2013-10-07
既に更新作業は終わっていますが、星界の戦旗DVD-BOX付属の小説「星界の断章 野営~ペネージュの場合」のレビューです。
なお前作のレビューはこちらから。
→【小説】星界の断章 野営~ドゥサーニュの場合~ レビュー | Y.A.S.
星界の断章 野営~ペネージュの場合
著者:森岡浩之
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あらすじ
ペネージュが翔士修技館の訓練生だった時―
ペネージュと、同級生であるスファグノーフ侯爵公子リュトレーが衛旗士を務めていた晩のこと。先番のリュトレーが見張りを終えて天幕に戻ってくると、何者かにより帝国旗は盗み出され、「アセージュ山頂に来るべし」という文が残されていた。ペネージュは犯人は教官達の内部にいると目星を付ける。リュトレーは単身アセージュ山に向かうことを主張するが、当然のように同級生達を(叩き起こして)召集したペネージュは、倉庫から(無断で)必要な武器道具を持ち出して山に向かうべきと主張。意見は平行線をたどり、二人はそれぞれの方法で旗を追うことになった。
先行したリュトレーは、アセージュ山頂で無事帝国旗を発見した。しかし準備万端で現れたペネージュは、あくまで犯人確保が必要と言う。周囲を捜索するが、かなり念入りな隠蔽が行われており、結局その足取りは掴めない。あっという間に掲揚式の時刻になってしまう。
するとその時、教官達が残りの訓練生達を連れてアセージュ山に現れ、その場で掲揚式が執り行われることに。事態が飲み込めず教官に事情の説明を求めるリュトレーだったが、教官は何事もなかったように掲揚式を行い、旗をリュトレーに預けて帰って行ったのだった。
感想
ごく短い小説です。こうやってあらすじにするとペネージュさんの傍若無人ぶりがあまり分からないなぁ…。たった10ページそこそこの小説の中で彼女は、
- 地上訓練についてアブリアルを罵倒
- 2人交代で見張りをしないといけないのに、リュトレーに押しつける気満々で寝る
- 旗を盗まれたのはペネージュにも責任があるのだが、それを追求されて逆ギレ
- 真夜中には他を捜索するため同級生を叩き起こして召集
- 倉庫を襲撃して武器道具を持ち出す
- 犯人逮捕に熱心だと思ったら、怒っているのは寝室に侵入されたことだった
- 熱心でないリュトレーを見て、「あたくしの寝姿に全く興味がないとでも仰るの」と逆ギレ
- 旗を旗竿ごと麓に持ち帰るという任務を当然のようにリュトレーに押しつける
など、クファディスが幸せに見えるくらいの無茶振りをしています。さすがだ…
結局犯人はやはりはっきりしなかったので、これは「野営~ノールの場合」を読まないとダメなんでしょうね。バンダイビジュアルの商売上手め。
「いっておくけれども、あたくしは帝国を愛しているわよ。皇族がいなければ、だれをからかえばいいの」
「目についた人間、だれでも好きなのをからかえばいいと思おうが。ただしぼくは除けてくれ」
「安心なさい」ペネージュは哀れむような目をした。「スポールの揶揄を受けるには資格が要るのよ」
ぼくにはないのか―リュトレーは傷つき、そして傷ついてしまったことに理不尽な思いを感じた。
※6ページより引用
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2013-09-30
久々に小説レビュー。旅行中に読んだ、アナザー・プリンセスのノベライズです。
ガンパレード・マーチ アナザー・プリンセス
著者:芝村裕吏
レーベル:電撃ゲーム文庫
価格:650円(税別)
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あらすじ
熊本で戦っていた戦車随伴歩兵小隊小隊長の小山美千代は、廃墟にたたずむ丸腰の少年、秋草一郎技術万翼長に出会う。わけのわからないままその指揮下に入った小山は、どこか浮世離れした秋草に連れられて辛くも敵の侵攻阻止に成功する。
