2011-10-17

マジメな話をします

先日岡山弁護士会がこのような会長声明を出しています。

国選弁護報酬基準及びその運用の抜本的見直しを求める会長声明

この声明のきっかけとなった事件が記載されていますが、この内容がひどい。

事案がちょっと分かりにくいので、自分なりに平易な内容にしてみます。
事件は窃盗事件で、前のお客がATMに忘れていったお金を被疑者が持って行っちゃったという案件です。この場合、被害者はお金を忘れた人のような気がしますが、法律上は金融機関に忘れていったお金の占有(やや法律的な概念ですが、ここでは管理権程度の意味だと思ってください)は、忘れた人ではなくその金融機関にあるとされています。また窃盗の被害者は、被害品の占有者であると定義されています。よってこの場合、窃盗の被害者は金融機関という事になります。

さて、この被疑者の国選弁護人になった場合(もちろん被疑者が事実を認めていることが前提)、一番しなければならないのは被害弁償です。つまり被害者にお金を返すわけです。しかし本件では、金融機関がお金を忘れた人に損害を補填することはしていませんから、実際に損害を受けたのはお金を忘れた人ということになります。本件の弁護人もそう考えて、お金を忘れた人に、被告人が持っていったお金を全額返し、見事に減刑嘆願書(被害者が、「被告人も反省しているようなので、あまり重い刑にしないでください」と一筆書いた書面のこと)をもらうことが出来ました。その結果被告人は起訴猶予(刑事裁判にかけられることなく事件が終了すること)となりました。弁護活動としてはパーフェクトと言っていいと思います。

法テラス(国選弁護人の報酬を支払うところと思ってください)は、被害者と示談を成功させた場合、報酬を加算することになっています。ところが悲しいかなお役所仕事。法テラスはなんと、今回の示談は被害者=金融機関との示談ではないので、報酬は加算できない、という判断をしてしまったのです。でも、今回のケースで被害者である金融機関と示談しようとしても、金融機関は実際に損害を受けているわけではないのでお金は受け取ってくれませんし、減刑嘆願書なんか書いてくれるわけもありません(会社ですからね)。ですから、被害者と示談せよというのは無茶振りということになるわけです。

この件、皆さんはどう思われますか?

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