限度があるでしょう……。 |
ひとりでいても苦にならないのはいいけれど、 頼れる相手がいないってことなら困りものよ……。 |
兄さん夫婦は、那那智ちゃんになにかあってから ようやく事態に気付きそうだから困るのよね……。 |
兄さんは昔っからいい加減な人だから……。 出生届のときだってそう……。 |
死んでからも甥っ子の心配をする羽目になるなんて。 これもちゃんとしてない兄さんが悪いのよ……。 |
はぁ……。 |
まったく……。 |
こんなになってまでどうして……。 |
校舎1階 |
すまないことをした……。 |
須久くんの置かれた状況に、 私は何もすることができなかった……。 |
……起こっていることに気付かなかったというのは 嘘だ。薄々わかっていて、 私は見て見ぬ振りをしていたんだ……。 |
いじめが起きていただなんて 大々的に問題になったら私はどうなる? 指導力を問われるのは間違いない……。 |
子ども同士ではよくあること。 自分にそう言い聞かせて、私は何もしなかった……。 |
教師だって人間なんだ……。 私にだって手に余る問題があるんだ……。 |
毎日の仕事に疲れ果てて、 それに加えていじめ問題への取り組み……。 私の限界を超えていたんだ……。 |
無理だ……無理だったんだ……。 |
私が死ぬ羽目になったのは罰だとでも言うのか? 教師が取るべき対応をしなかった罰だと……? |
ぐううう……。 |
空き教室 |
僕らは、いったい何をやっていたんだろう……。 |
……ナナチが悪いんだ。 なんでも物知りぶって、偉そうで……。 |
ナナチは僕らに合わせようとしないから……。 だから僕らもナナチのこと、感じが悪いなって……。 |
ナナチは運動苦手だから、 体育の時間にからかったり、 ボールの的にしたり……。 |
ナナチをからかって、馬鹿にして、 そんなことを繰り返すのが僕らの間では 普通のことになってたんだ……。 |
僕らのやっていることを、先生だって止めなかった。 僕らは仲良く遊んでるだけです、って 口裏を合わせたのを信じ込んでいた。 |
……コレクションを壊しちゃったのは、 やりすぎだったとは思う。 |
生きていた頃は、 なんとも思わなかったのに、死んでようやく ひどいことをしていたってわかったんだ……。 |
ごめん……ごめんよ……。 |
うううう……。 |
マックス
神社 |
アノ者ノ目ハ失ッタ過去ダケヲ映シテイル……。 |
生ハアノ者ヲ苦シメルダケ……。 |
陸ニ居場所ガ無イノデアレバ……。 |
安ラギハ海ノ底ニコソアル……。 |
生ノ苦シミヲ忘レ、波ノ音ダケヲ……。 |
過去ハ全テ波ノ底ニ……。 |
生者ヨ……波ノ底ヘト……。 |
アア……ア……。 |
ウウウウゥゥゥ……。 |
オオオオォォォ……。 |
通路 |
マックス、お前は何をやっているんだ……。 |
昔、機械いじりの腕を褒めたこともあった。 だがその使い道が兵器開発とは……。 |
技術は過去への逃避のためにあるんじゃない……。 現在を、未来を作り出すものだと教えたはずだ……。 |
今のお前の腕があれば、 もっと違うものでも作れるだろうに……。 |
お前は娘と呼べるだけのものを作り出した。 だからこそ、それに正しく向き合うべきなんだ……。 |
……息子よ。今のお前が幸せだとは思えんよ……。 |
死んだ私たちが何を言おうが 息子の耳には届かない……。 |
違う……違う、違う……。 |
違う……。そうではない……。 |
誰か問いただしてくれ……。 |
商店街 |
あの外人さん……。 ずっと不気味に思っていたのよね……。 |
日本人の私が死んでるっていうのに どうして外人さんが生き残ってるわけ? |
ひとりだけ生き残るなんて、 どうせあくどい手段でも使っていたんでしょう? |
いつも陰気な顔をして、 何を考えているかわかったものじゃない……。 |
どうしてあんな怪しい外人さんに 先生なんてさせるのかしら……。 子どもたちが心配よねぇ……。 |
