2015-09-26
これが本当に最後なのか…榊ガンパレ、涙の最終巻。
ガンパレード・マーチ 2K 未来へ ④
著者:榊涼介
レーベル:電撃ゲーム文庫
価格:600円
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あらすじ
熊本からカーミラ領へ、生き残りの学兵たちを連れて撤退を続けてきた5121小隊だったが、敵の攻撃は次第に大規模なものになり、一行の疲労は限界に達しつつあった。一方、中央では再び政争が激化し、5121の後ろ盾である大原政権は倒れようとしていた。その影には、日本に米軍を駐留させようとするワシントン政府の思惑があった。
大原首相は、政敵である大熊幹事長を国家反逆罪で拘束するも、ワシントン政府の圧力に負け、カーミラとの歩調を合わせることが出来なくなってしまう。それはすなわち、5121がカーミラに助力することもできないということであった。折しもカーミラは日本に侵攻する別の幻獣王の軍により負傷、アキレス腱である阿蘇を失う寸前に追い詰められる。全ての希望が潰えた5121は―
感想
まさかの最終巻でした。とても1冊で風呂敷をたためるような話ではなかったので心配していたのですが、残念ながら打ち切りENDと評価せざるを得ない終わり方だったように思います。後書きを見ても出版社と何かあったような感じを受けますし、帯には「あと少しだけでも、何とかしたかった……!」とありますし…悲惨な戦争を正面から描きつつも、どこかハッピーエンドを期待させるのがガンパレの、そして榊ガンパレのいいところだっただけに、絶望的な状況で打ち切られてしまったのは正直納得がいきません。この戦争を生き残ったみんなには幸せになる権利があるはずなのに。前巻だってまだ話が終わるような雰囲気ではなかったですから、発売延期の件も含め、何か良くない力が働いたのではないかとどうしても勘ぐってしまいます。そうでないことを祈りますが…
話自体は普通に面白かったのですが、これは起承転結で言えば「転」のおもしろさなので、結が存在しなくなった以上その評価をすることは出来ません。あしからず。正直これなら最後あっちゃんが士翼号無双で敵を一掃し、「俺たちの戦いはこれからだ」エンドにしてくれた方がまだましだったような…。それにしてもこれは年表作りに支障を来しそうだなぁ…
なお榊先生の名誉のために(そしてガンパレにあまり詳しくない読者のために)言っておくと、原作でも、黒い月の正体(の一部)は第6世界(ガンパレの世界の並行世界)から第5世界(ガンパレの世界)に流れ着いた士翼号(高性能な士魂号だと思いねえ)で、士翼号はその後速水の乗機になっていますから、あのエンディングは榊先生の暴走ではないです。その他、幻獣が並行世界(第4世界)の人間が変じた姿であること、阿蘇が幻獣にとって重要地点であること(第4世界とのゲートが阿蘇山にある)、ドイツが幻獣共生派になっていることなども原作設定なので…
とにかく残念だったとしか。大好きなシリーズだったのになぁ。いや、今でも大好きですし、もし出版社がうつるとか、ウェブ上とか、同人誌で続けるとかならがっつり付いていきます。
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2015-03-14
久々に買ったその日に読んで感想。(ホント久々だ…
ガンパレード・マーチ 2K 未来へ ③
著者:榊涼介
レーベル:電撃ゲーム文庫
価格:600円
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あらすじ
九州では学兵の生き残りが共生派に身をやつしている―その事実を知った5121は、中央と一戦交えてでも学兵たちを保護しようとするが、内局の高山から帰ってきたのは称賛の言葉だった。撤退戦を隠蔽しようとする勢力に情報が漏れないよう、5121に学兵の保護をしてもらうのが今回の熊本派遣の目的だったのだ、と。その言葉に勇気づけられた小隊は、学兵たちの保護に奔走する。
