2014-04-20
シュタゲ小説なのですが、内容に触れないと非常に感想が書きにくい小説なので、今回はネタバレありになっています。
あらすじについては中盤あたりまで触れていますが、こちらは大きなネタバレではないです。感想の中では今回の小説に登場する「新しい」キャラに触れていますので、それすら知らずに読みたいという方はスルーしてください。個人的には、「おもしろい」というより「考えさせる」小説だったとだけ。あと、線形拘束のフェノグラムのノベライズだと思って読むと後悔するかも。
Steins;Gate 線形拘束のモザイシズム
筆者:海法紀光
レーベル:電撃ゲーム文庫
価格:600円
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あらすじ
電話レンジは完成したものの、その存在については秘密にすることを決めてからしばらくして。岡部の携帯電話に「鳳凰院凶真」からのメールが届く。「任務開始。メールの指示を厳守のこと」と短く書かれたメールを見て、岡部はこれがDメールであると気づく。早速その指示に従い、仲間達と共に、鈴羽に飯をおごったり、入院している少年に劇を見せたり、とよく分からない活動に身を投じるラボメンたち。その中で岡部はラボメンたちとの交友を深めていく。
しかし、ある日やってきたメールは、岡部を現実へ引き戻すのに十分すぎる内容だった。「三〇〇万円用意しろ」「失敗するとまゆりは死ぬDメール禁止」岡部は2通目のメールを隠し、ラボメンたちに協力を要請するのだが―
感想
一応「線形拘束のフェノグラム」のノベライズと銘打ってはいますが、ゲームからは「アルパカマン」「ダルの嫁」「3人の鈴羽」「シャ・ノワール」「ラボの火事」などのキーワードが断片的に使用されているだけで、特にゲームシナリオの要素はありません。
これは、絶望岡部ならぬ、絶望紅莉栖の視点から描いた、もうひとつの「Steins;Gate」です。SERNの築いたディストピアで、ただ一人生き残った紅莉栖が、その未来を改変するために血と泥にまみれながらあがく―という重いストーリー。そのあがきは成功するのか、それとも失敗に終わるのか。最後にものすごいオチが用意されているので、覚悟して読んでください。前半部分は岡部がラボメンたちとキャッキャウフフする明るいノリで進行するのですが、そのギャップがすごいよ。最後のエピローグがシュタインズ・ゲート世界線とは少し違う世界線のようなのでそこは気になるところでもあるんですが。
ストーリーはやや難解だったのですが、こちらのサイトのおかげですっきりしました。→steins;gate 設定考察のトートエクスペリメント モザイシズム考察1:世界線及び時間推移
余談ですけどこのサイトの考察、深いですね。一度腰を据えて読まねば。個人的にはウロボロス考察にマジ期待してます。あれは本当よく分からない話だったからな…
一つ気になるところがあるとすれば、最後の最後で「お前いくら何でも科学ADVでそれはねーべ」という展開があったことくらいですかね。
これまたシュタゲファンにはマストバイな小説だと思います。本編でもフェノグラムでも比翼恋理でも救済されなかったあのキャラが救済されているというところがちょっと笑える。あとオカリンとダルはほんと仲いいな。
「雷ネットは読み合いのゲームだろ。普通は揺れることのない平常心が必要だお」
「なるほど。この鳳凰院凶真が、機関の洗脳と戦うために編み出した精神統一法、虚空に一人(コールドクリエイション)が役に立つと」
「それだお! その何考えてるか、わからない感。全身から発する挙動不審オーラ! 痛々しくて直視できないから観察もできない! それこそがオカリンの武器だろ!」
「帰る」
「ぎゃ、逆に考えるんだ。挙動不審でもいい、と、考えるんだ!」
「ええい、わかった。わかったから、涙目で袖をつかむな!」
※115ページより引用。
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2014-04-06
前巻読んで2年たっていることに驚愕ですが、宮部みゆき先生の「ここはボツコニアン」2巻を読みました。3巻もとうの昔に出ていますけどね。
前巻の感想はこちら。→ここはボツコニアン 感想 | Y.A.S.
ここはボツコニアン 2 魔王がいた街
著者:宮部みゆき
価格:1000円
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あらすじ
本物の世界の「ボツネタ」が集まってできた出来損ないの世界「ボツコニアン」。何者かによって勇者「長靴の戦士」に選ばれた双子の姉弟ピピとピノ(まとめてピノピ)は、かつて魔王が住んでいたという街アクアテクに到着。そこで出会った物知り少年・ポーレ君といっしょに住民の失踪事件を追いながら魔王の痕跡を探していたところ、ついに緩すぎる旅に終止符を打つべく中ボスが襲いかかってきた!