近所付き合いもする気がないみたいだし、 きっと日本人のことを馬鹿にしているんでしょう? |
郷に入っては郷に従え、って言葉、 外国にはないのかしら……。 |
ああ、嫌だ嫌だ……。 |
よそ者はよそ者よ……。 |
信用なんてできるわけがない……。 |
通学路 |
私のことを覚えていてくれる優しい兄さん……。 でも、そのせいで兄さんは一歩も前に進めない……。 |
兄さんは、いつまでもあの日のまま……。 |
私の模倣を強いられるあの子……。 あの子は、私じゃないのよ、兄さん……。 |
私の身代わりを作ったところで、 それは私ではないのよ、兄さん……。 |
私は私、あの子はあの子……。 |
私たちはもう、 20年も前に死んで、終わってしまったの。 でも、兄さんは違うのよ……。 |
もういっそ、私のことなんて忘れてしまったほうが きっと兄さんは幸せになれるのよ……。 |
もう……もういいの……。 |
誰か……兄さんを止めて……。 もういいんだって、教えてあげて……。 |
止めて……誰か、止めてあげて……。 |
校舎1階 |
マックス……私の可愛いマックス……。 |
誰か、あの子を助けてあげて……。 前を向かせてあげて……。 |
ああ……そんなの……。 |
私たちのことなんて、もう過去のことなのよ……。 |
あなたはせっかく生き延びたのだから……。 |
あなたはあなたの幸せを探しなさい……。 |
こんなのは望んでいないの……。 |
復讐なんて、もういいのよ……。 |
子の重荷になりたい親なんているものですか……。 |
あなたは早く、私たちのことを忘れるべきなの……。 |
校舎2階 |
生に幸せを感じられないだなんて、 そんなの贅沢すぎる悩みじゃないか……。 |
生きているくせに……。 生き残ったくせに……。 |
どうして私じゃない……。 どうしてお前が生き残った……。 |
どうしてお前だけ……。 私とお前の何が違うというんだ……。 |
ここは暗い……寒い……何も見えない……。 |
私も生きて、日本の地を踏みたかった……。 |
その立場にいるのがどうして私じゃないんだ……。 |
代わってくれ……。 お前が死に、私が生きていれば……。 |
羨ましい……恨めしい……。 |
ああああああ……。 |
クニ
商店街1 |
江南先生ねぇ……。 根は悪い人じゃないんでしょうけどねぇ……。 |
子どもに勉強させるなら、 ああいう先生も必要なんでしょうけどねぇ。 |
先生だけがやる気を出しても、 子どもたちはついてこないわよねぇ……。 |
子どもたちだって、 内心では進学のことなんて 選択肢から外してるだろうし……。 |
あれだけ毎日気を張ってるようじゃ、 反動がいつか来るんじゃないかと思ってたけど。 |
ケガイ騒ぎなんて、遠くのことでしょ……。 |
この町は平和だから、 子どもはよそになんて行く必要はない。 そう思っていたのだけれど……。 |
子どもが進学で遠くに行っちゃうほうが 心配になるでしょう……? |
どうしてなの……? |
おかしい……おかしい……。 |
商店街2 |
親戚の邦江ちゃん、今は地方にいるんだっけ……。 向こうは安全なのかな……。 |
邦江ちゃん、あれだけ勉強してたのに 地方にしか働き口無いのか、とか思ってたけど、 こうなるとなぁ……。 |
こんな時代だ。高望みせずとも子どもが 地道に生きていければ、と思うのはわかる……。 |
子どもが遠くに行ってしまうよりは、 近くにいてくれる方が安心できるご時世だしな……。 |
子どもに高望みしすぎて子どもが病む、 というのはありがちだけど、 期待しなさすぎるのもなぁ……。 |
うちの子がそんなできるわけない、 とか言われると子どもは傷つくよなぁ……。 |
親の心子知らず、子の心親知らず。 まさにその通りだな……。 |
ああああああ……。 |
嫌だ……死ぬのは嫌だ……。 |
ケガイに殺されるなんて嫌だ……。 |
踏切 |
……高校までと、大学から先ではね、 学ぶという概念が違うのだよ。 |
入試のための受験勉強ではただひたすら 暗記で良かったのだろうが、 入学後もそのつもりでいては困る……。 |