心を開いた共生派の少年、そして学兵たちのために犠牲をいとわず戦う5121の姿に、多くの共生派や幻獣たちが行動を共にするようになる。しかし、共生派の中でも過激な連中からの攻撃は日ごとに激しさを増していった。敵の最新鋭兵器、そしてなれない対人戦闘に小隊は次第に疲弊していく。善行は海兵第一旅団に復帰し、急ぎ熊本へ向かう。また5121も民間人たちの保護を求めてカーミラ領へ向かうことに。戦いは撤退戦の様相を呈してきたのだった。
感想
ついに5121が動き出しました。全巻では瀬戸口が不安定になったりしてちょっとくらい雰囲気で終わりました。今回も苦しい戦いが続き、全体的には悲壮感があるのですが、その中でも正義を貫こうとする舞と、それを支える隊員たちの明るさに救われましたね。しかし今回は苦戦続きでした。1巻の中でこれほど士魂号が破壊されたのは、ごく初期の頃も含め始めてではないでしょうか。しかし小隊の面々はともかく、戦車兵たちはほとんど対人戦闘をしたことがないはずなので、メンタル的なところもちょっと心配です。
あとこれまでピンポイントすぎる登場だった上に最近は従兄においしいところを持って行かれっぱなしだった岩田が、ついに真田さんポジションとして活躍したのはちょっと笑いました。趣味で偽ウイルス薬、余技でトウガラシ爆弾を作ってたとか危険人物すぎる…でもそこが岩田らしい。
しかしゴブリンたちが味方についてのはかなり問題になりそうですね…これまでおそらく民間人をもっとも殺害してきたのはゴブリンですから。ゴブリン自体にも個性があり、好戦的な者もいればそうでない者がいる、ということを説いたところで、50年以上にわたって人類を殺戮してきたゴブリンを受け入れることはできないでしょう。これからどう収集付けていくのか楽しみです。このペースだと次巻で完結という事も無いでしょうし、まだまだ楽しませてもらいますよ。
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2014-12-20
ついに榊ガンパレシリーズが電子書籍化されましたね。これを機に読んでくれる人が増えますように。それからうちのサイトのアクセスが増えますように!
ガンパレード・マーチ 2K 未来へ②
著者:榊涼介
レーベル:電撃ゲーム文庫
価格:600円
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あらすじ
封鎖地域熊本に隔離された5121小隊は、腐ることなく遺体回収の任務を果たしていた。隊員たちには大胆さが戻り、熊本の環境を小隊色に染め直していく。
そんな中、小隊の周囲には、様子のおかしいゴブリンが出没するようになっていた。ののみによれば彼らには戦う意思はないとのこと。小隊にその言葉を疑う者はいなかったが、万が一のことを考えると舞は警戒を解くことはできなかった。そしてそれと同時に、戦意の少ない共生派も出没するようになる。とある戦闘で小隊が捕まえた共生派の一人は、自分たちは九州に置き去りにされた学兵のなれの果てだと語り始めた。その話を聞いた石津は、学兵たちを救い出すことを決意する。
一方、周辺の情勢も動き出していた。中央では5121小隊のシアトルでの暴走を理由に、反首相派が勢力を盛り返してきていた。このままでは反首相派が政権を握り、大原政権に不満を持つ米国からの干渉が強まりかねない。そのことを懸念する大原首相。また有明海では、野間集落を標的とした共生派が出没。事態は混迷を極めていった―
感想
後半部分は、これまで隊の精神的支柱だった瀬戸口が不安定になったことで、全体的に暗い雰囲気がありますね。しかし前半は、小隊が持ち前の元気を取り戻し、大浴場を建設したり、炊き出しをやったりと昔の感じに戻った感があってうれしかったです。
武装共生派は普通に考えると反首相派、場合によってはアメリカの反日分子からの支援を受けているんでしょうけど、それを暴いて大原首相大勝利だと北海道動乱とかとおんなじなので、さすがにそれはないか。新たな幻獣王の伏線もまだ回収されていませんし、どうなるか楽しみ。
そしてついに新たな共生派集団の小隊が少し明らかになりました。九州に取り残された学兵か…人類を見れば即殺害の幻獣の群れの中で、どうやって生き残ったのかは今のところよく分かりません。そもそも当時の共生派は幻獣からは仲間とはみなされておらず、普通に殺害対象でしたからね。そこら辺説得力のある説明がありますように。