その翌日小山小隊の属する戦車部隊は、戦いで失った戦車の代わりに人型戦車を受領することになった。秋草の所属する情報分析専門の部隊、通称二度寝天国小隊と共に戦う内に、秋草に惹かれていく小山。そんな中、5121小隊の異常なまでの強さを目の当たりにした二度寝天国の実質的指揮官、神楽はその強さの理由を探るため秋草を5121に潜り込ませる。しかし敵の大規模攻勢が予想されるにも拘わらず、小隊の強さの理由は判明しない。焦る神楽は舞と取引をし、熊本城に敵を集めて一掃するという作戦を立てるが、その目的は敵もろとも一族を裏切った舞を抹殺することにあった。それと知らない秋草は、戦いの中で速水を舞と共に死なせるか、神楽に背いて小山を助けるかの二者択一を迫られるのだが―
感想
意外と漫画のシナリオそのままでビックリしました。漫画版では中途半端に終わった、小山と秋草の恋物語もはっきりした形で進展していて安心です。漫画版ではよく分からなかった結末部分もはっきりしましたし…。榊ガンパレではあまり登場しない、参謀部の活躍ぶりに焦点が当てられていて、個人的には面白く読めました。芝村節が好きな人には十分お勧めします。
ただ神楽がほぼ完全な悪役で終わってしまったのはちょっと残念だったかな。
解説
この小説は、ガンパレのゲームとも、榊ガンパレともやや乖離した設定が使用されています。ガンパレの世界をある程度深く知っているとわかるネタなども含まれているので、僭越ながら簡単な解説を。ただし僕もさほど世界観に詳しいわけではないので、より詳しい方からの突っ込みもお待ちしています。
- 深澤(正俊)(28ページ)
ガンパレード・マーチ 緑の章に登場する同名の人物と同一人物。彼のセリフに登場する「金城のアネゴ」(189ページ)とは同じく緑の章の登場人物「金城美姫」、「源さん」(171ページ)とは「源健司」のこと。
- 宮石忠光(86ページ)
ゲーム版や榊ガンパレでは「若宮康光」に当たる人物。
元々この世界の人間は全てクローン(なので人体組成からして異なる。「骨の材料」に「プラスチック」というルビが振られている(146ページ)もそのため)。クローンは人間同様赤ちゃんの姿で生まれ、成長するが、中には成体クローンという、はじめから大人の姿で作られたクローンが存在する(主として戦闘用のため)。
宮石は若宮型と言われる成体クローンで、善行の家令。他の同型との区別のため「善行忠孝」と「石津萌」(石津は善行に一時保護されていたため)から一字ずつを取って、宮石忠光と改名している。
- 騎魂号(91ページ)
ゲームや榊ガンパレでは士魂号複座型といわれている機体のこと。騎魂号は愛称。
- 速水厚志(110ページ)
本当の速水厚志は秋草の友人。彼は徴兵された後に、何らかの理由により死亡している。
ゲームや榊ガンパレに登場する速水厚志は、両親が幻獣共生派だったため、ラボに送られ人体実験のモルモットにされていた。しかし研究員などを殺害して逃亡。その途中で死んだ本当の速水の学籍を乗っ取って、速水厚志を名乗るようになった。秋草が怒っているのはその事。
- 菊池「明日には子供の申請とか出す勢いじゃ?」(112ページ)
上記の通り人間は全てクローンのため、自然生殖能力は無い。そのため子供は申請することで交付される。余談だが、舞だけはクローンではなく、本当の人間である。
- 對馬「秋草一郎は竜になる運命だ」(128ページ)
竜とは最強の幻獣に対抗するための最強の兵器。愛する者を失うなどの強い絶望によって竜になると言われており、秋草はその候補で、小山はその餌。速水と舞も「竜と餌」とされている(つまり、「舞の手元にある”人中の竜”」(214ページ)とは速水のこと。ただし舞は自分が餌だとは知らない)。榊ガンパレでは登場しない。ゲーム版はラスボスとして登場する。
- 「背が二乗になると重量は三乗になる」(176ページ)
やや不正確な表現。背の高さがx倍になると、筋肉が生むことの出来るパワー(筋肉の断面積に比例)はx2倍になるのに対し、重量はx3倍になるため、負荷はx3/x2=x倍になる、という意味。
- 「ウサギの名はストライダー」(227ページ)
おそらく「式神の城」に登場するストライダー兎から。
- 東原ののみ(252ページ)