感想
相変わらずメタネタ、パロネタのオンパレードのファンタジー小説です。書き出しからしていきなり
突然ですが、「小説すばる」の編集長が替わりました(※小説すばるはこの作品が連載されている雑誌)
※8ページより引用
だったり
今月の作者は、PSPで『タクティクスオウガ 運命の輪』をやりすぎて五十肩を発症しております
※96ページより引用
だったりとフリーダムすぎます。(ちなみに後書きでもまだTOプレイ中)
ストーリー的には、行方不明になった幼なじみを探したり(原因は両親の離婚)、連続少女失踪事件を捜査したり(モンスターを倒しても経験値やお金を落としてくれないので、生活のため)、氷属性の中ボス「氷の微笑」(当然ノーパン)と戦ったりと、普通にファンタジーしているはずなのに、なぜこんなに緊迫感がないのか。
そしてよく分からない旅の目的でしたが、ようやく「回廊図書館の鍵を7本集め、その鍵で開いた扉の先でそれぞれ伝道の書を合計7冊集め、魔王の居城にたどり着く」というわかりやすいフラグが立ちました。ただし現在主人公パーティは、文無し宿無しのところを救ってくれたポーレ君のお母さんに恩返しするため、あんまんの製造元を突き止めようとしたら二軍三国志(すでに死んでいるか、本編には声がかからないほどのマイナーキャラの集まった三国志)の世界に迷い込んだ状態なので、これからどうなるのかはまったくわかりませんね。自分であらすじ書いていても訳わからないし。
それから、主人公たちの案内役「トリセツ」もいまいちなにを考えているのかわかりませんね。裏切りフラグが立っているような気がしつつも、ギャグ小説で裏切りとか入れてもギャグにしかならないような気もするので…
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2014-01-26
ようやく最新刊を入手出来ました。近くの本屋に入荷されるのを待っていたんですけど、埒が明かずAmazon様にお願いしました。そんなことだからネット本屋に負けるんだよ!(八つ当たり
前巻の感想はこちらから。→【小説】サモンナイトU:X 界境の異邦人 レビュー | Y.A.S.
サモンナイトU:X ―黄昏時の来訪者―
著者:都月景
レーベル:JUMP j BOOKS
価格:760円
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あらすじ
ハヤトの圧倒的な力には到底及ぶところではなかったが、その場に突如現れた飛竜によって難を逃れたミコト。ハヤトはシャリマからミコトの情報を得て、その後を追ってきたのだ。ミコトを取り逃がしたハヤトはシャリマと合流する。そして自分がミコトを追っている理由について話し始めた―
サモンナイト4で描かれた「浮遊城事件」が収まってしばらく後のこと。新たな誓約者となったハヤト、そのパートナーであるキールは、サイジェントで暮らしていた。しかし無色の派閥の生き残りであるキールの兄弟たちが、セルボルト家の当主の座を狙ってキールを襲撃する。キールの危機に駆けつけた仲間たちの活躍もあり戦闘は有利に展開していたが、そこに現れたのは制錬者の手により復活を遂げたオルドレイク、そして同じく復活後オルドレイクの操り人形となったバノッサだった。そしてオルドレイクの凶刃が、ハヤトをかばったキールに刺さり、キールは永劫の呪いの犠牲となってしまう。その悲劇に暴走したハヤトの攻撃も、その場に現れた「制錬者」により易々と受けとめられてしまう。そして制錬者は「友を救いたくば我を討て」と言い残して去っていった。ハヤトは、制錬者を探すために一人旅立ったのだった。
一方、逃げ出したミコトはマグナに助けられ、こちらの自分の過去について話をしていた。そこへ突如現れたハヤトは圧倒的な力でミコトを殺そうと迫る。しかしマグナたちとの出会いを経て、「制練石の器」としてではなく「制錬者」として生きることを決意したミコトは、バノッサの義弟カノンの魂を呼び戻し、その攻撃を打ち砕いた。ハヤトも正気を取り戻し、二人は和解することが出来た。
目覚めたカイロスも、リィンバウムに戻り、ゲックたちに保護されていた。事情を聞いたゲックたち、そして行動を共にしていたケンタロウたちの元に、突如敵が襲撃する。襲撃者は自らを「再誕の制錬者」と名乗り、新たなる「救世の英雄」だと宣言した。
感想
今回物語の大筋が見えてきましたね。制錬者が2人いること、「再誕の制錬者」が旧敵達を甦らせ、なにかをしようとしていること、ハヤトが暴走していた理由も明らかになりました。また再生怪人と言えば強くなった主人公に瞬殺されるのがお約束ですが、さすがシリーズを通じてのラスボス・オルドレイクだけあって、相変わらず圧倒的な存在感です。