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2014-10-19
11/13に、ガンパレ関係の書籍(小説、コミック、ファンブック)が電子書籍化されるとのこと。まだ読んだことがない方は、この機会にお買い求めください。
とりあえずBOOK☆WALKERで配信予定、その他のサイトにも広がるかも…とのこと。また2巻も11/10発売予定です。
ガンパレード・マーチ 2K 未来へ①
著者:榊涼介
レーベル:電撃ゲーム文庫
価格:600円
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あらすじ
アメリカから無事帰国した5121小隊は、アメリカでの暴走の責任を問われ、待機状態にあった。解散か、はたまた絶界の孤島へ転属か…不安を抱える隊員たちに、内局から告げられた新たな派遣先は、熊本―5121小隊発祥の地であった。熊本は、九州戦役終戦以来封鎖状態にあったが、このたび特例として封鎖が解かれ、最初の派遣部隊として5121小隊が選ばれたのだ。
にわかに沸き立つ一同―しかし、熊本で彼らを出迎えたのは、九州戦で戦死した学兵たちの大量の遺骸、共生派による襲撃、そしてカーミラと敵対し、封鎖地域で孤独に生きていると主張する別の共生派グループだった。小隊員たちは、これは封鎖解除に名を借りた小隊への懲罰であることに気付くも、黙々と与えられた任務を果たそうとするのだが―
感想
とりあえず、アメリカ編で暴走しすぎた5121小隊に、一応きちんとした処分が下されたので安心しました。いくらうまくいったからってなあなあにはできないほどの暴走でしたからねあれは。
そして久々の熊本編です。作中の時間では熊本を撤退してから1年くらいしかたっていないのですが、現実時間ではその10倍の時間がたっているので、読者としても感慨深いものがあります。小隊員の喜ぶ気持ちもよくわかりますよ。
そして新たに登場した謎の集団が気になります。これまで共生派は大体、
- 幻獣と意思疎通できず、武装して暴れまわっている武闘派
- 幻獣と共存でき、カーミラに従うカーミラ一派
- 第5世代を中心とする野間集落
の3グループに分かれていましたけど、今回登場したリリアたちはそのどれとも違うようです。意に反して第4世界(ざっくりいうと、第5世界(ガンパレード・マーチの世界)の平行世界。第4世界と第5世界は近い世界で、作中で「幻獣」と呼ばれているのは、第5世界へ侵攻している第4世界の人間、という設定)から流れ着いちゃった人たちとかですかねぇ。あまり無名世界観には詳しくないんですが、第4世界は内戦状態にあったのが割と近い時期に統一されたばかりなので、そのせいで第4世界にいづらくなった人なのかもしれません。そこまで言い出すと風呂敷広げすぎちゃうような気もしますが…
とりあえず今回は導入なので、続巻に期待です。
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2014-07-06
帯に「アメリカ編完結!」の文字といっしょに「「榊ガンパレ」終結に向け9・10、新シリーズ始動!!」の文字が。おお、ついに10年以上やっているこの作品も完結なのか…感慨深いものがあるなぁ。まぁ9月完結じゃなくて9月に終結に向けた新シリーズが始まるだけですから、どう転んでも1年以上は大丈夫そう。
ガンパレード・マーチ 2K 5121小隊帰還
著者:榊涼介
レーベル:電撃ゲーム文庫
価格:600円
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あらすじ
継戦を主張する小隊の戦闘班と、帰国を主張する整備班との対立は深刻になり、善行は折衷案として、シアトルのオルレイ代表が幻獣による精神汚染を受けていないかをハッキリさせるまでアメリカにとどまることを決め、そのために日本政府を通じて野間集落の鈴原医師の派遣を要請した。