瀬戸口は戦争孤児であると説明しているが、彼女も速水同様のラボの被験者。瀬戸口も竜候補であり、彼女はその餌として小隊に配属されている(もっと詳しく言うと、ののみは瀬戸口が好きだった女性のクローンで、壬生屋はその女性の生まれ変わり)。
- 大木妹人(254ページ)
「絢爛舞踏祭」に登場するオーキ・マイト、「男子の本懐」に登場する同名の人物と同一人物。簡単に言うとガンパレの世界とこれらの世界は並行世界(厳密に言うと違うのだがその辺りは長くなるので省略)の関係にある。通常世界間を移動することはできないが、登場人物の中にはなんらかの方法で世界間を移動している者がおり、大木もその一人。ゲームや榊ガンパレには登場しない。
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2013-08-26
S-Fマガジン 2013年10月号に掲載された森岡浩之先生の最新作、星界の断章のレビューです。大いにネタバレあり。
星界の断章「海嘯」
著者:森岡浩之
価格:895円(税別。S-Fマガジン本体)
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あらすじ
皇族としての義務を負え、王としての役目も兄に押しつけたアブリアル・ネイ=ドゥブレスク・ゲムファーズ子爵・ラムリューヌは、貨客船に乗って子爵領を目指していた。ラムリューヌが手がける惑星改造は終盤にさしかかっていたが、ラムリューヌがその過程に興味を持ち、たまには領地を訪れて家臣達を激励するのも良い事だと気まぐれを起こしたことがそのきっかけだった。ところが、改造中の惑星スィルメーでは、「海の自殺」という摩訶不思議な状況が発生していて―
感想
星界シリーズのヒロイン、ラフィールの叔母に当たるラムリューヌが今回の主役です。これ予想出来た人いるのか。
今回は扱われている事件が割と小規模なので、おもにラムリューヌと家臣達の会話で話が進みます。家臣達が一癖ある人物ばかりですが、ラムリューヌは結構辛抱強いですね…ラフィールだったらキレてるし、ドゥビュースだったら嫌味の一つ二つ言ってそうです。まぁラムリューヌ自身も「自分の我慢強さに驚嘆していた」と言ってますけど。
その他、ラムリューヌの描かれたイラストが2枚あるのは見逃せないところですね。辞書編纂者としては、惑星改造についての新しい情報がいくつか出て来たのがポイントかな。
しかし気になる事が。この断章の時間軸は、ラムリューヌが惑星改造を始めてから17年後。そしてドゥサーニュが皇太子になる→ドゥビュースが王になる→惑星改造に着手、の順番である事は確定。ドゥサーニュが皇太子になった=ラマージュが皇帝になったのはラフィールが生まれた後と思われる(ラフィールはラマージュの即位式に出席しているから)し、惑星改造が成功してラムリューヌが伯爵になったのが952年だから、
帝国暦936年 ラフィール誕生
帝国暦???年 ラマージュが皇帝に即位
帝国暦???年 ドゥビュースが王に即位
↑17年以上前
帝国暦952年 ラムリューヌが伯爵に昇爵
…計算が合わぬ。ラマージュの皇帝即位と即位式の間に時間があるとしても、ドゥビュースが王になったのはラフィールが生まれた後なのは間違いなさそうだしなぁ(ラフィールが生まれた日に、プラキアが「あなたの方は王様になるんですって?」と聞いているから。断章「誕生」)…森岡先生なんとかしてください。
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2013-08-18
榊ガンパレ2ヶ月ぶりの新刊です。今回もAmazonで購入。
あと久々に年表も更新してepisode TWOを反映させました。次は「あんたがたどこさ」なんですけど、あれはパラレルっていう設定だからめんどくさいんだよな…かといってその他の作品につながる場面も多いから、無視するわけにも行かないし…あと年表自体が長くなってしまったので、そろそろページを分けたほうがいいかも。5冊前後で切るとすると「前史」「小隊結成~熊本城決戦」「九州撤退戦」「山口防衛戦・ガンオケ」「九州奪還戦」「日本内乱編」「新大陸編」の7分割くらいか?