3や4でもちょっとだけ言及があった、初代エルゴの王、派閥の始祖ゼノビス、そしてメイメイさんの関係も明らかになりましたし、1~4に登場したメインキャラクターたちの多くの「その後」が明確に描かれたのもファンにとってはうれしいですね(ただし3は現場から離れているので少なめですが…)。パッフェルさんもお元気そうで良かった。あとはクノンさんか。登場直後に死んでしまった可哀想なキャラもいますが…(あれは死んだというのとは違うか)
パートナーキャラですが、1はキール(ほかの3人も登場)、2はハサハとバルレル、3はベルフラウが正史のようです。
前巻の感想で、「主人公の能力が主人公向きじゃない」って言いましたけど、今回でその印象は一新されましたね。あそこであのカノンを出してくるのも渋い展開で僕好みでした。あとがきで「なるだけ多くのキャラクターたちに活躍する機会を用意出来るようにがんばります!」とあったので、パッフェルさんの再登場に期待したいと思います。今回は名前だけでしたから。
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2014-01-02
今年は小説をもっと読んでいきたいな…と思っています。去年も「面白そうだけど積ん読棚がいっぱいなのでスルー」した小説がどれほどあることか。
というわけで今年1つ目のレビューは、現在絶賛プレイ中の「ダンガンロンパ」の小説です。ネタバレほとんど無いので、これから読もうとしている人も安心です。ただし若干ゲーム本編の時系列に触れています。あとゲームをする前に小説を読もうとしている人は、小説自体が1のネタバレなのでやめた方がいいです(つまりこのレビュー自体がゲームのネタバレになっているということです)。
ダンガンロンパ/ゼロ 上/下
著者:小高和剛
レーベル:星海社FICTIONS
価格:上巻・1050円(税別)/下巻・1100円(税別)
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あらすじ
超高校級の才能を集めた私立希望ヶ峰学園―そこに、記憶を失い続ける一人の少女「音無涼子」がいた。音無涼子は見聞きしたことを何一つ記憶することができない病気にかかっていた。そんな彼女が覚えていることは2つだけ。自分の体験は「音無涼子の記憶ノート」というノートに自ら記録していることと、彼女の治療をしている「超高校級の神経学者・松田夜助」のことだった。しかしある日、彼女の部屋には「過去の記憶ノートを全ていただいた」という置き手紙が。手紙の主に呼び出された場所を訪ねると、そこには「希望ヶ峰学園史上最大最悪の事件」について何か知っている風の少女と、事件について偏執的に調べ回るひとりの男が現れる。音無涼子は否応なく事件に巻き込まれていくのだが―
レビュー
ダンガンロンパ1の前に起きた「人類史上最大最悪の事件」、そしてその原因となった「私立希望ヶ峰学園史上最大最悪の事件」、その間に何が起こったのかを、「超高校級の忘れん坊」音無涼子の視点で描いた小説です。作者はゲーム本編のシナリオライターさんなので、話自体非常に練られていますし、矛盾なくゲーム本編につながるようになっています。
音無涼子は記憶を失い続けるという設定なのですが、これが事件について何も知らず、一人の少女(1のラスボス)に振り回される読者の気持ちとうまくシンクロ出来ていて、なかなか感情移入がしやすかったです。そして最後には思いもよらぬ衝撃的な展開と真の絶望が待ち受けています。ネタバレすると面白さ半減どころではないので、是非ご自身で確かめてみてください。
新キャラとして、あらすじに書いた二人のほかに、謎の復讐者「斑井一式」と、超高校級のスパイ「神代優兎」が登場します。神代は007みたいなキャラかと思いきや、童顔の少年(顔があまりに平凡すぎて人々の印象に残らない、というのが能力)だったり、花村以上のセクハラキャラだったりと色々面白かったです。
またゲーム中ではあまり詳しく描かれなかった、ふたつの「最大最悪の事件」がどういうものだったのか明かされるのもファンにはうれしいところ。ラスボスの「超高校級の××」がどういうものなのかを骨の髄まで知ることが出来るでしょう。これゲームだったら間違いなくCERO:Zだと思いますので、それなりに覚悟して読んでみてください。ちょっと値段が高いんだけどね…
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2013-12-21
サモンナイト小説買いに行ったけどやっぱり売ってなくて、代わりに「ダンガンロンパ/ゼロ」買ってきました。
それはさておき、先日紹介した「無限遠点のアルタイル」初回限定版に同梱されている冊子「次元階差のテスティモニー」に収録されている小説「遙遠のヴァルハラ」のレビューです。
…ってちょっと待ったー!この冊子正式名称は「多元階差のテスティモニー」ですよね(英題は”A Multiverse Testimony”)?なんで表紙のタイトルロゴが間違ってるんじゃい!