ところが、これまで幻獣汚染の調査団受け入れを拒否していたオルレイは突如態度を一変させ、受け入れを歓迎する旨を表明。鈴原医師の診断でも精神汚染の兆候は見られなかった。偶然から小隊に協力的な副代表のドナヒューが精神汚染を受け、時が来ればテロを起こすよう催眠を仕込まれていたことが判明したが、こちらも鈴原の治療により回復。事件がひとまず片付いた善行は帰国を考えるようになるが、突如ドナヒューが拉致されてしまう。ドナヒューの救出に向かった小隊だったが、それは招待を亡き者にしようと企む銀狼師団と、その糸を引くオルレイの仕掛けた罠だった。数で勝る銀狼師団は小隊を包囲し、民間人を人質にとって降伏を迫るが、小隊はどうにか脱出。オルレイの所行をマスコミを通じてさらすと共に、オルレイの退陣を求めるドナヒュー副代表と第一軍のジャクソン大将と協力して、何とか内戦を避けようと銀狼師団を引きつけながら逃走、新政府の樹立に成功した。
5121小隊の旅は終わりを告げ、大原首相から暴走についての嫌みを受けながらも帰国の途に就くことになった。しかしその頃、北米の幻獣を操る女王ハニエルは、次なる戦いの舞台を日本に定めていた―
感想
前巻の感想で、「次回どういう風に収拾を付けるのかに注目」って書きましたけど、まさか風呂敷をたたもうとするんじゃなくてそのままの路線で押し切ってしまうとは夢にも思いませんでした。これ民主主義国家でクーデターに外国の正規軍が力を貸したってことになるので相当まずいんじゃないのかな…と思いましたけど、別に現実世界でも普通にありますよね。米の国とか露の国とか。
とはいえ、最終的には火力で…ではなく、戦火を交えることなく事件が終結してよかったです。北海道での事件もそうでしたけど、小隊は決して人類には銃口を向けない、というポリシーを大事にしているので、どうにかこうにかお説教だけで大原首相も納めてくれたんでしょう。ただ(永続する効果は無いとはいえ)バイオ攻撃までしておいてその言いぐさはいいのかという気もしますが(もっとも文字通り一切攻撃することなく生き延びることは不可能だったでしょうから、自衛のため…と考えれば許されるか)。
そしてついにラスボスっぽいキャラが出てきましたね。ハニエル対カーミラの行方にも注目です。9月が本当に楽しみ。
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2014-01-12
昨年の発売からしばらくして購入しすぐ読んだのですが、なぜかタイミングを逸して感想を書けませんでした。そうこうしているうちにあらすじを忘れてしまうという体たらく。
ガンパレード・マーチ 2K 西海岸編③
著者:榊涼介
レーベル:電撃ゲーム文庫
価格:600円(税別。今年から税別表記に統一します)
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あらすじ
シアトルのオルレイ代表から撤収を命じられた5121小隊は、小隊会議を開いていた。命令に従って撤収を主張する撤収派と、最後までシアトルの補助兵たちを守って闘うべきとする主戦派の意見は平行線をたどり、隊は険悪なムードに包まれる。善行は翌日まで各隊員がそれぞれなすべきことを考えるように告げ、一旦会議を散会した。
自由行動中、瀬戸口達は銀狼師団のリーランド司令と非公式に接触。意図的な膠着状態を演出することが難しくなったことを悟ったリーランドを焚きつけ、協力を引き出すことに成功する。しかし瀬戸口、そして善行の真の目的は、シアトル政府を幻獣との決戦に巻き込み、一気に幻獣を殲滅することにあった。補助兵総軍司令のグラントもその意図を汲み、優秀な補助兵を銀狼師団と協力して作戦行動に当たらせることを了承する。
6月12日午前4時、進撃を始めた幻獣軍に対し、人類側はシアトル戦線の濃密な火線網で応戦。戦闘は人類側に有利に展開していたが、幻獣共生派による地下陣地の一斉爆破により銀狼師団は壊滅的な被害を受ける。この危機に、ついにシアトル政府軍も参戦を決定。サンディエゴ市街戦は人類側の記録的大勝で幕を閉じた。
戦闘終了後、善行はシアトル政府からの責任追及の可能性に苦笑しながらも、シアトルに住む人々を守ろうと、次なる展開に思いを馳せるのだった。