ガンパレード・マーチ 2K 西海岸編②
著者:榊涼介
レーベル:電撃ゲーム文庫
価格:600円(税別)
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表紙など
表紙は左から田代、中村、岩田、狩谷の整備班4名。シリーズ初の1巻との続きイラストになっています。なお今回は整備班の出番はほとんどありませんけどね…
帯は「国境の都市で小隊が局地戦に打って出る!!」となっています。裏には、「ガンパレード・マーチ アナザー・プリンセス」の最終第4巻が8/27に、小説版が9/10に発売予定との告知が。旅行前発売だから旅行中に読む事決定かな。
巻頭付録はシアトル共和国領域図。軍の動きはあまりないので、あくまで地図的な位置づけです。残念ながら描き下ろしキャライラストはありません。
今回も著者・絵師のあとがきはありませんでした。
あらすじ
日本視察団としてサンディエゴ戦線に到達した5121小隊は、視察の名目で使い潰されようとしていた補助兵の救出を始める。戦線の正規兵―銀狼師団は、補助兵を囮程度の存在しか見なさず、また幻獣との戦いに本腰も入れていなかった。やがて小隊の動きを快く思わない銀狼師団は、小隊を抹殺しようと不穏な動きを見せ始めるが、強烈な反撃に遭い戦力の多くを失う。
それに並行して、サンディエゴ戦線の幻獣軍は大規模侵攻を開始。もはや人間同士で争っている場合でなくなったシアトル軍だが、これまでにない組織だった侵攻に前線の補助兵は総崩れになった。善行はその原因が知性体の出現による事を突き止め、幻獣による精神汚染への対策を取るようシアトル政府に求めるが、突如好戦路線に転換した政府のオルレイ代表はこれを拒否し、事態は混迷を極めていく―
感想
前半は銀狼師団との戦いが描かれます。対人戦闘をタブーにしている5121小隊が、策略と謀略で師団を手玉に取っていくのが面白かったです。口先参謀の茜の面目躍如でした(今回はマジ活躍です)。
後半はいよいよ幻獣との戦いが始まります。日本では小隊が強すぎて完全に敵の爆薬庫扱いだったゴルゴーンとかがここまで恐ろしい敵だったとは。これからは再び幻獣の恐ろしさが見られるんでしょうか。小隊相手だと「二百、三百のデーモンなら、5121小隊は問題なく撃破出来る」(97ページ)だからな…昔はミノタウロス(デーモンとほぼ同格)が3体くらい出てきただけで即絶望だったのに…
最後に小隊はサンディエゴからシアトルへの撤退を命じられるんですけど、また九州撤退戦の時のように敗残兵を吸収しながら下がっていくのかな。絶望的なシチュエーションが楽しめそうな次の巻に期待大です。
ただいくら何でも攻撃の可能性があるというだけで、一師団の航空戦力を壊滅させたのはさすがにやり過ぎでは…これシアトル軍全体からしても相当程度の戦力だと思うんですが…あそこまで出来るんならもうちょっと穏便に処理出来なかったんでしょうか。
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2013-07-22
「アリソン」「リリアとトレイズ」「メグとセロン」シリーズの完結編が登場ですよ-。
※過去シリーズの感想はこちらから→メグとセロン | Y.A.S.