丸暗記を否定するわけではないがね、 暗記したものを引き出す思考能力がないと 宝の持ち腐れ甚だしいとは思わんかね……。 |
要領の良い学生は学びにそこまで熱意が無くとも 卒業までこぎつけてしまうものだが、 さりとてそういう悪知恵もないとなると……。 |
学ぶことが好きだとそれまで勘違いしてきた、 情報を詰め込むことだけが得意な学生は……。 |
私のゼミにも、毎年のように 詰め込み暗記から脱却できない 学生が来て頭を抱えたものだよ……。 |
高校まで勉学に打ち込んできたであろう 学生が大学で打ちひしがれるのを 見るのはね、気分がいいものではない……。 |
死んでもその先があると思っていたが……。 |
何もない。無だ……。 |
はぁぁぁ……。 |
高等学校 |
江南……? 昔の同級生にそんなのがいたような、 いなかったような……。 |
昔、クラスにすげーガリ勉女がいてさ。 ずっとひとりで勉強ばっかりしてたんだ……。 |
いっつも勉強ばっかりしてる女、 傍目から見てこえーのなんのって……。 |
ちょっと話しかけただけで 勉強の邪魔だー、とか、 噛みつかんばかりでさあ……。 |
勉強して周囲を見返すつもりだったんだろうが、 俺たちみんな引いちゃってさ、 距離とってたんだよな……。 |
勉強ばかりの学生生活だなんて、 何が楽しかったのかねえ……。 |
こんな時代で勉強なんてしたって 無駄だろ無駄。卒業して、大人になっても 俺みたいにあっさり死ぬんだ…。 |
俺が何したっていうんだ……。 |
死にたくない、死にたくない……。 |
ううううう……。 |
校舎1階 |
……高校の時に、 すっごく要領悪いクラスメイトがいたのよね。 |
そりゃテストの点は良かったみたいだけど、 そのための勉強時間が、 ちょっと引くくらいたくさんかけてた子でね……。 |
休み時間もずっと勉強しててさぁ、 そんなんじゃ声もかけづらいじゃない? 向こうだって勉強に集中したいに決まってるし。 |
テストの点を良くするコツを 聞いたことあるんだけど、丸暗記、だってさ……。 真似したくないなあ、って思って、それっきり。 |
……学生時代の勉強なんてさ、 そりゃしたほうがいいんだろうけど、 全てをそれに捧げるようなものではなくない? |
どんなに勉強したって、 私みたいに死んじゃったら終わりなのよ……。 |
高校、大学、就職と要領よくやってきたのに、 ケガイに殺されるなんてやってらんない……。 |
終わり、もう終わり。なにもかも終わり。 |
私だけ死ぬの、不公平じゃない……? |
あーあ……。 |
校舎2階 |
……昔、というほど前でもないが……。 教え子に、いつも勉強ばかりしている子がいた。 |
進路指導のとき、親御さんとの 勉強に対する温度差がひどく印象に残った……。 |
子どもがどんなに頑張ったとしても、 親がそのことを評価していない 家庭ってのは厄介でね……。 |
親が勉強に価値を認めていない家庭だと、 子どもが上のレベルの学校を目指すのが 難しくなるものなんだ……。 |
周囲の環境に負けずに励む 学生のことは応援したくなるが、 あの子は今、どうしているのだろう……? |
向上心があるというのは良いことだが、 他の生徒と全く交流できていなかったのは 気がかりではあったな……。 |
……東京すら壊滅する今の時代は、 生徒に勉強して上を目指せとは 言いづらくなってしまった……。 |
ここは……どこなんだ……。 |
なにも見えない……わからない……。 |
ううう……ううう……。 |
タカコ
神社1 |
若国さんち、女がひとりもいないから タカコちゃんの扱いに困ってるんじゃねえの? |
男ふたりでくっつくとか、 それが今の時代ってことなのかねぇ……。 |
近所付き合いもあるから面と向かっては 言わねぇけど、ああいう家庭はうちの町だと てきめんに浮くんだよなぁ……。 |
若国さんちを妙な目で見てる罪滅ぼしに、 タカコちゃんを近所みんなでかわいがってたって 言われてもまあ、否定はしない……。 |