感想
今回は幻獣の恐ろしさが見られるかも…と前巻感想で書きましたけど、やっぱりダメでしたね。今回は完全に5121の策が的中している上に、幻獣戦ですら最終目標のための手段としてしか使われていない関係で、完全なかませっぷりでした。最後に幻獣共生派が一矢報いましたが、結局5121反対派を吹き飛ばしてしまっただけなので戦略的には失敗としか…
ただ、今回の5121の行動は完全にまずいですよね。シアトル総軍のやったことは国家反逆罪の要件を満たすと思いますし、5121はそれを煽っている立場ですから(しかも日本国政府の命令も無視しているのでそっちもヤバイ)。これまでは「勝てば官軍」的なノリでここまで来てしまいましたけど、さすがに今回はまずいんじゃないのかなぁ。次回どういう風に収拾を付けるのかに注目です。
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2013-08-18
榊ガンパレ2ヶ月ぶりの新刊です。今回もAmazonで購入。
あと久々に年表も更新してepisode TWOを反映させました。次は「あんたがたどこさ」なんですけど、あれはパラレルっていう設定だからめんどくさいんだよな…かといってその他の作品につながる場面も多いから、無視するわけにも行かないし…あと年表自体が長くなってしまったので、そろそろページを分けたほうがいいかも。5冊前後で切るとすると「前史」「小隊結成~熊本城決戦」「九州撤退戦」「山口防衛戦・ガンオケ」「九州奪還戦」「日本内乱編」「新大陸編」の7分割くらいか?
ガンパレード・マーチ 2K 西海岸編②
著者:榊涼介
レーベル:電撃ゲーム文庫
価格:600円(税別)
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表紙など
表紙は左から田代、中村、岩田、狩谷の整備班4名。シリーズ初の1巻との続きイラストになっています。なお今回は整備班の出番はほとんどありませんけどね…
帯は「国境の都市で小隊が局地戦に打って出る!!」となっています。裏には、「ガンパレード・マーチ アナザー・プリンセス」の最終第4巻が8/27に、小説版が9/10に発売予定との告知が。旅行前発売だから旅行中に読む事決定かな。
巻頭付録はシアトル共和国領域図。軍の動きはあまりないので、あくまで地図的な位置づけです。残念ながら描き下ろしキャライラストはありません。
今回も著者・絵師のあとがきはありませんでした。
あらすじ
日本視察団としてサンディエゴ戦線に到達した5121小隊は、視察の名目で使い潰されようとしていた補助兵の救出を始める。戦線の正規兵―銀狼師団は、補助兵を囮程度の存在しか見なさず、また幻獣との戦いに本腰も入れていなかった。やがて小隊の動きを快く思わない銀狼師団は、小隊を抹殺しようと不穏な動きを見せ始めるが、強烈な反撃に遭い戦力の多くを失う。
それに並行して、サンディエゴ戦線の幻獣軍は大規模侵攻を開始。もはや人間同士で争っている場合でなくなったシアトル軍だが、これまでにない組織だった侵攻に前線の補助兵は総崩れになった。善行はその原因が知性体の出現による事を突き止め、幻獣による精神汚染への対策を取るようシアトル政府に求めるが、突如好戦路線に転換した政府のオルレイ代表はこれを拒否し、事態は混迷を極めていく―
感想
前半は銀狼師団との戦いが描かれます。対人戦闘をタブーにしている5121小隊が、策略と謀略で師団を手玉に取っていくのが面白かったです。口先参謀の茜の面目躍如でした(今回はマジ活躍です)。
後半はいよいよ幻獣との戦いが始まります。日本では小隊が強すぎて完全に敵の爆薬庫扱いだったゴルゴーンとかがここまで恐ろしい敵だったとは。これからは再び幻獣の恐ろしさが見られるんでしょうか。小隊相手だと「二百、三百のデーモンなら、5121小隊は問題なく撃破出来る」(97ページ)だからな…昔はミノタウロス(デーモンとほぼ同格)が3体くらい出てきただけで即絶望だったのに…