一つの大陸の物語<上><下> ~アリソンとヴィルとリリアとトレイズとメグとセロンとその他~
著者:時雨沢恵一
レーベル:電撃文庫
価格:570円(上巻)、630円(下巻)
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あらすじ
アリソンに見送られたトラヴァス少佐は、軍用機で一路スー・ベー・イルを目指す。
一方リリアの通う第四上級学校では、新聞部が次の新聞のネタとして、転校生トレイズの正体を探ろうとしていた。しかし、その調査中、校内のロッカーを使った大胆不敵な組織犯罪の影が。新聞部は犯罪に巻き込まれた学校の生徒を救おうとする。
その頃アリソンは自宅で、トラヴァスの乗った飛行機がルトニ河に墜落したという報せを受けとっていた―(上巻)
墜落死をなんとか逃れたものの、満身創痍のトラヴァスを救ったのは、懐かしいあの男だった。ケガから回復したトラヴァスは、自分の命を狙った者の正体を探ろうと墜落現場へ戻る。知らせを聞いたアリソンも駆けつけ、敵の妨害を退けて目的のものを手に入れたトラヴァスだったが、アリソンはその際に軍用機を無断で拝借したため、空軍を不名誉除隊になってしまった。知らせを聞いて驚くリリアに、アリソンは再婚宣言をしてさらに困惑させるのだが―(下巻)
感想
いよいよ11年にわたったこのシリーズも完結です。「アリソン」から読んでいる者としては感慨深いですね。
上巻は「メグとセロン」の流れを踏襲していて、学園内の事件をおなじみ新聞部の活躍で解決していくという小気味よい展開になっています。謎の転校生トレイズ君も、相変わらずの完璧超人ぷりを見せてくれました。でも狙撃姿勢で8時間待つのは無理があるんじゃ…
下巻の方は「アリソン」的な展開がメインですね。こちらも完璧超人トラヴァスの活躍が見られます。今回は全体的に男連中が強いなぁ。そして登場したサイラス氏。誰の事かはすぐに分かったんですけど、こんな名前だったっけ…と悩んでしまいました。「アリソン」シリーズでは名前出てなかったんでしたっけ。モブキャラというわけではなかったので、名前を出していなかったということは、当時からこの展開を予定していたのかなぁ。すごいぞ時雨沢先生!
相変わらずあとがきはふざけた内容でしたが(↓)、続編も構想があるとのこと。続編でもいいですし、新シリーズでもいいですけど、次なる作品を大いに期待して待ちたいと思います。時雨沢先生、素晴らしい挿絵を描いてくださった黒星先生、本当にありがとうございました。
「下巻? 上巻はまだ読んでないぜ?」
と驚かれた場合―、
すぐ隣に上巻があるはずですのでそちらを先に見てくださいお願いします。
上と下で完結していますので、「中巻」なんてのがあったら、バカもん、そいつがルパンだ。
※374ページ「あとがき」より引用
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2013-06-26
シュタゲ劇場版のノベライズの紹介です。シュタゲなのでほとんどネタバレがないレビューにしています。
劇場版 STEINS;GATE 負荷領域のデジャヴ上/下
著者:浜崎達也
レーベル:スニーカー文庫
価格:各619円(税別)
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感想
劇場版のノベライズを銘打っていますが、実は上巻の前半はアニメオリジナルの25話と、完全にオリジナルのエピソード(2011年のお正月を描いたもの)になっていて、劇場版部分は上巻の最後4分の1ほどと下巻、という構成になっています。
シュタゲなので詳しい話は避けますが、25話や劇場版部分はかなり忠実なノベライズになっている上に、尺の都合から説明がはしょられた部分についてもかなり綿密な理論構築が成されているので、劇場版を楽しんだ人にも重ねてお勧め出来ます。あとがきによれば未発表資料や制作サイドから提供された裏設定も組み込んであるとのことで、劇場版の補完資料としての価値も高いです。
もちろん紅莉栖の心情もこれでもかという程ねっちり描かれているので、助手にもしっかり感情移入出来ると同時に、助手以上の苦悩を抱えてきたオカリンの男度も上昇するという二度美味しい内容になっています。そんなわけでなかなかの良作でした。
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2013-06-25