タカコちゃん、いい子だし、 礼儀もちゃんとしてるけど、 友達といるところを見ないんだよな……。 |
ひとりでいるのを見て、 友だちと待ち合わせかい、って聞いたら、 そうじゃないって言ってたんだよな……。 |
タカコちゃんが妙な奴に ひっかからないか心配だったんだよな……。 |
まだ死んでられないってのに……。 |
クソッ、クソッ……。 |
うああああああああ……! |
神社2 |
タカコちゃん……? キライってほどじゃないけど、 あんまり話が合わないから、困る……。 |
タカコちゃんは背も高くて、 大人っぽいけど……。 わたしたちをこども扱いするのは、イヤ。 |
タカコちゃんの家はフクザツな家庭だから あんまり付き合わないほうが 良いってママに言われてるんだ。 |
タカコちゃんの家にはママがいなくて、 パパがふたりいるんだって。 ……よくわかんない。 |
タカコちゃんがいるとママの話とか 気を使うから、面倒になっちゃう……。 |
商店街だとタカコちゃんが色んな人から かわいがられてて、ずるいと思う。 |
ここ……どこなの……。 |
帰りたいよ……。うちはどこなの……? |
ママ……パパ……。 |
ううううう……。 |
通路 |
サビシイ……ヒトリハサビシイ……。 |
ムシシナイデ……ハナシヲキイテ……。 |
サビシイ……サビシイ……。 |
ナカマガホシイ……ナカマヲツクロウ……。 |
ジブンダケノモノニシヨウ……。 ソウスレバサビシクナクナル……。 |
ホカノダレカヲミナイデホシイ……。 |
ドコニモイカサナイ……。 ズットココニイレバイイ……。 |
ニガサナイ……ハナサナイ……。 |
アア……アアア……。 |
ヒヒヒ……ヒヒヒ……。 |
商店街 |
……マスターの娘さん、 発育も良くて、小学生には見えなかったなあ……。 |
最近の小学生は大人びてるのね……。 いや、私も酔ってた時しか ちゃんと話したことないけど……。 |
あれだけ大人びてると、 同年代の子がこどもっぽすぎて やってられないでしょうね……。 |
周りの大人にどうすれば可愛がられるか わかってるって感じ、大人受けはいいけど 同年代から嫌われるからね……。 |
ああいう処世術、心配なのよね……。 要はあれ、人一倍寂しさに弱い裏返しでしょ……? |
ああいう子はこの町じゃ生き辛いでしょうね。 疎開してきた私が言うんだから間違いないわ……。 |
葦原中つ町は平和なんじゃなかったの……? |
なんで私、死んでるのよ……。 |
話が違うじゃない……。 |
嘘……嘘、嘘、嘘……。 |
通学路 |
あのデカ女、オレたちより背が高いんだよな。 なに食ったらああなるんだろ? |
デカ女をデカ女って言ってなにが悪いんだよ! ホントのことを言ってるだけじゃん! |
だいたいあいつ、なんかムカつくんだよ! オレたちをガキ扱いして! 同い年だろ! |
オレたちが女子をからかうと、たいてい 他のヤツらが出てきてめんどくさくなるんだけど、 あいつの場合あんまり味方する女子いないんだよな。 |
オレたち男子はあいつのこと いけすかないと思ってるし、女子は女子で あいつのこと仲間はずれにしてるんだよな……。 |
いっそ泣いたりすればオレたちだってちょっとは 反省するけど、あいつ、オレたちのことを バカにするんだぞ! おあいこだよ! |
……えっ、オレ、死んでるの? うっそだあ! |
あはははははっ! |
こっちだよーだ! |
いえーい! |
校舎1階 |
タカコちゃんがクラスで孤立してる問題、 頭が痛かった……。もう悩む必要もないけど……。 |
タカコちゃんが私を頼りにしてくれれば まだやりようがあったけれど……。 |
タカコちゃん、孤立してるって自覚したら 自分から他の子と距離を取っていったから……。 |
変に大人びてる子はやりにくいのよ……。 |
若国さんのご家庭、PTAでも他の父兄から 奇異の目で見られたりして、大変そうなのよね……。 |