最後に小隊はサンディエゴからシアトルへの撤退を命じられるんですけど、また九州撤退戦の時のように敗残兵を吸収しながら下がっていくのかな。絶望的なシチュエーションが楽しめそうな次の巻に期待大です。
ただいくら何でも攻撃の可能性があるというだけで、一師団の航空戦力を壊滅させたのはさすがにやり過ぎでは…これシアトル軍全体からしても相当程度の戦力だと思うんですが…あそこまで出来るんならもうちょっと穏便に処理出来なかったんでしょうか。
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2013-06-25
榊ガンパレ3ヶ月ぶりの新刊です。待ってました!なのですが近くの書店では軒並み置いてなくてAmazonで購入しました。
ガンパレード・マーチ 2K 西海岸編①
著者:榊涼介
レーベル:電撃ゲーム文庫
価格:600円(税別)
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表紙など
表紙は左から加藤、原、東原、新井木の女性陣4名。ただし本編には東原と新井木はほとんど出てきません。ちなみに今回本編で一番活躍したのは狩谷です。
帯は「アメリカ大陸での最後の戦いが幕を開ける!!」となっています。
巻頭付録は今回登場した脱走兵4名。シアトルのごく一部で物語が展開するため、戦局図などはありません。
今回も著者・絵師のあとがきはありませんでした。
あらすじ
過酷な戦闘を生き延び、シアトルに移動した5121小隊は、つかの間の休息を楽しんでいた。そんな中、西海岸最大の激戦区サンディエゴ戦線から脱走してきたハイティーンの少年少女4人は、銀行に立てこもり、5121小隊のパイロット壬生屋・滝川との面会を要求する。彼らが戦争の悲惨さを訴えようとしていることを知り、修羅場をくぐってきた小隊の面々は当初冷ややかな反応を見せるが、実は彼らの真の目的は、シアトル軍の陰惨な真実を暴くことだった。
軍警察は軍の威信を賭け、国家反逆罪を盾に4人を拘束しようと動く。当初は巻き込まれた形だった小隊のメンバーも、己の信じる正義を成すため、それぞれの立場で戦い始める。しかし事態の進展は早く、軍警察は特殊部隊を送り込み4人を抹殺しようと画策。内政干渉に及び腰の日本政府に対し、善行がとった作戦とは―
感想
シリーズの導入としては十分面白かったです。これから4人を良く思わないサンディエゴ戦線の面々、戦線に殺到する幻獣軍、シアトル軍と小競り合いが起こりそうなワシントン軍などが入り組んでどろどろした戦いが繰り広げられるんでしょう。
ただ、さすがに今回の小隊の行動を「正義」というには問題があるのではないかな…たしかに4人は困っていて、「5121小隊は救いの手を求めている人たちを、見捨てることはしません」というお題目はいいと思うんですけど、4人の告発の正当性と、脱走ないし機密漏洩を天秤にかけると、後者が勝つんじゃないかな…
最終的には政治的決着が図られるんですけど、これだと軍の規律が崩壊する恐れがあるし、それによって西海岸全体の安全が脅かされる危険性もあるんですよね…。第一、他国の(しかも同盟国の)軍なり政治なりにここまで介入するのは内政干渉の域を超えているかと。というわけで今回の話の流れについてはやや否定的です。
しかしすっかり狩谷も性格が丸くなったなぁ。初期の彼ならこんな所には絶対出てこないでしょう。交渉役としての今回の活躍は、「論理と秩序を重んじる」彼の面目躍如でした。…あぁ、茜も頑張ってましたけどね。
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2013-03-20
風邪で休んでいる間に読み終わりました。榊ガンパレ4ヶ月ぶりの新刊です。
ガンパレード・マーチ 2K 5121小隊の日常III
著者:榊涼介
レーベル:電撃文庫
価格:630円
表紙など
表紙は速水、舞、中村、遠坂、ののみ、田辺の6人。遠坂が星条旗を持ち、中村はおそらく隊旗を持っています。帯は「7年の沈黙を破って”日常”シリーズ復活です♪♪♪舞台はアメリカだ~」とハイテンション。
巻頭付録はなし。作者、絵師あとがきもありませんでした。つうかきむら女史のイラストは表紙だけじゃん。なんで挿絵ないの?