榊ガンパレ3ヶ月ぶりの新刊です。待ってました!なのですが近くの書店では軒並み置いてなくてAmazonで購入しました。
ガンパレード・マーチ 2K 西海岸編①
著者:榊涼介
レーベル:電撃ゲーム文庫
価格:600円(税別)
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表紙など
表紙は左から加藤、原、東原、新井木の女性陣4名。ただし本編には東原と新井木はほとんど出てきません。ちなみに今回本編で一番活躍したのは狩谷です。
帯は「アメリカ大陸での最後の戦いが幕を開ける!!」となっています。
巻頭付録は今回登場した脱走兵4名。シアトルのごく一部で物語が展開するため、戦局図などはありません。
今回も著者・絵師のあとがきはありませんでした。
あらすじ
過酷な戦闘を生き延び、シアトルに移動した5121小隊は、つかの間の休息を楽しんでいた。そんな中、西海岸最大の激戦区サンディエゴ戦線から脱走してきたハイティーンの少年少女4人は、銀行に立てこもり、5121小隊のパイロット壬生屋・滝川との面会を要求する。彼らが戦争の悲惨さを訴えようとしていることを知り、修羅場をくぐってきた小隊の面々は当初冷ややかな反応を見せるが、実は彼らの真の目的は、シアトル軍の陰惨な真実を暴くことだった。
軍警察は軍の威信を賭け、国家反逆罪を盾に4人を拘束しようと動く。当初は巻き込まれた形だった小隊のメンバーも、己の信じる正義を成すため、それぞれの立場で戦い始める。しかし事態の進展は早く、軍警察は特殊部隊を送り込み4人を抹殺しようと画策。内政干渉に及び腰の日本政府に対し、善行がとった作戦とは―
感想
シリーズの導入としては十分面白かったです。これから4人を良く思わないサンディエゴ戦線の面々、戦線に殺到する幻獣軍、シアトル軍と小競り合いが起こりそうなワシントン軍などが入り組んでどろどろした戦いが繰り広げられるんでしょう。
ただ、さすがに今回の小隊の行動を「正義」というには問題があるのではないかな…たしかに4人は困っていて、「5121小隊は救いの手を求めている人たちを、見捨てることはしません」というお題目はいいと思うんですけど、4人の告発の正当性と、脱走ないし機密漏洩を天秤にかけると、後者が勝つんじゃないかな…
最終的には政治的決着が図られるんですけど、これだと軍の規律が崩壊する恐れがあるし、それによって西海岸全体の安全が脅かされる危険性もあるんですよね…。第一、他国の(しかも同盟国の)軍なり政治なりにここまで介入するのは内政干渉の域を超えているかと。というわけで今回の話の流れについてはやや否定的です。
しかしすっかり狩谷も性格が丸くなったなぁ。初期の彼ならこんな所には絶対出てこないでしょう。交渉役としての今回の活躍は、「論理と秩序を重んじる」彼の面目躍如でした。…あぁ、茜も頑張ってましたけどね。
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2013-06-24
サモンナイト1~4と5を繋ぐオリジナルストーリーの小説です。
サモンナイトU:X 界境の異邦人
著者:都月景
レーベル:JUMP j BOOKS
価格:760円(税別)
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あらすじ
サモンナイト4で描かれた騒動が収まってから13か月後―異世界リィンバウムの「帝国」では、召喚術が技術として公開されていることへの危惧が高まり、異端召喚師審問会による召喚師の取り締まりが行われていた。一方、「名もなき世界」の少年ミコトは、幼い頃の記憶を持たない自分のアイデンティティに悩みながらも、高校生としての生活を送っていた。しかし彼には誰にも言えない秘密があった。それは自由にリィンバウムと行き来する手段を持っているということ。しかし、リィンバウムで仲良くなった少女デュマとその保護者である女医シャリマは、審問会により逮捕されてしまう。ミコトは二人を救うため、帝国軍の基地に忍び込むが、そこで彼は異能の力に目覚めることになる。辛くも危地を脱したミコトだったが、彼の叔父であるカイとシャリマから自分の出生の秘密を聞いて衝撃を受ける。そんな中、同じ高校の先輩で、1年前に失踪したハヤトが現れる。彼は「お前のしたことは絶対に許さない!」と激しい敵意を向けて襲いかかってきた―!