この町はまだまだ 昔の価値観が生きているものね……。 |
今の時代、家庭の在り方は多様であると 教えなければならないけれど、どう教えるかは 教師に丸投げなのよね……。 |
どうしてこんなことに……。 |
嫌……死ぬなんて嫌……。 |
何も悪いことなんてしていないのに……。 |
コノハ
神社 |
殺せ……。あの娘を、木葉を殺すのだ……。 |
あれは人の世の敵。生きていてはならぬ……。 |
情けをかけて他所に流したばかりに……。 |
巫女として使えぬばかりかケガイに与するとは……。 |
失敗作め……。 |
生かしておくべきではなかった……。 |
無念だ……。 |
この無念こそがケガイの……。 |
ぐううううう……。 |
おおおおおおおお……! |
大山の家 |
モウスグ! モウスグダ! |
人ノ世ハ終ワル! 我ラノモトニ世ハ戻ル! |
我ラヲ見放シタ者タチに報イヲ! |
醜イト我ラヲサゲスンダ者タチニ報イヲ! |
待チ遠シイ! 待チキレナイ! |
我ラノ姫ヨ……! 我ラノ望ミヲ今コソ! |
人ノ世ニハ姫ヲ苦シメルモノシカナイダロウ……? |
人ノ世ノ終ワリ。ソレガズット 姫ガ待チ望ンデキタモノダッタハズダ……! |
姫ヨ、ドウシテ今更ニナッテ苦シム……? |
ウオオオオオオオ! |
商店街 |
木葉ちゃん……。 いい子なのにねえ……。 |
愛想はいいけど、 作り笑顔っぽさがどこかあるのよね……。 |
突然髪を染めたときは 悪い遊びでも始めたのかと思ったわよ……。 |
親戚の子と同居してるって話だけど、 未成年だけが住んでる家って不安よね……。 |
近所付き合い以上の事は 口出しするのよくないと思ってたけど……。 |
どういう事情か分からないけれど、 あんな子を放り出しちゃう親ってねぇ……。 |
木葉ちゃんと一緒に住んでた輝さんも 最近は外出してばかりで、 何を考えてるのかしら……。 |
ひいいいいい……。 |
嫌……死ぬのは嫌……。 |
私じゃなくてもいいでしょ……。 |
踏切 |
大山さん……。 あんまり人と仲良くしてないよね……。 |
態度は柔らかいけど、 近寄りがたいっていうか……。 |
僕に限らず、みんな大山さんには 距離を取られてるって感じてたと思うよ……。 |
どこかで線を引いちゃってる感じ……。 |
なんだか、 いつも落ち込んでるようには見えたけど……。 |
学校を卒業したら町を出て行っちゃいそうだな、 って思ってたんだ……。 |
いやだ……嫌だああああ……。 |
きっとみんな死ぬんだ……。 だから僕も死んだんだ……。 |
なんで、なんでだよ……。 |
どうして僕が……。 |
通学路 |
大山さん……。 好きでも嫌いでもないけど、向こうはきっと、 私のこと嫌いでしょ……? |
わかるよ、嫌われてるのは。 目がそう言ってたもの……。 |
きっと何もかも嫌いなんでしょ……? |
普通に話しててもどんどん自分を卑下するし、 そんなのフォローし続けるのも疲れるし……。 |
表面上だけ仲良くしておくのが お互いに楽だったんだからいいじゃない……? |
相互不干渉、みたいな。 そんな感じだったんだよね……。 |
私だけじゃなく、 みんな同じこと思ってたはずだよ……。 |
死にたくない……死にたくない……。 |
まだまだやりたいことがあるのに……。 |
うう……うあああああ……。 |
校舎2階 |
大山さん、大丈夫だろうか……? |
身近な親戚がああでは……。 |
大山さんの家は、まともではないように思えて……。 |
当人が大丈夫と言っている以上、 それ以上は首を突っ込めなかったが……。 |
無理を溜め込むタイプの子に見えるからね……。 |
事情を抱えた生徒なんて、 いくらでもいるのはわかっているが……。 |
いち教師として、心配でならない……。 |
油断した……油断したばかりに……。 |
少し足を伸ばしただけなのに……。 |
うう、ううううう……。 |
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