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遙遠のヴァルハラ 世界線変動率 0.334581%
著者:林直孝
口絵:文倉十
あらすじ
世界線変動率0.334581%。鈴羽のタイムトラベルが「失敗」した世界線。岡部の必死の努力も虚しく世界を変えることは出来ず、岡部、ダル、紅莉栖の3人はSERNに軟禁状態にあった。
事件から立ち直った岡部は、ダル、そして謎の協力者「疾風迅雷のナイトハルト」と組み、SERNからの脱出を企てる。作戦名は―”天国へ至る道(ヴァルハラ)”。
感想
α世界線の岡部とダルは、SERNから脱走してタイムマシン開発することが確定しているのですが、どうやってあの強大なSERNから脱走したのか、なぜ紅莉栖は脱出出来なかったのかが結構謎でした。今回の小説ではその謎についての納得出来る解説があるので嬉しいところです。逆に言えば結末は読めているので全体的にもの悲しい雰囲気が漂っています。紅莉栖が岡部の「根拠のない約束」を「信じる」、といったシーンは涙を誘いました。また「オーキードーキー」という鈴羽の口癖が、ダルに、そして由季に伝わっていくシーンは、作品全体のループ性を象徴しているようで、明るいシーンなのにちょっとしんみりです。
著者はシュタゲ脚本の林氏なので安心。あと「狼と香辛料」でおなじみの文倉先生がイラストを描いてくれているのも嬉しいところです。しかし拘束されて1年半。紅莉栖もオカリンも同じ服を着てたのかよ。
「橋田は? 今どこに?」
「案ずるな。ヤツは相変わらずのHENTAIだよ。この作戦の言い出しっぺも、ダルだからな」
「あいつが岡部よりやる気見せるなんて、意外ね」
「今年の冬コミマになんとしても行きたい、というのが動機だ」
「あえて言おう。カスであると」
※36ページより引用
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2013-12-15
シュタゲのオリジナル小説最終刊「無限遠点のアルタイル」をようやく読了しました。500ページという分厚さに腰が引けていたんですが、なんとか年内に読めて良かったです。今回もシュタゲなので深刻なネタバレ無しレビューです。
既刊感想はこちら(どちらも深刻なネタバレなし)。
Steins;Gate 閉時曲線のエピグラフ レビュー | Y.A.S.
【小説】Steins;Gate 永劫回帰のパンドラ レビュー | Y.A.S.