感想
あとがきによると、「4から5の間に何が起こったのか。その時、歴代の勇者達は何をしていたのか」が描かれる、サモンナイトシリーズの総決算だそうです。小説オリジナルの主人公を軸に、過去キャラたちが勢揃いする物語がこれから描かれるとのことで、シリーズのファンにはたまらない物語になりますねこれは。とりあえず5でも狂界戦争と響融化のことはほとんど描かれていなかったので、その穴を埋めるためにも読んでおくべきかも知れませんね。ただこの内容はゲームでこそやるべきだったのではないかと思うのですが…
なお1主人公はハヤト(他の3人も一応登場)、2はマグナ、3はレックス、4はライ(とエニシア)が登場します。…こうやってみると男ばっかりですね。その他エミ、カツヤ(1のプロローグで登場した、1主人公の同級生です。覚えてますか…?)が登場しているほか、名前だけですがパッフェル、アメル、ネスティのことも言及されています。
まだ導入部分なので単体での感想については述べづらいのですが、ややストーリーとしては暗めですので、若干人を選ぶかも知れません(人がバンバン死ぬし、仲間の死も暗に示されている)。主人公の能力もヒーロー向きの能力ではないので、物語をどう転がしていくか気になります。
あと、時間の流れが良くわからないんですよね。リィンバウムでは4から約13ヶ月後のようですが、名もなき世界では1の約1年後ということになっています。リィンバウムでは1~4の間は数年空いているはずなので、時間の流れが違うってことなのかなぁ。でも物語の途中でミコトがわざわざ、時間にそんなズレがない的なことを言ってるんですよね。ミスリーディングとも思えますが果たして…
といろいろ述べましたが、正直5をプレイするといろいろ謎がてんこもりなので、その一部でも解明されるのは有り難い話です。続編にも期待しています。
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2013-06-14
星界辞典Ver.2.300を公開しました。今回は以前アップロードしていた星界の断章「介入」の更新分を総合辞典に統合しただけなので、大きな変化は有りません。
そろそろ星界の紋章DVD-BOX付属の小説「星界の断章 野営~ドゥサーニュの場合~」についての更新作業を始めようと思います。
なおまだ単行本化されていない作品なのでご存じない方も多いと思います。簡単なあらすじを用意しましたので、興味のある方はどうぞ。
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あらすじ
ドゥサーニュとドゥビュースが翔士修技館の訓練生だった時―
星界軍は、アブリアル伯国最大の惑星クラベール・ソスで、地上訓練を行っていた。その9日目。帝国旗を一晩保管する衛旗士に選ばれたドゥサーニュとドゥビュースは、交代で旗を見張ることに。どちらが後に寝るかで一悶着あったものの、ドゥビュースが先に見張りを務めることになった。
そして交代時。天幕の入り口で歩哨をしていたドゥビュースが天幕に戻ると、天幕の反対側が切り裂かれ、帝国旗もなくなっていた。そしてそこには「旗を取り戻したければ、アセージュ山頂に来るべし」という文字が残されていた。2人はこの不祥事を自分たちだけで解決しようと、アセージュ山頂に向かう。やっとの事でたどり着いた山頂には、急ごしらえの旗柱台が置かれ、帝国旗がはためいていたものの、辺りに人影はなく、2人は無事旗を回収して帰路に就いた。
結局、旗を奪われたことは教官には発覚しなかったが、その不自然な状況から、盗難は内部犯によるものではないかと2人は疑っていた。しかしそれ以上の事情は掴めなかった。