あらすじ
アメリカでの過酷な戦いの日々は終わり、5121正体は日本艦隊が待つ西海岸のシアトルにたどり着いた。すぐに帰国できるものと思っていた小隊に、シアトルでの長期休暇が命じられる。隊員たちは思い思いの休日を過ごすのだが―
久しぶりに5121に合流した善行の決意を描く「善行忠孝の困惑」、暴走した森が引き起こした滑稽な逃走劇を描く「森精華の抵抗」、小学校で武道を教える壬生屋を描く「壬生屋未央の憧れ」、完璧主義の狩谷がひどい目に遭う「狩谷夏樹の献身」、休暇の過ごし方が分からない舞を描く「芝村舞の孤独」、看護師になって帰ってきた田代と茜が再会する「茜大介の試練」、そしてソックスハンター達の変な友情を描く「遠坂圭吾の不思議な愛情」の短編7本におなじみ原日記6本を収録した短編集。
感想
今回は久々の日常シリーズということで、戦場以外の隊員たちの様子を描いた短編集になっています。ただ国外にいるということでI、IIとはやや趣が異なり、全体的にシリアスな物語が多いです。
ここんところ不安定な森や壬生屋がかなり回復したのはファンにはうれしい展開でしたが、逆に平時には舞や速水の不安定さが異常に目立つな…普段それをフォローする瀬戸口やののみ、無理矢理ギャグ展開に持ち込める岩田や若宮の出番が少なかったせいで余計にそう感じました。
久々に田代の勇姿が見られたのもオススメポイントですね。つーか茜は完全に飼い慣らされてるし。原、ヨーコ、森に続いてまた頭が上がらない女性が増えたな…
罪悪感は残る。しかし、かつて自分が指揮を執った学兵たちの不屈とも言えるたくましさを誇りに思えた。(中略)
懐かしい家族。まるで家出息子が久しぶりに実家に戻ったような気分だな、と隊員たちと離れていた時間に思いを馳せた。
※37、40ページより引用
2012-11-14
榊ガンパレの最新刊が2ヶ月ぶりに来ました。今回で新大陸編は完結です。
※既刊の感想はこちらから。
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表紙など
表紙は瀬戸口と舞。帯は「5121小隊は不死身ではない 死闘決着!生き残れるのか!?新大陸シリーズ最終巻」となっています。
巻頭付録は市内戦局図。キャライラストは新大陸編で登場した人物の総まとめで、新規イラストはありません。
また作者、絵師あとがきもありませんでした。
あらすじ
降着した状況を打開しようと5121はレイクサイドヒル港への強襲を計画する。しかし一方フェルナンデス隊は国防長官から待機命令を受けていた。命令の正当性に疑問を持ったフェルナンデスは上官に意見具申するも、逆に反逆罪で拘束されてしまう。浅井と5121小隊スカウトの活躍でレイクサイドヒルに多数の市民が残存していることを対外的にアピールすることには成功し、大統領が味方についてことで形勢は逆転するが、黒幕である国防長官はミサイル発射を強攻しようと画策する。
5121はついに港に上陸するも、幻獣はそこに異常とも思える戦力を集中させていた。激しい攻撃に、軍人、民間人双方に多大な犠牲を出しながらもついに住民の避難に成功する一同。しかしついにミサイル発射スイッチが押されてしまう。最後に市内に残った速水と舞の運命は。
感想
いよいよ新大陸編も完結です。今回は幻獣が存在感を見せましたね。といっても最近の5121は強すぎて、久々に登場したスキュラでさえただの的扱い、幻獣が勝っているのは単なる物量のみというのは辛いところです。榊ガンパレも始まった頃はスキュラが1体出てくるだけで大絶望でしたからね。
ただ、今回は強い強いという5121もさすがに物量に押されてピンチを迎える場面も何度かありました。助けに来れそうな登場人物も使い切って、これマジどうなるんだ…と思ったシーンもありましたけど、意外なところから助け船が。なかなかに意表を突いた(といっても伏線は十分張っていたのだが)展開だったので、ぜひ読んで確かめてみてください。
エンディングは「僕ら、これからどうなるんだろう?」「我らは戦場で生き、戦場で死ぬ定めだ」という速水と舞のやり取りでしたから、まだまだ続いていくと思ってよろしいんですよね。榊先生、きむら先生、ひとまずお疲れさまでした。
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