無限遠点のアルタイル
著者:たきもとまさし
価格:4200円(税込)
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レビュー
最終作にふさわしい話でした。涙でページがシワシワです。
序盤はオカリンがフブキとフラグを立てたり、真帆から「ひとりに…しないで…」なんて言われちゃったり、まゆりと新婚生活したり、とキャッキャウフフしていたせいで、本当に最終巻なのか…?ここから風呂敷どう畳むんだ…?と思いながら読み進めていましたけど、オカリンが最後に覚醒してからの怒濤の展開は、本当に涙無しには読めませんでした。ゲーム本編では、最後にチラッとしか出てこない「β世界線上のオカリン」がどれほどの辛酸をなめ、どれほどの熱い思いで計画を実行したのか、そしてその原動力になったのは何だったのか、骨の髄まで思い知りましたよ。これはもう原作ファンみんなが読むべき。そしてサブタイトル「無限遠点のアルタイル」と、ドラマCDβ「無限遠点のアークライト」の繋がりを見届けるべき。
そしてそれを取り巻くラボメンたちも今回は名セリフ多いです。ダル、まゆり、真帆、そして「紅莉栖」。いつかこの話も、ドラマCD化してくれるといいなぁ。
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2013-12-02
元々購入予定はなかったのですが、テイルズオブマガジンで序盤が掲載されていたのを試しに読んでみたらおもしろかったので即購入。踊らされてるなぁ。
テイルズ オブ シンフォニア 贖罪のクラトス
著者:実弥島巧
レーベル:電撃ゲーム文庫
価格:600円(税別)
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あらすじ
クラトスはとある森でロイドと仲間たちがやってくるのを待ち受けていた。彼らの目指す「救済」―それを完成させるために。
以下TOS本編の盛大なネタバレになるので割愛。
感想
TOS本編を、クラトスの視線から追ったスピンオフ作品です。著者の実弥島先生はTOSのシナリオライターでもあるので、伏線回収とかもバッチリでしたね。こういう作品って、尺の都合とかでシナリオが書き換えられていることもよくあるんですけど(yukkun20はそれがキライです)、この作品はゲームシナリオを忠実に再現している(セリフ回しも同じ)ので良かったです。TOS本編、できればクラトスルートをクリアしてから読んで頂きたいですね。
そして本編の裏側ということで、ゲームでは分からなかった(あるいはサブイベントを起こさないと分からなかった)各キャラたちの行動や思惑がかなりはっきり示されています。
- クラトスやユアンはどうしてラスボスと袂を分かったのか
- ディザイアン五星刃はあの時何をしていたのか
- ロディルがマグニスを騙したのはなぜか
- クヴァルとプロネーマはなぜ仲が悪いのか
- ミトスはどうしてジーニアスに出会ったのか
などなど。特にドジっ子扱いされているユアンの影の活躍は涙無くして読めませんので。この人肝心なところで詰めが甘いんだけど、本質的には超優秀なんですよね…
というわけで、TOSを楽しんだ方には文句なくオススメです。
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2013-06-26
シュタゲ劇場版のノベライズの紹介です。シュタゲなのでほとんどネタバレがないレビューにしています。
劇場版 STEINS;GATE 負荷領域のデジャヴ上/下
著者:浜崎達也
レーベル:スニーカー文庫
価格:各619円(税別)
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感想
劇場版のノベライズを銘打っていますが、実は上巻の前半はアニメオリジナルの25話と、完全にオリジナルのエピソード(2011年のお正月を描いたもの)になっていて、劇場版部分は上巻の最後4分の1ほどと下巻、という構成になっています。
シュタゲなので詳しい話は避けますが、25話や劇場版部分はかなり忠実なノベライズになっている上に、尺の都合から説明がはしょられた部分についてもかなり綿密な理論構築が成されているので、劇場版を楽しんだ人にも重ねてお勧め出来ます。あとがきによれば未発表資料や制作サイドから提供された裏設定も組み込んであるとのことで、劇場版の補完資料としての価値も高いです。
もちろん紅莉栖の心情もこれでもかという程ねっちり描かれているので、助手にもしっかり感情移入出来ると同時に、助手以上の苦悩を抱えてきたオカリンの男度も上昇するという二度美味しい内容になっています。そんなわけでなかなかの良作でした。
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2013-06-24
サモンナイト1~4と5を繋ぐオリジナルストーリーの小説です。
サモンナイトU:X 界境の異邦人
著者:都月景
レーベル:JUMP j BOOKS
価格:760円(税別)
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あらすじ
サモンナイト4で描かれた騒動が収まってから13か月後―異世界リィンバウムの「帝国」では、召喚術が技術として公開されていることへの危惧が高まり、異端召喚師審問会による召喚師の取り締まりが行われていた。一方、「名もなき世界」の少年ミコトは、幼い頃の記憶を持たない自分のアイデンティティに悩みながらも、高校生としての生活を送っていた。しかし彼には誰にも言えない秘密があった。それは自由にリィンバウムと行き来する手段を持っているということ。しかし、リィンバウムで仲良くなった少女デュマとその保護者である女医シャリマは、審問会により逮捕されてしまう。ミコトは二人を救うため、帝国軍の基地に忍び込むが、そこで彼は異能の力に目覚めることになる。辛くも危地を脱したミコトだったが、彼の叔父であるカイとシャリマから自分の出生の秘密を聞いて衝撃を受ける。そんな中、同じ高校の先輩で、1年前に失踪したハヤトが現れる。彼は「お前のしたことは絶対に許さない!」と激しい敵意を向けて襲いかかってきた―!
