5年半ぶりに、星界シリーズ本編の最新作が発刊されました!5の後書きを読んでからずーっと待ち続けてきましたが、ついにそれを読めることに感動です。今までこのサイト続けてきて本当によかった。
今回もAmazonの罠にはまって読むのが遅れましたが、ようやく2回読み終わったので、レビューをさせて頂きます。そして前巻のレビューでも言いましたが、偉大な作品を再び世に送り出してくださった森岡浩之先生に最大限の感謝を!
なお以下のレビューにはネタバレがありますが、ストーリー上の重要なネタバレはしていないつもりです。ですが全体的な流れには触れざるを得ないところなので、そういうのも駄目な人は回れ右。
星界の戦旗VI-帝国の雷鳴-
著者:森岡浩之
レーベル:ハヤカワ文庫JA
価格:713円
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表紙など
表紙イラストはおなじみ赤井孝美先生によるラフィールです。ついに帝国元帥になり、双翼頭環を頂いた凜々しいお姿が描かれています。5の表紙に比べて耳が大きくなったような…気のせいですよね。
帯は「大人気スペース・オペラ、待望の最新刊!《星界の戦旗》第二部開幕!!怒りの炎を燃えたたせ、ラフィールが還ってきた!」となっています。
あらすじ
四カ国連合軍の侵攻により、アーヴによる人類帝国の帝都ラクファカールは陥落し、アーヴたちは宇宙に散り散りになった。そして10年後。帝国中枢との連絡を断ち切られ、スキール王国に封じ込められたアーヴたちは、ラフィールの父ドゥサーニュを副帝に据え、雌伏の時を過ごしていた。一方帝都を脱出したアーヴたちは、新皇帝ドゥサーニュのもとに集い、ついに人民主権星系連合体を滅ぼし、スキール王国との連絡を回復する一大作戦「霹靂作戦」を発動する。今や帝国元帥となったラフィールは、ジントを副官に据え、霹靂艦隊を率いて、連合体の主星系ノヴ・キンシャスを目指す。その胸に、ラクファカール奪還への激情を秘めながら―
感想
前巻は、読者が思いも付かなかったような展開が描かれた作品でしたが、今回は読者が見たいと思うものをストレートに描いてくださった、やはり期待を裏切らない名作でした。仕事から帰ると郵便ポストに届いていたので、とりあえず序章だけ読んで、あとは服を着替えてからお茶でも飲みつつゆっくり読むか、と思っていたのですが、いつの間にか服も着替えず最後まで読み通してしまいました。途中やめ出来るわけないわ。
とりあえず序章の、
「何度も言わせるな。そなたも……」
「はい、僕もアーヴですよ、殿下」
「馬鹿」
※14ページより引用
だけで転げ回るくらいのファンですので(みんな転げ回ったよね?)。
舞台が10年後に移りましたが、ラフィールとジントがどういう関係になっているかだけが不安でした。発売前には、「ジントとラフィールの甘酸っぱいエピソードは、10年の闇の中に葬られてしまうのか…まだまだキャッキャウフフしているところも見たかった気がしますが、はてさて。」なんてコメントしてしまいましたが、もう完全に熟年夫婦の域じゃないですかー。多分この10年の間には、紋章や戦旗2で描かれたような大事件はなかったんでしょうけど、二人一緒に戦場を駆け抜けてきたんですもんね。そりゃこうなるのも当然だと思いますし、間が端折られたからと言って、全く不自然さを感じず、自然に二人の関係を受け入れることが出来ました。ラフィールはジントのことを、
その心がラフィールには愛しく、同様に厭わしいのだった。
※120ページより引用
とまとめています。さらっと書いていますが、ラフィールがジントのことを愛しく思っていることがはっきり言語化されたのは初めてなのではないでしょうか。それでいて、「厭わしい」とされているのはジントの心というより、ジントの心を完全には読み取れない自分の心なんだと思いました(かといってそれを後悔しているわけではないのが彼女らしいですが)。それでいて、
ひょっとして、ラフィールの変わらぬ外見のせいで、ジントは兄のような気分になっているのかもしれない。やがて、父のように、あるいは祖父のように振る舞うのだろうか。
もっとも、それまでお互い生きているとは限らない。
※123ページより引用
って、死が二人を別つまで一緒にいる気満々じゃないですかー((o(´∀`)o))
もちろんラフィールが艦隊を率いるようになったことで、戦闘描写もより高度なものになりました。ラフィールは統帥官になりたいみたいですが、個人的にはもう少し前線でがんばってほしいですね。ラストシーンはなんとなく不穏な雰囲気が漂っているようにも感じますので、統帥官はまだ先のような気がします。
しかしジントは立派に成長しましたね…。ラフィールはこの10年間で階級が3つ(実質的には6つ)上がりましたが、ジントも3つ上がってるんですよね。ソバーシュやエクリュアは2つですから、彼がラフィールに付いていくために相当な努力を払ったことがよく分かります。出世してもやっているのは領主副代行だった時と大差ないというのは笑い処ですけど。
それからこれまで登場したキャラが多数続投しているのもうれしいところ。笑顔が素敵なエクエクはもちろん、立派に成長したドゥヒール、相変わらずフルネームが明かされないグノムボシュ、ドゥビュースといいコンビになりつつあるコトポニー女史、ドゥサーニュに今でもついて行っているケネーシュさんなど。そして忘れてはならないペネージュさん。ペネージュさんが第五艦隊の司令長官になったのは、この先起こる敵の大反抗でひどい目に遭う伏線だと思っていますので(笑)これからの彼女に期待です。
というわけで、本当に本当にすばらしい作品でした。後書きだと星間戦争の終結まで描いてくださるそうですので、続巻も楽しみに待とうと思います。
早速サイトの更新にも入らせて頂きました。小説を一行一行読みながらちまちま文字を打っていくこの幸せよ。いつもこの時がこのサイトをしていて一番良かったと感じる瞬間です。しかし後書きには辞典編集者泣かせの一言が…
お気づきでしょうが、この星界シリーズでは年月日が曖昧です。
※297ページより引用
とりあえずいつものように、今巻に記載されている内容は帝国暦969年(ラクファカール失陥から10年後)に起きたことにして辞典を編集していますが、そのうちどこかで修正が入るかもしれませんね…。暦年に修正が入ると、年表はもちろん、個人の経歴表まで全部修正が必要になるので結構大変なのです。
あと、読んでいるうちにいくつか気になったことも出てきています。「戦旗VI更新分」の末尾の備考欄に書き殴っているので(随時追加予定)、もし気づいたことがあればぜひご教授ください。そしてこの小説を読んだ方、是非一緒に語りましょう。
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