結局この事件の真の意味を知ったのは、ドゥサーニュが翔士に任官して数年経ってからのことだった。
感想
ごく短い小説です。あらすじは変な終わり方をしていますが、実際小説自体もこういう終わり方なので勘弁してください。冒頭で「修技館への志望動機はみっつに分けられるだろう」と書いているのに1つしか登場しないことも踏まえると、続きは戦旗DVD-BOXと、戦旗Ⅱ・ⅢDVD-BOXで明らかになるんでしょうね。
ドゥサーニュは若い頃から「度し難い性格」だったし、ドゥビュースは若い頃から変な2つ名を付ける癖があったことがわかりました。この2人はなかなかいい性格をしているのに、本編ではぜんぜん絡みがなかったので、こういう形で掛け合いが楽しめて良かったです。
「それで、だれが盗んだと思う?」
「変わり者であることに間違いありませんね」と彼(ドゥサーニュ)はこたえた。「あのようなもの、盗んでどうするというのですか」
「あのようなものって、帝国旗だぞ」
「旗は旗に過ぎません」
「まあ、そうだが。あまり人にきかれぬようにせねば」
「なぜですか? こんなことくらいで処罰されないでしょう」
「暴言者よ、われらはアブリアルだ」とドゥビュース。「皇族が八頸竜の紋章を軽んじていると誤解されたら、臣民に示しがつかないじゃないか」
「それもそうですね」ドゥサーニュはちょっと反省した。ドゥビュースもたまには正しいことをいう。
※7~8ページより引用
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2013-06-12
榊ガンパレも早く読みたい!のですが先にこちらを。だんだん話が面白くなってきました。
マグダラで眠れⅢ
著者:支倉凍砂
レーベル:電撃文庫
価格:619円
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あらすじ
紆余曲折を経てカザンの町への入植団にへの同行を許されたクースラたちは、ともに街を出る予定のイリーネと共に、グルベッティを離れる準備をしていた。旅慣れているフェネシスは、初めてクースラにものを教える立場になったことに少し浮かれる。しかしそんな中、ウェランドは女遊びが祟り、街の権力者の罠にはまってしまう。このままでは入植団には加われず、それを免れるにはウェランドが錬金術士であることを証明するしかない。クースラは自業自得だとあっさり見捨てて旅立とうとするが、フェネシスの「仲間を大事にしたい」という熱意に打たれて、ウェランドを見事に助けだす。しかしクースラがウェランドを助けたことを知らないフェネシスは、その後もクースラに冷たくあたるのだが―
感想
1巻と2巻は世界観説明にかなりの紙幅を裂いていた上に登場人物もみんな尖っていたので、ちょっと退屈に感じる部分もあったのですが、今回はかなり面白かったですねー。支倉先生らしい言葉遊びと、登場人物達の複雑に入り組んだ思惑が最後に一気に解けていくところは見物でした。やっぱりヒロインは守られるだけじゃなくて、こういうしたたかなところも見せて欲しいです。今回でようやくヒロインと主人公が対等な目線で話せるようになったのではないかな。新キャラのイリーネも加わり、これからどんどん面白くなってきそうです。そして主人公も、決して私利私欲の打算だけで生きているわけではない(もちろん決して善人ではないのですが)ところを見せてくれて、男が上がったように思います。
次巻も大きな事件が起きることが既に呈示されています。次の発売日が待ち遠しいです。
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