感想
あとがきによると、「4から5の間に何が起こったのか。その時、歴代の勇者達は何をしていたのか」が描かれる、サモンナイトシリーズの総決算だそうです。小説オリジナルの主人公を軸に、過去キャラたちが勢揃いする物語がこれから描かれるとのことで、シリーズのファンにはたまらない物語になりますねこれは。とりあえず5でも狂界戦争と響融化のことはほとんど描かれていなかったので、その穴を埋めるためにも読んでおくべきかも知れませんね。ただこの内容はゲームでこそやるべきだったのではないかと思うのですが…
なお1主人公はハヤト(他の3人も一応登場)、2はマグナ、3はレックス、4はライ(とエニシア)が登場します。…こうやってみると男ばっかりですね。その他エミ、カツヤ(1のプロローグで登場した、1主人公の同級生です。覚えてますか…?)が登場しているほか、名前だけですがパッフェル、アメル、ネスティのことも言及されています。
まだ導入部分なので単体での感想については述べづらいのですが、ややストーリーとしては暗めですので、若干人を選ぶかも知れません(人がバンバン死ぬし、仲間の死も暗に示されている)。主人公の能力もヒーロー向きの能力ではないので、物語をどう転がしていくか気になります。
あと、時間の流れが良くわからないんですよね。リィンバウムでは4から約13ヶ月後のようですが、名もなき世界では1の約1年後ということになっています。リィンバウムでは1~4の間は数年空いているはずなので、時間の流れが違うってことなのかなぁ。でも物語の途中でミコトがわざわざ、時間にそんなズレがない的なことを言ってるんですよね。ミスリーディングとも思えますが果たして…
といろいろ述べましたが、正直5をプレイするといろいろ謎がてんこもりなので、その一部でも解明されるのは有り難い話です。続編にも期待しています。
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2013-06-05
旅行中に何冊か小説を読み終わったので、レビューを書いておこうと思います。
Steins;Gate 哀心迷図のバベル
著者:明時士栄
レーベル:富士見ドラゴンブック
価格:672円
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あらすじ
世界線変動率0.571046。2010年8月12日。タイムリープマシンはついに完成した。しかし、タイムリープしてきた岡部は紅莉栖とダルに事情を説明し、まゆりの死の原因となった最初のDメールを抹消する直前までこぎ着ける。しかし、岡部はまゆりを救うことが紅莉栖を見殺しにすることに気づいてしまう。そのことを聞かされ、放心状態で街をさまよう紅莉栖。そこで出会ったフェイリスという少女は、若き日の自分の父親と、紅莉栖の父親が会話しているテープを聞かせてくれた。タイムマシンに並々ならぬ情熱を持って取り組んでいた父を否定したことが、父を怒らせた原因だったことを知った紅莉栖は、フェイリスに励まされ父に電話をかけるが、父親からは罵られただけだった。
失意の紅莉栖は、皆が救われる方法を考えるが、いくら考えても答えは出なかった。そうであれば、自分がすべきことは岡部の背中を押すことであると決意を固めた紅莉栖は、ラジ館の屋上で優しくβ世界線へ行くよう促した。岡部は「誰よりも大切な女のことを忘れたりはしない」と気持ちを打ち明ける。紅莉栖はそれにキスで答えた。
8月17日。紅莉栖は岡部に見送られ、秋葉原に別れを告げる。しかしホームで1人たたずむ紅莉栖の元に、フェイリスがやってくる。フェイリスが渡したテープには、娘にひどい事を言ってしまった父の苦悩の言葉が吹き込まれていた。自分も父のように、岡部に本当の気持ちを伝えるべきであることに気づいた紅莉栖はラボへ走る。岡部が世界線を変動させるリターンキーを押した瞬間、ラボに飛び込んできた紅莉栖は―
感想
同名のドラマCDのノベライズですね。コミカライズの方もいい出来でしたけど、こちらの小説もするっと読めるいい出来でした(著者は変移空間のオクテットのノベライズを担当した方ですね)。フェノグラムのまゆりシナリオの裏側でもあるので、フェノグラムを楽しんだ方には是非読んでいただきたい作品です。普通のラノベの3分の2くらいの厚さしかないので、軽い気持ちで楽しんでみてはいかがでしょうか。特に紅莉栖のラボに対する想いがはっきりと描かれているのが良かったと思います。
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